自家製酵母の世界へようこそ。果物や穀物から自分で育てた酵母を使って焼くパンは、格別の香りと味わいがあります。しかし、酵母液を作った後の「元種(もとだね)」作りや、その後の自家製酵母の元種の継ぎ方で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。元種は一度作れば終わりではなく、定期的に手入れをすることで、より安定したパン作りが可能になります。
この記事では、自家製酵母を元気に保ち、美味しいパンを焼き続けるための元種の継ぎ方や保存のコツを、初心者の方にも分かりやすくお伝えします。元種の状態を正しく見極める方法や、よくあるお悩みへの対処法もまとめました。この手順を覚えれば、酵母が毎日の生活に馴染み、パン作りがもっと身近で楽しいものに変わっていくはずです。
自家製酵母の元種の継ぎ方の基本ルール

自家製酵母を使ってパンを焼く際、酵母液をそのまま使う方法もありますが、粉と混ぜて「元種」を作ることで、発酵力が安定し、失敗の少ないパン作りができます。元種を元気に維持するためには、いくつかの基本的なルールを守ることが大切です。まずは、元種とは何かという点から、継ぎ足しに必要な準備について確認していきましょう。
元種(もとだね)とは?パン作りに必要な理由
元種とは、酵母液に小麦粉を混ぜて発酵させたもののことを指します。酵母液だけでパンを焼くことも可能ですが、元種を作ることで酵母の密度が高まり、生地を膨らませる力が非常に安定します。特に初心者の方は、液種よりも元種を使ったほうが、ボリュームのあるパンを焼きやすいというメリットがあります。
また、元種を作る工程で粉に馴染ませておくことで、本ごねの際に生地が繋がりやすくなり、食感も良くなります。元種は一度作って終わりではなく、使った分だけ粉と水を足して増やす「継ぎ足し」を行うことで、長期間使い続けることが可能です。これを繰り返すうちに酵母が環境に慣れ、その家独自の味わい深い種へと育っていきます。
元種は生き物ですので、定期的に新しい「エサ」となる粉と水を与える必要があります。この作業が「継ぐ」と呼ばれる工程です。正しく継いでいくことで、常に元気で発酵力の強い状態をキープでき、いつでも思い立った時に美味しいパンを焼く準備が整います。手間はかかりますが、それだけ愛着も湧いてくるものです。
継ぎ足し(リフレッシュ)に必要な材料と道具
元種の継ぎ足しに必要なものは、いたってシンプルです。基本的には「強力粉(または全粒粉)」と「水分(水、または新しい酵母液)」、そしてそれらを混ぜるための「清潔な容器」と「スプーン」があれば始められます。材料がシンプルだからこそ、それぞれの品質や清潔さにはこだわりたいところです。
粉は、普段パン作りに使っている強力粉で問題ありませんが、元気が足りない時はミネラル豊富な全粒粉を少し混ぜると発酵が促されます。水は、塩素を除去した浄水やミネラルウォーターを使うのが理想的です。道具に関しては、雑菌の繁殖を防ぐために、必ず煮沸消毒やアルコール消毒を施したものを使用するように心がけてください。
【用意するものリスト】
・残っている元種
・強力粉(または準強力粉、全粒粉)
・浄水(または新しい酵母液)
・ガラス製の保存瓶(中身が見えやすいもの)
・清潔なスプーンやスパチュラ
・輪ゴム(カサが増えたか確認用)
失敗しないための配合比率
元種を継ぐ際の配合には、いくつかのパターンがありますが、最も一般的で覚えやすいのは「1:1:1」の比率です。これは、残っている元種の重さに対して、同じ重さの粉と、同じ重さの水を加える方法です。例えば、元種が50g残っていたら、強力粉50gと水50gを加えて混ぜ合わせます。
この比率で継ぐと、水分量が100%の扱いやすい元種になります。パンのレシピ計算もしやすく、初心者の方には特におすすめの割合です。もし、もう少し固めの種が好みであれば、粉の量を増やして調整することも可能です。大切なのは、毎回同じ比率で継ぐことで、種の状態の変化に気づきやすくすることです。
また、発酵の勢いがない時は、水の代わりに新しい「酵母液」を使って継ぐと、酵母の数が一気に増えて元気が復活します。逆に、毎日パンを焼く場合などは、水だけで継いでも十分に発酵力を維持できます。自分のパン作りのペースに合わせて、配合を微調整できるようになると、管理がぐっと楽になります。
作業を始める前に知っておきたい清潔な環境作り
自家製酵母を扱う上で、何よりも大切なのが「清潔さ」です。空気中には酵母以外の菌もたくさん存在しています。元種を継ぐ際に雑菌が入ってしまうと、酵母が負けてしまい、カビが生えたり変な臭いがしたりする原因になります。作業前には必ず手を石鹸でよく洗い、使用する道具は熱湯消毒を行いましょう。
