「お店のようなむぎゅっとしたベーグルが焼きたいのに、なぜかふかふかのパンになってしまう」「もちもち食感を出すにはどの粉を使えばいいの?」そんな悩みをお持ちではありませんか。実は、ベーグルの仕上がりを決定づける最大の要因は「強力粉選び」にあります。
レシピの配合が同じでも、使用する粉を変えるだけで、驚くほど食感や風味が変化するのです。この記事では、ベーグル作りに特化した強力粉の選び方や、人気の銘柄ごとの特徴をわかりやすく解説します。自分好みの食感を目指して、粉選びの楽しさを深めていきましょう。
ベーグルは強力粉で決まる!タンパク質と食感の深い関係

パン作りにおいて、材料の中で最も大きな割合を占めるのが小麦粉です。特にシンプルな材料で作るベーグルは、副材料(バターや卵など)の味が少ない分、小麦粉そのものの性質がダイレクトに仕上がりに影響します。まずは、強力粉の成分がどのようにベーグルの食感を作り出しているのか、その仕組みを理解しましょう。
タンパク質含有量が「むぎゅっ」を生み出す
強力粉のパッケージの裏面を見ると、成分表に「タンパク質(プロテイン)」の数値が記載されています。ベーグル作りにおいて、この数値は非常に重要です。小麦粉に含まれるタンパク質に水が加わり、こねることで「グルテン」という網目状の組織が形成されます。
このグルテンこそがパンの骨格となり、弾力を生み出す源です。一般的にタンパク質含有量が高いほど、グルテンが強く形成され、ベーグル特有の「むぎゅっ」とした噛み応えのある食感になります。逆にタンパク質が少なめの粉を使うと、歯切れの良い、軽い食感に近づきます。
「もちもち」と「ガリッ」の違いはどこから?
一口に「美味しいベーグル」と言っても、好みは人それぞれです。「お餅のようなもちもち感」を求めるのか、「皮が厚くてガリッとしたハード系」を求めるのかによって、選ぶべき粉は変わります。
一般的に、国産小麦は保湿性が高く、しっとりとした「もちもち食感」になりやすい傾向があります。一方、北米産などの外国産小麦はタンパク質が非常に多く、ボリュームが出やすいため、しっかりとした弾力と軽い口どけを併せ持つ「ふっくら・むっちり」な仕上がりになります。自分が目指す理想の食感をイメージしてから粉を選ぶことが成功への近道です。
風味を左右する「灰分(かいぶん)」とは
タンパク質と並んでチェックしたい数値が「灰分(かいぶん)」です。これは小麦の外皮や胚芽に含まれるミネラル分のことで、数値が高いほど粉の色がグレーがかり、小麦本来の香ばしい風味が強くなります。
真っ白でクセのない洗練された味を好む場合は灰分の低い粉を、全粒粉のような香ばしさや深い味わいを好む場合は灰分の高い粉を選ぶと良いでしょう。ベーグルは焼成前に茹でる(ケリング)工程があるため、独特のツヤと香りが生まれますが、灰分の高い粉を使うとさらにその風味が際立ちます。
理想のベーグルを作るためのおすすめ強力粉(国産・外国産)

スーパーや製菓材料店には数多くの強力粉が並んでいますが、ここでは特にベーグル愛好家の間で評価が高い、代表的な銘柄を厳選してご紹介します。それぞれの個性を知ることで、粉選びがぐっと楽しくなります。
春よ恋(国産):バランスの良さが魅力の王道
北海道産小麦の代名詞とも言える「春よ恋(はるよこい)」は、ベーグル作りにおいて最も失敗が少なく、誰にでも愛される味を作れる強力粉です。かつて人気のあった「はるゆたか」の改良品種として登場しました。
最大の特徴は、吸水性が良く、しっとりとした「もちもち感」と、優しい甘みが感じられることです。生地の伸びも良いため成形がしやすく、初心者の方にも特におすすめです。クセがないため、プレーンなベーグルはもちろん、チョコや抹茶などを混ぜ込んだアレンジベーグルにも適しています。
キタノカオリ(国産):黄色い粉が生む甘みとコク
「ベーグルといえばキタノカオリ」と指名買いするファンが多い、非常に人気の高い北海道産小麦です。粉の色が少しクリーム色(黄色み)を帯びているのが特徴で、焼き上がりのクラム(中身)も美味しそうな黄色になります。
この粉の魅力は、なんといってもその「甘み」と「独特のもっちり感」です。水分をしっかりと抱え込む性質があるため、焼いてから時間が経ってもパサつきにくく、翌日もしっとり感が続きます。シンプルな材料で作るからこそ、粉自体の甘みを存分に楽しみたい方に最適です。
ゆめちから(国産):最強クラスの弾力ともちもち感
国産小麦の中では珍しい「超強力小麦」に分類される品種です。グルテンを作る力が非常に強いため、他の国産小麦とブレンドして使われることも多いですが、単体(ストレート)で使用すると、驚くほど弾力の強いベーグルになります。
その食感は「もちもち」を超えて「むっちむち」と表現されることもあります。顎が疲れるほどの噛み応えを求めるハードベーグル派にはたまらない粉です。ただし、グルテンが強すぎて生地が締まりやすいため、こねる際や成形の際に少し力が必要になることもあります。
ゴールデンヨット・スーパーキング(外国産):圧倒的なボリューム
「ゴールデンヨット」や「スーパーキング」は、北米産の小麦を主体とした最強力粉です。タンパク質含有量が非常に高く、釜の中で生地がぐんと伸びる「釜伸び」の良さが抜群です。
これらの粉で作るベーグルは、高さが出てふっくらとした形に仕上がります。食感は、表面はパリッと香ばしく、中は弾力がありつつも歯切れが良いのが特徴です。「お店のような大きくて形の良いベーグルが焼きたい」「サンドイッチ用にボリュームを出したい」という場合には、これらの外国産小麦が大きな力を発揮します。
強力粉と準強力粉の違いは?ベーグルにおける配合のコツ

