きび砂糖の代用は何がおすすめ？パン作りで失敗しない選び方とポイント

「パンを焼こうと思って材料を準備していたら、きび砂糖が足りない！」そんな経験はありませんか？レシピにきび砂糖と書いてあると、他の砂糖で代用しても美味しく焼けるのか、膨らみに影響が出ないか不安になりますよね。

実は、きび砂糖は他の多くのお砂糖で十分に代用が可能です。ただし、使う砂糖の種類によって、パンの焼き色や風味、食感に少しずつ違いが生まれます。

この記事では、きび砂糖がない時に使えるおすすめの代用品や、それぞれの砂糖を使った時の仕上がりの変化について、パン作りの視点からやさしく解説します。砂糖の特性を知れば、自分好みのパンを焼くヒントにもなりますよ。

きび砂糖の代用を考える前に知っておきたい特徴

代用品を選ぶためには、まず「きび砂糖」がパン作りにおいてどのような役割を果たしているのかを知っておくことが大切です。

きび砂糖は単なる甘味料ではなく、パンの風味や食感を左右する重要な要素を持っています。ここでは、きび砂糖の基本的な特徴と、なぜパン作りのレシピでよく指定されるのかについて解説します。

きび砂糖とはどんなお砂糖？

きび砂糖は、サトウキビを原料としたお砂糖の一種です。完全に精製された白砂糖（上白糖やグラニュー糖）とは異なり、精製途中のミネラル分を含んだ「糖液」を煮詰めて作られています。

そのため、色は薄い茶色をしており、なめるとサトウキビ由来の独特なコクとまろやかな風味を感じることができます。黒糖ほどクセが強くないため、料理やお菓子、そしてパン作りにも幅広く使える万能なお砂糖として人気があります。

この「精製されすぎていない」という点が、パン作りにおいては酵母（イースト）の活動を助けたり、味わいに深みを出したりするポイントになります。

パン作りにおける役割

パン作りにおいて、砂糖は単に甘みをつけるだけのものではありません。イースト（酵母）は糖分をエサにして活動し、炭酸ガスを出して生地を膨らませます。

きび砂糖に含まれる微量なミネラル分は、このイーストの活性化を助ける働きがあるとも言われています。また、砂糖にはパン生地の水分を保つ「保水性」という性質があり、焼き上がったパンをしっとりとさせる効果もあります。

さらに、オーブンで焼く際には熱によって砂糖がカラメル化し、パンに美味しそうな焼き色をつける役割も担っています。きび砂糖はもともと色がついているため、白砂糖を使うよりもやや濃い、温かみのある焼き色に仕上がる傾向があります。

白砂糖との違い

一般的に家庭でよく使われる「上白糖（白砂糖）」と「きび砂糖」の最大の違いは、ミネラル分の有無と風味です。上白糖は不純物を取り除いているため、すっきりとした純粋な甘さが特徴ですが、きび砂糖には雑味とも言える複雑な旨味があります。

しかし、パンの「膨らみ方」に関しては、一般的なレシピの分量であれば、上白糖ときび砂糖で大きな差が出ることはほとんどありません。

食感に関しては、どちらも水分を含んだ「しっとり系」の砂糖であるため、似たような保湿効果が期待できます。つまり、代用として最も違和感なく使える関係性にあると言えます。

体への優しさとミネラル

きび砂糖が選ばれる理由の一つに、健康への配慮があります。真っ白に精製された砂糖に比べ、きび砂糖にはカリウムやカルシウムなどのミネラル分がわずかに残っています。

もちろん、パンに使う量で摂取できるミネラルは微量ですが、「少しでも自然に近いものを使いたい」という作り手の想いに応えてくれる素材です。

また、精製度の高い砂糖は血糖値を急激に上げやすいと言われますが、きび砂糖は比較的緩やかであるとされることも、日常的にパンを食べる家庭にとっては魅力的なポイントとなっています。

きび砂糖の代用におすすめの砂糖トップ3

それでは、実際にきび砂糖が手元にない場合、どの砂糖を使うのがベストなのでしょうか？

パンの仕上がりや扱いやすさを基準に、おすすめの代用砂糖をランキング形式でご紹介します。それぞれの特徴を理解して、作りたいパンのイメージに合わせて選んでみてください。

1位：てんさい糖（同じくミネラル豊富）

きび砂糖の代用として最もおすすめなのが「てんさい糖」です。サトウキビではなく、北海道などの寒冷地で育つ「てん菜（ビート）」という植物から作られます。

きび砂糖と同様に精製度が低く、ミネラルを含んでいるため、健康志向の方にも納得して使える代用品です。また、てんさい糖にはオリゴ糖が含まれており、お腹の調子を整える効果も期待できます。

味はきび砂糖よりもさらに穏やかで、優しくあっさりとした甘みになります。粒が少し大きいものが多いので、しっかりと溶かす必要がありますが、パン生地に馴染むとふんわりとした優しい焼き上がりになります。