特に保存容器の口の周りに古い種がこびりついていると、そこから腐敗が始まることがあります。継ぎ足しをする際は、できるだけ新しい清潔な容器に移し替えるか、容器の壁面をきれいに拭き取るようにしてください。少しの注意で、元種の寿命は大きく変わります。酵母が心地よく過ごせる環境を整えてあげることが成功への一歩です。
また、作業する場所も重要です。粉が舞いやすい場所や、生ゴミの近くなどは避け、清潔なキッチンカウンターなどで作業を行いましょう。香りの強いものの近くに置くと、酵母に匂いが移ってしまうこともあるため注意が必要です。丁寧な準備が、結果として美味しいパンへと繋がっていきます。
元種を元気に保つための具体的な手順とタイミング

元種を最高のコンディションに保つためには、日々のメンテナンスが欠かせません。ただ粉と水を混ぜるだけでなく、適切なタイミングで行うことが重要です。酵母は温度によって活動のスピードが変わるため、季節に合わせた管理も求められます。ここでは、具体的な継ぎ足しの手順と、発酵を見極めるタイミングについて解説します。
初めての元種作りから完成までのステップ
酵母液が完成したら、まずは最初の元種作りからスタートします。1日目は「酵母液と粉」を同量混ぜて、暖かい場所に置きます。2日目は、1日目の種に「粉と水(または液)」を足して混ぜます。これを3回から4回繰り返すことで、パンを膨らませるのに十分な力が備わった元種が完成します。
各ステップでは、混ぜた直後のカサから2倍〜3倍に膨らむまで待ちます。最初は時間がかかるかもしれませんが、回数を重ねるごとに膨らむスピードが早くなっていくのが分かるはずです。この「育っていく過程」を観察するのも、自家製酵母の醍醐味と言えるでしょう。4回目が終わり、安定して膨らむようになったら、いよいよパン作りに使用できます。
完成した元種は、すぐにパン作りに使えますが、一度冷蔵庫に入れて落ち着かせることで、酸味と旨味のバランスが整います。初めて作る際は、焦らずじっくりと酵母が育つのを待ってあげてください。泡が細かく立ち、フルーティーな香りが漂ってくれば、美味しいパンが焼ける合図です。
日々の継ぎ足し(かけ継ぎ)の具体的な方法
一度完成した元種を使い続ける作業を「かけ継ぎ」と呼びます。パン作りに使って少なくなった容器に、直接粉と水を足して混ぜるだけなので、手順自体は非常に簡単です。残った元種の重さを計り、それと同量の粉と水を加えます。全体が滑らかになるまで、底からしっかり混ぜ合わせるのがポイントです。
混ぜ終わったら、容器の側面に付いた汚れをスパチュラなどできれいに落とし、蓋を軽く閉めます。そのまま常温に置き、元のカサから2倍程度に膨らむまで待ちます。膨らみきったところで冷蔵庫へ移動させましょう。この「常温で発酵させてから冷蔵庫へ」という流れが、元種を弱らせないための鉄則です。
もし容器が汚れてきたと感じたら、別の清潔な瓶に全量を移してから継ぎ足しを行ってください。古い種が残っていると、それが酸化の原因になることもあります。数回に一度は、新しい住処(容器)を用意してあげると、酵母も喜びます。毎日のちょっとした気遣いが、長期間安定した種を維持する秘訣です。
使う直前に活性化させるためのポイント
冷蔵庫で保存している元種をパン作りに使う際は、そのままではなく「活性化」させてから使うのがベストです。使う数時間前、あるいは前日に冷蔵庫から出し、少量の粉と水を足して一揉み(リフレッシュ)してあげましょう。冷えて眠っていた酵母が目を覚まし、活発に動き始めます。
リフレッシュした種が常温でぷくぷくと膨らみ、勢いがある状態で生地に混ぜると、一次発酵がスムーズに進みます。特に冬場や、冷蔵庫に長く入れていた種は、この工程を挟むだけでパンの膨らみが劇的に変わります。時間の余裕がある時は、ぜひ試してみてください。
また、活性化させる際は、室温に戻すだけでも効果がありますが、やはり「新しいエサ(粉と水)」を与えるのが最も効果的です。酵母に「これから仕事だよ」と合図を送るイメージで、優しく混ぜてあげましょう。元気がみなぎった元種は、生地の中でも力強く活動してくれます。
季節や気温に合わせた発酵時間の調整
酵母は温度変化にとても敏感です。夏場は常温に置いておくと、あっという間に発酵が進み、放っておくとすぐに過発酵(発酵しすぎの状態)になってしまいます。逆に冬場は、なかなかカサが増えず、発酵完了までに半日以上かかることも珍しくありません。
季節に合わせて、置く場所を工夫しましょう。夏は涼しい場所、冬は日当たりの良い窓際や、オーブンの発酵機能(30度以下)を利用するのがおすすめです。目安としては、20度〜25度前後が酵母にとって最も活動しやすい温度帯です。極端に暑すぎたり寒すぎたりする場所は避けるようにしてください。
時間はあくまで目安にし、常に「見た目の膨らみ具合」で判断する癖をつけましょう。気温が高い日は早めにチェックし、低い日は気長に待つ。そんな酵母のペースに合わせたパン作りが、自家製酵母と上手に付き合うポイントです。慣れてくると、気温を見るだけで発酵時間が予想できるようになります。
