焼き立てのパンの香ばしさと、優雅な紅茶の香りが部屋いっぱいに広がる瞬間は、パン作りをする人にとって至福のひとときです。いつものパン生地に紅茶を加えるだけで、まるでカフェで過ごしているような贅沢な気分を味わえます。
しかし、「紅茶の香りがうまく残らない」「生地が膨らみにくい」といった悩みを持つ方も少なくありません。
この記事では、香りを最大限に引き出すコツや、相性抜群の具材、失敗しないためのポイントを詳しく解説します。初心者の方でも簡単に作れる方法を紹介しますので、ぜひ極上のティータイムを楽しんでください。
種類で変わる!紅茶パンに最適な茶葉の選び方

紅茶パン作りにおいて、最も重要なのが「どの茶葉を使うか」です。普段飲んでいる紅茶でも作れますが、パンにした時にしっかりと個性を発揮する種類を選ぶことで、仕上がりの満足度が大きく変わります。
アールグレイ:香りを残すなら断トツのおすすめ
紅茶パンを作るなら、まずはアールグレイを選んでみてください。アールグレイは、茶葉にベルガモット(柑橘類)の香りをつけたフレーバーティーです。この香料が焼成時の熱にも強く、焼き上がった後もしっかりと華やかな香りを残してくれます。
一般的な茶葉だと、焼いている間に香りが飛んでしまい、「紅茶の色はついているけれど、香りがあまりしない」という状態になりがちです。アールグレイなら、口に入れた瞬間に爽やかな風味が広がり、初心者でも「紅茶パンを作った!」という成功体験を得やすいのが特徴です。
アッサム:濃厚なミルクティーパンに最適
コクのある濃厚な味わいを目指すなら、アッサムが適しています。インドのアッサム地方で採れるこの茶葉は、甘みが強くコクがあり、ミルクとの相性が抜群です。
牛乳を使った生地(ミルクティーパン)を作る場合は、アッサムを選ぶと、茶葉の味がミルクに負けず、まろやかでリッチなパンに仕上がります。色が濃く出るため、焼き上がりの断面も美しいブラウンになり、食欲をそそります。
ダージリン:上品で控えめな味わいを好む方に
「紅茶のシャンパン」とも呼ばれるダージリンは、香り高く繊細な渋みが特徴です。ただし、パンに入れると香りが飛びやすいため、扱いが少し難しい種類でもあります。
ダージリンを使う場合は、バターや砂糖を控えめにしたシンプルな生地(リーンな生地)に合わせるのがおすすめです。具材をあまり入れず、小麦の風味と紅茶の繊細な余韻を楽しみたい、という玄人好みのパン作りに向いています。
初心者も失敗なし!美味しい紅茶パンを作る手順とコツ

茶葉を選んだら、次は生地への混ぜ込み方です。ただ茶葉を入れるだけではなく、ちょっとした工夫をすることで、香りと食感が格段に良くなります。ここでは、誰でも実践できるテクニックを紹介します。
ティーバッグの中身を活用する裏技
茶葉をパンに混ぜ込む際、リーフ(葉)のままだと粒が大きく、食べた時に口に残ってしまいます。そこでおすすめなのが、ティーバッグの中身をそのまま使うという方法です。
ティーバッグに入っている茶葉(ブロークンやダストと呼ばれる等級)は、最初から細かく粉砕されています。そのため、すり鉢やミルで挽く手間が省け、袋から出してそのまま小麦粉に混ぜるだけでOKです。生地全体に均一に混ざりやすく、食べた時の違和感もありません。
「茶葉混ぜ込み」と「煮出し液」の使い分け
紅茶パンの作り方には、主に2つのパターンがあります。目的に合わせて使い分けるか、両方を組み合わせるのがプロの技です。
1. 茶葉を直接混ぜる
粉に対して2〜3%程度の細かい茶葉を混ぜます。粒々とした見た目が可愛らしく、噛んだ瞬間に香りが弾けます。
2. 濃い紅茶液で仕込む
仕込み水の全量、または一部を「濃く煮出した紅茶」に置き換えます。生地全体が茶色く色づき、ベースの味がしっかり紅茶になります。
最も香り高く仕上げるには、「濃い煮出しミルクティーで生地を仕込み、さらに細かい茶葉も少量混ぜる」というダブル使いがおすすめです。
水分の調整と茶葉の吸水に注意
乾燥した茶葉を直接生地に混ぜ込む場合、茶葉が生地中の水分を吸ってしまい、パンがパサつく原因になることがあります。
茶葉を多め(粉250gに対してティーバッグ2袋以上など)に入れる場合は、通常のレシピよりも水分量(水や牛乳)を5〜10ccほど多めにすると、しっとりとした食感を保てます。また、茶葉をあらかじめ少量の熱湯でふやかしてから混ぜ込む方法も、生地馴染みが良くなるため有効です。
お店のような味に!紅茶パンの人気アレンジ具材