2位：三温糖（コクと甘み）

見た目が茶色いので、きび砂糖と似ていると思われがちなのが「三温糖」です。実は三温糖は、上白糖などの精製糖を作った後の糖液を煮詰めて作られるため、カラメル化して色がついています。

きび砂糖のような「天然のミネラルの色」ではありませんが、加熱による香ばしい風味と強い甘みを持っています。そのため、パンにコクや強めの甘さを出したい場合には非常に適しています。

きび砂糖の代用として使うと、少し甘みを強く感じることがあるかもしれませんが、しっとり感や焼き色はきび砂糖に近い仕上がりが期待できます。

3位：上白糖（基本の砂糖）

日本の家庭で最も普及している「上白糖」も、優秀な代用品です。パン作りにおいて最も標準的な砂糖であり、きび砂糖のレシピをそのまま上白糖に置き換えても、失敗することはまずありません。

きび砂糖特有の香りがなくなる分、小麦の香りがストレートに感じられるパンになります。食パンやロールパンなど、クセのない味に仕上げたい場合は、むしろ上白糖の方が好まれることもあります。

きび砂糖に含まれる転化糖と同様に、上白糖も吸湿性が高いため、翌日もしっとりしたパンを焼くことができます。

グラニュー糖を使う場合

お菓子作りによく使われるグラニュー糖も代用可能です。ただし、上白糖やきび砂糖に比べて水分量が少なく、純粋なショ糖の結晶であるため、仕上がりの食感が変わります。

グラニュー糖を使うと、パン生地のキメが細かく、軽くさっくりとした食感になります。フランスパンのようなハード系のパンや、クロワッサンなどサクサクさせたいパンには向いていますが、しっとりもっちりさせたい場合は少しイメージと異なるかもしれません。

種類別！パンの仕上がりに与える影響の違い

砂糖の種類を変えると、パンの焼き上がりにはどのような変化が起きるのでしょうか？ここでは、さらに詳しく5つのポイントに分けて、それぞれの砂糖がパンに与える影響を解説します。

これを知っておくと、「今日はふわふわにしたいからこの砂糖」「焼き色を濃くしたいからこの砂糖」といった使い分けができるようになります。

焼き色への影響

パンの美味しそうな茶色は、焼く時に起こる「メイラード反応」や「カラメル化」によるものです。砂糖の種類によって、この色のつきやすさが異なります。

きび砂糖、三温糖、てんさい糖などは、不純物（アミノ酸など）を含んでいるため、真っ白なグラニュー糖に比べて焼き色がつきやすい傾向があります。特に三温糖は色が濃くなりやすいです。

代用する際は、いつものきび砂糖のレシピよりも焦げやすくなる可能性があるため、オーブンの温度や焼き時間をこまめにチェックすることをおすすめします。

生地の膨らみやすさ

「きび砂糖でないと膨らまないのでは？」と心配されることがありますが、基本的にはどの砂糖でもイーストは活動し、パンは膨らみます。

理論的には、ミネラル分がイーストの栄養となるきび砂糖やてんさい糖の方が発酵がスムーズに進むと言われることがありますが、家庭でのパン作りレベル（粉200g〜300g程度）では、その差は誤差の範囲です。

しっとり感とパサつき

砂糖の種類による最大の違いは、この「食感」に出るかもしれません。砂糖には水を抱え込む性質がありますが、その強さが種類によって異なります。

きび砂糖や上白糖には「転化糖」が含まれており、保水力が非常に高いため、しっとりとしたパンになりやすく、翌日になってもパサつきにくいのが特徴です。

一方、純度の高いグラニュー糖は比較的あっさりとしており、パンの老化（乾燥して硬くなること）が他の砂糖より少し早い傾向があります。しっとり長持ちさせたいなら、きび砂糖、上白糖、三温糖が有利です。

風味と香りの変化

焼き上がったパンの香りを嗅いだ時、砂糖の違いを感じることができます。

きび砂糖を使うと、ほんのりと黒糖のようなコクのある甘い香りが漂います。これは全粒粉やライ麦など、風味の強い粉とも相性が抜群です。

上白糖やグラニュー糖で代用した場合は、砂糖自体の香りがほとんどないため、バターや小麦、イーストの香りが前面に出ます。シンプルで癖のない味になるので、サンドイッチ用など具材の味を邪魔したくないパンには向いています。

保存性と老化のスピード

パンは焼いた直後から水分が抜け、「老化」が始まります。砂糖にはこの老化を遅らせる働きがあります。

前述の通り、きび砂糖や上白糖、てんさい糖、ハチミツなどは保水力が高いため、パンの柔らかさを長くキープしてくれます。

もしグラニュー糖で代用する場合で、翌日以降も食べる予定があるなら、油脂（バターやオイル）を少し多めにするか、保存方法を工夫することでパサつきを防ぐことができます。

