フランスパンやハード系のパンを作ろうと思い立ったとき、レシピに「準強力粉」と書かれていて困ってしまった経験はありませんか?普段からパン作りをしている方でも、常に準強力粉をストックしているご家庭は少ないかもしれません。そんなとき、手元にある強力粉と薄力粉を混ぜて計算することで、準強力粉に近い粉を自分で作ることができるのです。
この記事では、準強力粉の役割や特徴を解説しながら、誰でも簡単に実践できる代用粉の計算方法や配合の黄金比率、そして失敗しないためのコツをわかりやすくご紹介します。代用テクニックを身につければ、パン作りの幅がぐっと広がりますよ。
準強力粉とは?パン作りにおける役割と代用の考え方

パン作りのレシピ本を見ていると、食パンには強力粉、フランスパンには準強力粉という指定をよく目にします。
名前は似ていますが、この「準」がつくだけで粉の性質は大きく異なり、出来上がるパンの食感や風味に決定的な違いを生み出します。
まずは、準強力粉がどのような粉なのか、なぜハード系のパンに使われるのか、その基本的な性質を理解することから始めましょう。
代用を行う上でも、目指すべきゴール(準強力粉の特徴)を知っておくことは非常に重要です。
強力粉、薄力粉、中力粉との違い
小麦粉は主に含まれている「タンパク質(グルテン)」の量によって分類されています。
このタンパク質が水と結びついてグルテンという網目構造を作り、これがパンの骨格となって膨らみを支えたり、独特の食感を生み出したりします。
一般的に、スーパーなどで手に入る小麦粉は以下の3つに大別されます。
小麦粉の分類とタンパク質の目安
・強力粉:11.5%〜13.0%程度(もちもち、ふっくら)
・中力粉:8.5%〜10.5%程度(うどん等の麺類)
・薄力粉:6.5%〜8.5%程度(サクサク、軽い)
では、準強力粉はどこに位置するのでしょうか。
準強力粉のタンパク質含有量は、おおよそ10.5%〜12.5%程度とされており、ちょうど強力粉と中力粉の間、あるいは強力粉の少し下くらいの数値です。
「準」強力粉という名前の通り、強力粉に準ずる強さを持っていますが、強力粉ほどグルテンの結びつきが強くないのが特徴です。
この微妙なタンパク質の差が、パンの仕上がりに大きな影響を与えます。
なぜフランスパンには準強力粉が使われるのか
フランスパン(バゲット)などのハード系のパンがおいしいと感じる要素はどこにあるでしょうか。
多くの人は、外側の皮(クラスト)のパリッとした香ばしさと、内側(クラム)の大小様々な気泡、そして噛み切る際の歯切れの良さを挙げるはずです。
もしフランスパンを強力粉100%で作るとどうなるでしょうか。
強力粉はグルテンが非常に強いため、生地がよく伸びて膨らみすぎる傾向があります。
その結果、皮は分厚く引きが強くなりすぎてしまい、中は目が詰まった均一な食パンのような食感になってしまいます。
逆に、準強力粉を使うとグルテンの力が適度に抑制されます。
これにより、生地の中で発生したガスが不均一に保持され、フランスパン特有のボコボコとした気泡ができやすくなります。
また、グルテンが強すぎないため、焼成時に生地が無理に伸びすぎず、表面がパリッと薄く焼き上がり、噛んだときに「バリッ」と砕けるような心地よい食感が生まれるのです。
つまり、準強力粉は「あえてグルテンを弱める」ことで、ハードパン特有のおいしさを引き出すために選ばれているのです。
代用するなら「強力粉+薄力粉」がベストな理由
準強力粉が手元にない場合、理論上はタンパク質の量が近い「中力粉」を使えば良いように思えます。
しかし、一般的に売られている中力粉は「うどん」を作るための粉であり、小麦の品種や性質がパン用とは異なります。
うどん用の中力粉は、もちもちとした粘りのある食感(コシ)を重視して作られているため、パンにするとどうしても重たい仕上がりになりがちです。
フランスパンのような「サクッ」「パリッ」とした軽さを出すのが難しいのです。
そこで推奨されるのが、パン作り用の強力粉と、お菓子用の薄力粉をブレンドする方法です。
強力粉はもともとパンを作るための粉ですから、良質なグルテンを作る能力に長けています。
そこにグルテンの少ない薄力粉を混ぜることで、全体のタンパク質量(パワー)を物理的に下げ、準強力粉のスペックに数値を近づけるのです。
この方法なら、パンとしての骨格を維持しつつ、強力粉単体では出せない歯切れの良さや軽さを再現しやすくなります。