ベーグルのレシピを見ていると、強力粉だけでなく「準強力粉(フランスパン用粉)」を混ぜるレシピを見かけることがあります。「なぜ強力粉だけじゃダメなの?」「混ぜるとどうなるの?」という疑問にお答えし、食感をコントロールする配合のテクニックを解説します。
準強力粉を混ぜると「歯切れ」が良くなる
準強力粉は、強力粉に比べてタンパク質の量がやや少なく、灰分がやや高い傾向にある粉です。主にバゲットなどのフランスパンを作る際に使われます。
強力粉100%で作るベーグルは、もちもち感が強い反面、冷めるとゴムのように固くなりすぎて噛み切りにくいと感じることがあります。そこで準強力粉をブレンドすると、グルテンの力が適度に弱まり、「サクッ」とした歯切れの良さが加わります。皮(クラスト)のパリパリ感も強調されるため、トーストして食べるのが好きな方におすすめの配合です。
食感を変える黄金比率の目安
自分好みの食感を見つけるために、強力粉と準強力粉のブレンド比率を調整してみましょう。あくまで目安ですが、以下のような比率で変化を楽しめます。
基本の「もちもち」重視なら【強力粉 100%】。
少し軽さを出したいなら【強力粉 70%:準強力粉 30%】。
ハードパンのような「バリッ・ムギュッ」を目指すなら【強力粉 50%:準強力粉 50%】。
まずは強力粉100%で作り、そこから少しずつ準強力粉(「リスドォル」などが有名です)に置き換えていくと、違いがよくわかります。
薄力粉で代用はできる?
準強力粉が手元にない場合、薄力粉を混ぜて代用することも可能です。この場合も、強力粉に対して10%〜20%程度の薄力粉を混ぜることで、グルテンの生成を抑え、少しソフトで歯切れの良い食感にすることができます。
ただし、薄力粉を入れすぎるとベーグル特有の弾力が失われ、単なる「丸いパン」になってしまう可能性があります。あくまで「食感の調整役」として少量加える程度に留めるのが、美味しいベーグルを作るポイントです。
メモ:
市販の「パン用小麦粉」の中には、あらかじめ強力粉と国内産小麦などを最適なバランスでブレンドした商品も販売されています。初心者のうちは、こうしたブレンド粉を利用するのも一つの賢い方法です。
ベーグル作りで強力粉を扱う際の注意点と保存方法

最適な粉を選んだら、その粉のポテンシャルを最大限に引き出すための扱い方を知っておきましょう。特にベーグルは水分量が少ない生地(低加水)で作ることが多いため、他のパンとは少し違った注意点があります。
吸水率の違いによる水分調整
同じ「強力粉」という名前でも、銘柄によって水を吸う量(吸水率)が異なります。一般的に、外国産のタンパク質が多い粉(ゴールデンヨットなど)は水をよく吸いますが、国産小麦(春よ恋など)は水分を吸いすぎるとベタつきやすい傾向があります。
レシピ通りの水を一気に入れるのではなく、まずは90%程度の水を入れて様子を見ましょう。特に国産小麦に変えた途端、生地がベタベタになってまとまらなくなることがあります。粉の種類を変えたときは、必ず水分量の微調整を行ってください。
生地が硬いときの「ベンチタイム」の重要性
ベーグルの生地は水分が少なく、強力粉の強いグルテンが働くため、こね上がり直後は非常に弾力が強く、ゴムのように縮もうとします。この状態で無理やり成形しようとすると、生地が裂けたり、表面が荒れてツヤが出なかったりします。
これを防ぐために重要なのが「ベンチタイム(生地を休ませる時間)」です。分割した後、乾燥しないように濡れ布巾などをかぶせて15分〜20分ほどしっかり休ませることで、グルテンが緩和(リラックス)し、スムーズに成形できるようになります。特にタンパク質の高い粉を使う場合は、この時間を焦らずに取ることが大切です。
粉の鮮度を保つ保存テクニック
小麦粉は生鮮食品ではありませんが、保存状態が悪いと風味が劣化したり、ダニが発生したりする原因になります。特に高温多湿な日本の環境は、粉にとって過酷です。
開封後は袋の口をしっかりと閉じるか、密閉容器に移し替えます。直射日光の当たらない涼しい場所(冷暗所)で保管するのが基本です。夏場や、長期間使い切れない場合は、密閉容器に入れて冷蔵庫の野菜室で保管するのも有効です。ただし、冷蔵庫から出した際の結露には十分注意し、使う分だけ素早く取り出すようにしましょう。
自分好みの強力粉で最高のベーグルを焼き上げましょう

ベーグル作りに使う強力粉について、タンパク質と食感の関係、おすすめの銘柄、そしてブレンドのコツまで解説してきました。
「もちもちで甘みのある生地が好き」なら国産の『春よ恋』や『キタノカオリ』を、「ボリュームたっぷりで弾力のある生地が好き」なら『ゴールデンヨット』などの外国産最強力粉を選ぶのがおすすめです。また、準強力粉をブレンドすることで、バリッとした皮の食感を演出することもできます。
同じレシピでも、粉を変えるだけで「今日のベーグルはいつもより美味しい!」という感動に出会えるのがパン作りの醍醐味です。ぜひ、いくつかの強力粉を試してみて、あなたにとってのベストなベーグルを見つけてください。焼きたての香りと理想の食感は、手作りならではの贅沢なご褒美になるはずです。




コメント