代用する場合の分量と換算のコツ

きび砂糖以外の砂糖を使う場合、分量はそのままで良いのでしょうか？ここでは、失敗しないための計量のポイントと、液体の甘味料を使う場合の注意点を解説します。

基本は重さ（グラム）で計る

パン作りにおいて最も重要なのは、体積（カップやスプーン）ではなく、重量（グラム）で計ることです。

砂糖の種類によって、粒の大きさや空気の含み方が異なります。例えば、ふんわりしているきび砂糖と、粒がしっかりしているグラニュー糖では、同じ「大さじ1」でも重さが変わってきます。

レシピが「きび砂糖 20g」となっている場合は、上白糖でも三温糖でも、同じく「20g」をスケールで計って入れれば、甘さのバランスは大きく崩れません。

かさ（計量スプーン）で計る場合の注意点

もしスケールがなく、計量スプーンで計る場合は注意が必要です。一般的に、上白糖はしっとりしていて密度が高く、きび砂糖は製品によってふんわりしていることがあります。

目安の重量（大さじ1あたり）
・上白糖：約9g
・グラニュー糖：約12g
・きび砂糖：約9g〜10g（商品による）

このように、グラニュー糖は大さじ1杯あたりの重さが重くなります。きび砂糖の代用でグラニュー糖をスプーン計量する場合は、少し少なめに入れるなどの調整が必要です。

液糖（ハチミツなど）を使う場合の水分調整

きび砂糖の代わりに、ハチミツやメープルシロップを使いたい場合もあるでしょう。これらは液体であるため、粉類としての砂糖とは扱いが異なります。

ハチミツは砂糖よりも甘みを強く感じるため、砂糖の分量の約80%の重さに置き換えるのが目安です（砂糖20gならハチミツ16g）。

さらに重要なのが水分の調整です。ハチミツには水分が含まれているため、レシピ通りの水を加えると生地がベタベタになってしまいます。ハチミツを使う場合は、レシピの水分量を5〜10%ほど減らして様子を見るようにしましょう。

代用換算早見表

きび砂糖20gを代用する場合の目安

きび砂糖がない時の緊急対応とアレンジ

「きび砂糖がないけれど、他の砂糖も中途半端にしか残っていない…」そんな緊急事態や、あえて違うアプローチでパンを焼きたい時のアイデアをご紹介します。

家にある複数の砂糖をブレンドする

一種類の砂糖で足りない場合は、複数の砂糖を混ぜて使っても全く問題ありません。むしろ、プロのパン職人は複雑な甘みを出すために砂糖をブレンドすることもあります。

例えば、「上白糖」で甘さの基礎を作り、「黒糖」を少量混ぜてミネラルの風味を足すことで、きび砂糖に近いコクを疑似的に作り出すことができます。

「グラニュー糖」しか残っていないけれどコクを出したい場合は、少しだけ「ハチミツ」を足すなど、家にある甘味料を総動員して必要なグラム数に合わせましょう。

具材で甘みを補う方法

砂糖の量がどうしても足りない場合は、パン生地自体への砂糖はイーストの発酵に必要な最低限（粉に対して3%〜5%程度）にし、具材で甘さを補うのも一つの手です。

レーズンなどのドライフルーツ、甘納豆、チョコレートチップなどを混ぜ込めば、生地自体の甘さが控えめでも満足感のあるパンになります。特にドライフルーツは、噛むほどに甘みが出るので、砂糖不足を補う良いアクセントになります。

あえて砂糖なし（リーンなパン）にする

もし、ふわふわの菓子パンではなく、食事用のパンを作る予定であれば、思い切って砂糖をほとんど使わない「リーンなパン」に変更するのも選択肢です。

フランスパンやカンパーニュなどのハード系のパンは、基本的に砂糖を使わず、粉の甘みを引き出して作ります。きび砂糖がないことをきっかけに、砂糖・卵・乳製品を使わないシンプルなパン作りに挑戦してみるのも新しい発見があるかもしれません。

黒糖を使う場合の注意点

きび砂糖の代わりに「黒糖」を使う場合、黒糖はミネラル分が非常に多く、アクや雑味も強いため、100%置き換えるとパンの味がガラリと変わります。

「黒糖パン」として焼くなら美味しいですが、きび砂糖のような「隠し味的なコク」を求めている場合は、黒糖の使用量は砂糖全体の3割〜5割程度に留め、残りを上白糖などで補うとバランスが良くなります。

また、固形の黒糖を使う場合は、細かく刻むか水に溶かしてから使わないと、生地に混ざりきらずに焦げの原因になるので注意しましょう。

まとめ：きび砂糖の代用は特徴を知って使い分けよう

きび砂糖はパン作りに適した美味しいお砂糖ですが、手元になくても他の砂糖で十分に美味しいパンを焼くことができます。

代用する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

砂糖の種類を変えることは、失敗の原因になるどころか、新しい味や食感に出会うチャンスでもあります。「今日はグラニュー糖だからサクサクの軽いパンにしよう」「三温糖でリッチな焼き色をつけよう」といったように、砂糖の特性を活かして、自由なパン作りを楽しんでくださいね。

どんな砂糖を使うにしても、心を込めて捏ねて焼いたパンは、きっと美味しく仕上がるはずです。