プロのベーカリーでも、好みの食感を出すために複数の粉をブレンドすることは珍しいことではありません。
誰でも簡単!準強力粉を代用する計算方法と比率

「計算」と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、安心してください。
準強力粉の代用においては、非常にシンプルで覚えやすい「黄金比率」が存在します。
基本的にはこの比率さえ覚えておけば、家庭でのパン作りにおいて大きな失敗をすることはありません。
ここでは、基本の割合から、より正確にこだわりたい人のための計算式、そして作りたい量に応じた具体的なグラム数までを詳しく解説します。
基本の黄金比率は「強力粉8:薄力粉2」
準強力粉を代用する際、もっとも一般的で失敗が少ないと言われている配合比率は「強力粉80%:薄力粉20%」です。
つまり、8:2の割合で混ぜ合わせます。
このバランスは、多くの料理研究家や製パンサイトでも推奨されており、準強力粉に近い扱いやすさと食感を実現できる「黄金比」として知られています。
例えば、強力粉のタンパク質が12%、薄力粉のタンパク質が8%だと仮定してみましょう。
これらを8:2で混ぜると、計算上のタンパク質量は以下のようになります。
(12% × 0.8) + (8% × 0.2) = 9.6% + 1.6% = 11.2%
準強力粉のタンパク質の目安は10.5%〜12.5%程度ですので、11.2%というのはまさに準強力粉のど真ん中の数値になります。
この割合であれば、バゲットなどのハードパンはもちろん、デニッシュやクロワッサンを作る際にも適度な伸展性(生地の伸びやすさ)が得られ、作業もしやすくなります。
まずはこの「8:2」を基本として覚えておきましょう。
タンパク質含有量から計算する正確なブレンド法
基本は8:2ですが、使っている粉の銘柄によってタンパク質の量は微妙に異なります。
例えば「最強力粉」と呼ばれるようなタンパク質13%以上の粉を使っている場合や、逆にタンパク質が低めの強力粉を使っている場合などです。
より厳密に手持ちの粉で計算したい方のために、計算の手順をご紹介します。
計算の手順
1. 自分が持っている強力粉と薄力粉のタンパク質含有量をパッケージ裏の成分表示で確認します。
2. 以下の計算式(鶴亀算のような考え方)を使って、必要な強力粉の割合を導き出します。
少し複雑に見えますが、例を挙げてみましょう。
手持ちの強力粉が13%、薄力粉が8%で、目標を11%にする場合です。
(11 – 8) ÷ (13 – 8) = 3 ÷ 5 = 0.6
つまり、この場合は強力粉を60%(6割)、薄力粉を40%(4割)にすると、ちょうどタンパク質11%の粉が出来上がる計算になります。
このように、強力粉の力が強い場合は薄力粉を多めにすることでバランスを取ることができます。
【早見表】作りたい量ですぐわかる配合グラム数
計算式がわかっても、毎回電卓を叩くのは面倒なものです。
ここでは、基本の「8:2」の割合でブレンドする場合の、よく使う粉の量に応じた早見表を作成しました。
レシピに書かれている準強力粉の分量に合わせて、以下の表を参考に計量してください。
| 準強力粉の必要量 | 強力粉(80%) | 薄力粉(20%) |
|---|---|---|
| 100g | 80g | 20g |
| 150g | 120g | 30g |
| 200g | 160g | 40g |
| 250g | 200g | 50g |
| 300g | 240g | 60g |
| 500g | 400g | 100g |
これなら一目瞭然ですね。
計量の際は、ボウルに強力粉と薄力粉を直接入れてしまって構いませんが、その後でしっかりと混ぜ合わせることが大切です。
7:3や9:1に変えるとどうなる?食感の違い
基本は8:2ですが、あえて比率を変えることで自分好みの食感にコントロールすることも可能です。
この「調整ができる」ことこそ、自家製ブレンドの最大のメリットかもしれません。
■強力粉7:薄力粉3(薄力粉多め)
より軽い食感、サクサク感を強調したい場合におすすめです。
クロワッサンやパイ生地のように層を作るパンや、軽い口当たりのスナックパンに向いています。
ただし、グルテンが少なくなるぶん生地が切れやすくなったり、ダレやすくなったりするため、捏ねや成形の難易度は少し上がります。