紅茶の生地はそのままでも美味しいですが、相性の良い具材をプラスすることで、一気に「お店の味」に近づきます。ここでは、紅茶とペアリングの相性が良い鉄板の組み合わせを3つ紹介します。
ホワイトチョコでまろやかミルクティー風
紅茶パンのアレンジで最も人気があるのが、ホワイトチョコレートとの組み合わせです。紅茶の渋みと香りに、ホワイトチョコのミルキーな甘さが加わることで、口の中で「ロイヤルミルクティー」のような味わいが完成します。
チョコチップタイプを使えば形が残り、板チョコを刻んで入れれば生地に溶け込んで甘みが増します。特にアールグレイ生地との相性は抜群で、甘い菓子パンを作りたい時には外せない組み合わせです。
柑橘系ピールで爽やかなアクセント
レモンピールやオレンジピールなどの柑橘系フルーツは、紅茶(特にアールグレイ)と非常に良く合います。紅茶にはレモンティーという飲み方があるように、酸味と渋みは互いを引き立て合う関係です。
生地に混ぜ込むと、甘いパンの中に爽やかな苦味と酸味がアクセントとして加わり、飽きのこない大人の味わいになります。クリームチーズを一緒に包み込むと、さらにリッチなデザートパンになります。
りんごとシナモンでデザートパンに
アップルティーをイメージした「りんご紅茶パン」も定番です。ドライアップルや、砂糖で煮た角切りりんごを生地に混ぜ込みます。生のりんごを使う場合は水分が出るので、しっかり甘煮にしてから使いましょう。
ここに少量のシナモンパウダーを加えると、香りの奥行きがさらに広がります。秋から冬にかけてのティータイムにぴったりの、温かみのある味わいです。
ホームベーカリーで焼く場合の注意点

手軽にパンが焼けるホームベーカリー(HB)でも、もちろん紅茶パンは作れます。しかし、全自動だからこそ気をつけておきたいポイントがあります。機械任せにして失敗しないための秘訣を見ていきましょう。
茶葉を入れるタイミングは「ミックスコール」で
最初から小麦粉と一緒に茶葉を入れてしまうと、こねの工程で茶葉が細かくなりすぎたり、摩擦熱で香りが飛んでしまったりすることがあります。また、茶葉の成分が最初から溶け出すと、グルテンの形成を阻害することもあります。
ホームベーカリーで焼く場合は、具材投入の合図である「ミックスコール」が鳴ったタイミングで茶葉を入れるのがベストです。これにより、適度な粒感が残り、香りを閉じ込めたまま焼き上げることができます。
牛乳を使うならタイマー予約は避ける
紅茶パンをリッチにするために、水の代わりに牛乳を使うレシピも人気です。しかし、牛乳や卵を使う場合は、夏場などは特に傷みやすいため、長時間のタイマー予約(夜セットして朝焼くなど)は避けたほうが無難です。
どうしてもタイマーを使いたい場合は、スキムミルクと水を使い、茶葉は最初から粉に混ぜておく(香りは少し弱まりますが)などの工夫が必要です。衛生面を考慮して、早焼きコースなどを活用しましょう。
焼き上がり後の冷却で香りが定着
パンが焼き上がったら、すぐに型から取り出して網の上で冷ましましょう。熱々の状態では、蒸気と一緒に香りも逃げやすい状態です。
粗熱が取れて冷める過程で、紅茶の香りがクラム(パンの中身)に落ち着き、定着します。完全に冷めてからスライスしたり、袋に入れたりすることで、翌日食べた時に袋を開けた瞬間の素晴らしい香りを楽しめます。
うまく膨らまない?紅茶パン作りのQ&A

「レシピ通りに作ったはずなのに、なぜか膨らみが悪い」「生地がダレてしまった」というトラブルは、紅茶パン特有の原因があるかもしれません。よくある疑問とその解決策をまとめました。
Q. 紅茶を入れると膨らみが悪くなるのはなぜ?
これは紅茶に含まれる「タンニン(カテキン)」という成分が影響しています。タンニンには、パンの骨格となるグルテンの結合を弱めたり、イーストの活動を少し抑えてしまう性質があると言われています。
Q. 焼くと香りが消えてしまうのですが?
焼成温度が高すぎたり、時間が長すぎたりすると香りは飛びやすくなります。また、使う茶葉の量が少なすぎる可能性もあります。
香りを強くしたい場合は、通常のレシピよりも茶葉を多め(粉250gに対してティーバッグ2〜3袋=4〜6g程度)にしてみてください。また、焼成温度をレシピの範囲内で少し低めに設定し、じっくり焼くのも一つの手ですが、まずは香料の強い「アールグレイ」を使うのが一番の近道です。
Q. 保存方法はどうすればいいですか?
紅茶パンは香りが命です。乾燥するとパサつきやすく、香りも抜けてしまいます。粗熱が取れたら、ほんのり温かいうちに一つずつラップで包み、ジッパー付きの保存袋に入れてください。
翌日以降に食べる場合は、そのまま冷凍保存がおすすめです。食べる時は自然解凍してからトースターで軽く温め直すと、茶葉の香りが復活し、焼きたてに近い美味しさを楽しめます。
まとめ

紅茶パンのレシピを成功させるためのポイントは、香りの強いアールグレイを選び、細かい茶葉を生地に混ぜ込むことです。さらに、牛乳を使ってタンニンの影響を抑えたり、ホワイトチョコやフルーツなどの具材と組み合わせることで、パン屋さんに負けない本格的な味わいを楽しめます。
ホームベーカリーを使う場合も、茶葉の投入タイミングや水分調整を意識するだけで、仕上がりが格段に良くなります。ぜひ、お気に入りの紅茶を用意して、焼き上がるまでの芳醇な香りと共に、優雅なパン作りを楽しんでみてください。




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