■強力粉9:薄力粉1(強力粉多め)
ボリュームを出したいときや、少しモチっとした弾力を残したい場合におすすめです。
ハードトースト(食パンの形をしたハードパン)や、具材をたくさん混ぜ込むようなパンに向いています。
グルテンの力が強くなるので、発酵での膨らみも安定しやすく、初心者の方でも扱いやすい配合と言えます。
失敗知らず!代用粉で美味しいパンを焼くコツ

比率通りに混ぜたからといって、市販の準強力粉と全く同じものができるわけではありません。
やはり「別々の粉を混ぜたもの」であるという特性を理解して扱う必要があります。
ここでは、代用粉ならではの注意点や、より美味しく仕上げるためのちょっとしたテクニックをご紹介します。
これを意識するだけで、焼き上がりのクオリティが格段にアップします。
粉を混ぜ合わせる時のポイント
強力粉と薄力粉をボウルに入れたら、水を入れる前に必ずホイッパー(泡立て器)でよくかき混ぜてください。
袋に入れて振るのも良い方法です。
粉の粒子の大きさは強力粉と薄力粉で異なりますし、混ざり方が不均一だと、場所によってグルテンができやすい部分とできにくい部分が生まれ、パンの膨らみがイビツになったり、焼きムラができたりする原因になります。
「どうせ捏ねる時に混ざるだろう」と思いがちですが、最初に水分を吸う瞬間の均一性が重要です。
あらかじめ空気を含ませるようにしっかり混ぜておくことで、水回りが良くなり、スムーズに生地作りをスタートさせることができます。
水分量は要注意!生地のダレを防ぐ調整テクニック
代用粉を使う際に最も失敗しやすいのが「水加減」です。
一般的に、強力粉に比べて薄力粉は吸水率(水を吸い込む力)が低い傾向にあります。
また、タンパク質が少ないため、水を抱え込む力も弱くなります。
そのため、レシピ通りの水分量(準強力粉を想定した量)を一気に入れてしまうと、生地がベチャベチャになってまとまらなくなることがあります。
失敗を防ぐためには、レシピの水分量から2〜3%程度(または小さじ1〜2杯分)の水をあらかじめ残しておくのが鉄則です。
捏ねながら様子を見て、生地が硬そうであれば残りの水を少しずつ足していく「後入れ法」で調整しましょう。
特に薄力粉の割合を3割以上に増やした場合は、生地がダレやすくなるので注意が必要です。
発酵の見極めと焼き上がりの特徴
代用粉で作った生地は、準強力粉100%の生地に比べると、発酵の進み方や生地の強度に若干の違いが出ます。
グルテンのつながりがやや弱く複雑ではないため、発酵ガスを保持する力が少し劣る場合があります。
そのため、一次発酵や二次発酵で時間をかけすぎると(過発酵)、生地のコシがなくなってペシャンと潰れてしまうリスクがあります。
普段よりも発酵の見極めを慎重に行いましょう。
フィンガーテスト(指をさして穴が戻ってこない状態)などで確認し、適切なタイミングで次の工程へ進むことが大切です。
また、焼き上がりに関しては、薄力粉の効果で皮(クラスト)がサクサクと軽く仕上がる傾向があります。
これは代用粉ならではのメリットとも言えるので、軽やかな食感を楽しんでください。
風味を補うための工夫
市販の準強力粉(特にフランスパン専用粉)は、小麦の風味が強い品種が使われていたり、灰分(ミネラル分)が高くなるように製粉されていたりします。
一方、家庭用の強力粉と薄力粉は、白くきれいに精製されているものが多く、ブレンドしても淡白な味わいになりがちです。
この風味不足を補うために有効なのが「モルトパウダー」や「全粒粉」の活用です。
モルトパウダー(麦芽)をごく少量(粉に対して0.3〜0.5%程度)加えると、発酵を助けるとともに、焼き色が綺麗につき、独特の香ばしい風味が加わります。
また、ブレンドする薄力粉の代わりに、一部を全粒粉に置き換えるのもおすすめです。
小麦の香りが強くなり、より本格的なハードパンの雰囲気に近づけることができます。
中力粉や市販銘柄(リスドォル)との違いを深掘り

ここまで強力粉と薄力粉のブレンドをおすすめしてきましたが、やはり気になるのは「中力粉」や、レシピ本でよく見かける「リスドォル」などの有名ブランド粉の存在です。
これらは代用粉と比べて何が違うのでしょうか。
それぞれの特徴を深く理解することで、代用すべきか、専用の粉を買うべきかの判断基準が見えてきます。
うどん用の中力粉は準強力粉の代わりになる?
結論から言うと、「代用はできるが、仕上がりは別物になる」と考えてください。
スーパーで「中力粉(うどん粉)」として売られている粉は、日本の麺類に適した品種(主にオーストラリア産ASWや国内産小麦)が使われています。
これらは「もちもち感」「つるみ」「粘り」を出すのが得意です。
この中力粉でフランスパンを作ると、皮がパリッとなりにくく、全体的にずっしりとした、あるいは「むっちり」とした食感のパンになります。
これはこれでおいしいのですが、フランスパン特有の軽さや歯切れの良さを求めている場合は、期待外れになる可能性があります。
ただし、ベーグルやピザ、フォカッチャなど、もちもち感が歓迎されるパンを作る場合には、中力粉は準強力粉の代用として(あるいはそれ以上の粉として)活躍してくれます。
有名な準強力粉「リスドォル」の特徴
パン作りをする人なら一度は耳にしたことがある「リスドォル」。
これは日清製粉が製造している、日本で最も有名なフランスパン用準強力粉の銘柄です。
多くのレシピ本で「準強力粉(リスドォル)」と指名されるほど信頼されています。
リスドォルの最大の特徴は、タンパク質含有量が10.7%程度に調整されているだけでなく、伝統的なフランスパンの風味を再現するために工夫されている点です。
粉末麦芽(モルト)があらかじめ添加されている場合もあり、発酵の安定性が高く、誰が焼いても香ばしくきれいな焼き色がつくように設計されています。
また、灰分値が高めで、噛めば噛むほど小麦の甘みを感じることができます。
強力粉と薄力粉を混ぜただけの「自家製準強力粉」では、タンパク質量(食感)は再現できても、この「風味」や「発酵の安定感」までは完全再現できません。
結局、専用粉を買うべき?代用で十分なケースとは
では、わざわざリスドォルなどの専用準強力粉を買う必要があるのでしょうか。
それは「パン作りの頻度」と「求めるクオリティ」によります。
代用で十分なケース
・たまにしかハード系のパンを焼かない。
・惣菜パンや菓子パンの生地として準強力粉を使いたい(具材の味がメインになるため)。
・家の在庫を増やしたくない。
専用粉を買うべきケース
・シンプルなバゲットやカンパーニュを極めたい。
・粉の風味や香ばしさを重視したい。
・頻繁に焼くので、毎回ブレンドするのが手間だ。
最初は手持ちの強力粉と薄力粉のブレンドで試し、ハードパン作りの楽しさに目覚めたら、ぜひ一度「リスドォル」などの専用粉を使ってみてください。その扱いやすさと香りの違いに驚くはずです。
まとめ:準強力粉の代用は計算と比率でマスターしよう

今回は、準強力粉がない時の代用方法や計算の仕方について詳しく解説しました。
準強力粉は、ハードな食感と歯切れの良さを生み出すために欠かせない粉ですが、手に入らなくても諦める必要はありません。
最後に、今回の記事のポイントを振り返ってみましょう。
【記事のポイント】
・基本の代用比率は「強力粉 8 : 薄力粉 2」。
・より軽い食感にしたいなら「7:3」、ボリュームを出したいなら「9:1」で調整可能。
・正確に計算するならタンパク質含有量を確認し、鶴亀算の要領で算出する。
・代用粉を使うときは、水分量を少し減らして様子を見るのが失敗しないコツ。
・風味や本格的な仕上がりを求めるなら、市販の準強力粉(リスドォルなど)には敵わない部分もある。
パン作りは科学のような側面があり、計算と計量がとても大切です。
しかし、厳密すぎる必要はありません。
まずは「8:2」という黄金比率を試してみて、そこから自分好みの固さや食感を見つけるために微調整していくのも、手作りパンならではの楽しみ方です。
ぜひ、この計算テクニックを活用して、お家で美味しいフランスパンやハードパン作りに挑戦してみてくださいね。




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