元種の保存方法と長持ちさせるメンテナンスのコツ

毎日パンを焼くわけではない場合、元種をどのように保存しておくかが大きな悩みどころです。適切に管理すれば、元種は数週間、あるいはそれ以上持たせることも可能です。ここでは、冷蔵庫での保存方法や、長期間使わない時の対処法など、元種を長持ちさせるための具体的なテクニックを紹介します。
冷蔵庫での保管方法と理想的な温度
元種は、発酵がピークに達したタイミングで冷蔵庫に入れて保管するのが基本です。冷蔵庫の中は温度が低いため、酵母の活動がゆっくりになり、栄養を消費するスピードを抑えることができます。理想的な温度は5度〜10度程度、野菜室よりも冷蔵室の方が安定して低い温度を保てるためおすすめです。
保存する際は、蓋を完全に密閉するのではなく、少しだけガスが抜けるように緩めておくか、パッキンのない容器を使うと安心です。発酵が続いている場合、密閉しすぎると容器内にガスが溜まり、蓋を開けた瞬間に中身が噴き出したり、最悪の場合容器が割れたりする危険があるからです。
また、冷蔵庫のドアポケットは開閉による温度変化が激しいため、奥の方に置くのが良いでしょう。温度が一定に保たれる場所の方が、酵母のストレスが少なくなります。週に一度は様子を見て、表面が乾いていないか、変な色になっていないかを確認するようにしてください。
長期間パンを焼かない時の対処法
旅行や忙しさで、しばらくパンを焼けないこともあるでしょう。そんな時でも、1週間に一度は「かけ継ぎ」だけを行うようにしてください。パンを焼かなくても、古い種の一部を捨てて、新しい粉と水を足すことで、酵母の命を繋いでいくことができます。これを「リフレッシュ」と呼びます。
もし1ヶ月以上放置してしまうと、酵母が飢餓状態になり、雑菌に負けてしまう可能性が高まります。どうしても時間が取れない場合は、種をできるだけ固め(水分を減らして粉を多め)に作っておくと、分解がゆっくり進むため、少しだけ寿命を延ばすことができます。
長期間休ませていた元種を再び使う際は、いきなりパンを焼くのではなく、2〜3回連続で継ぎ足しを行い、発酵力が戻ったことを確認してから使いましょう。最初はゆっくりでも、新しいエサを繰り返し与えれば、酵母は再び元気に目覚めてくれます。諦めずに丁寧にお世話をしてあげましょう。
捨て種(余った元種)の活用アイデア
元種を継ぎ足していくと、どうしても使いきれない「捨て種」が出てきます。全てを継ぎ足すと元種の量が膨大になってしまうため、一定量を処分する必要があるのですが、捨てるのはもったいないですよね。そんな捨て種は、お料理や別のお菓子作りに活用するのがおすすめです。
例えば、パンケーキやスコーンの生地に混ぜると、独特の風味としっとり感が加わり、とても美味しく仕上がります。また、ピザ生地やフォカッチャのように、あまり膨らみを重視しない平たいパンに使うのも良いアイデアです。捨て種には旨味が凝縮されているので、調味料のような感覚で使えます。
【捨て種の活用レシピ例】
・もちもちパンケーキ
・ザクザク食感のスコーン
・自家製クラッカー
・天ぷらの衣(カリッと揚がります)
・カレーの隠し味
容器の洗浄と入れ替えのタイミング
元種を長期間同じ容器で管理していると、どうしても縁に付いた種が乾燥して固まったり、衛生面が気になったりしてきます。目安としては、週に1回、あるいは継ぎ足しをする2〜3回に1回は、新しい清潔な容器に移し替えるようにしましょう。これにより、雑菌の繁殖リスクを最小限に抑えられます。
新しい容器に移す際は、古い容器の底の方に溜まった元気な種を優先的に移動させます。容器は必ず煮沸消毒かアルコール除菌を行い、完全に乾燥させてから使用してください。水分が残っていると、そこから腐敗が始まる可能性があるため注意が必要です。
また、容器の材質はガラス製が最適です。傷がつきにくく、汚れも落ちやすいため、衛生的に保ちやすいのが特徴です。中身が見えるので、発酵の具合(気泡の様子や高さ)を一目で確認できるメリットもあります。プラスチック容器を使う場合は、傷がついたら新しいものに交換するようにしましょう。
元種の状態を見極めるチェックポイント

自家製酵母は言葉を発しませんが、その見た目や香り、感触で自分の状態を教えてくれます。元種が今、元気なのか、それとも疲れているのかを見極める力は、パン作りを成功させるために非常に重要です。ここでは、元種が「美味しいパンを焼ける状態」かどうかを判断するためのチェック項目をまとめました。
発酵が完了したサイン(見た目と香り)
継ぎ足した元種が「完成」したかどうかは、まずボリュームを確認します。仕込んだ直後の高さから2倍〜3倍程度まで膨らんでいれば、発酵は順調です。表面だけでなく、瓶の横から見て、細かい気泡が全体にびっしりと均一に入っているかどうかも大切なポイントです。
次に、蓋を開けて香りを確かめてみてください。フルーティーで甘酸っぱい、あるいはエタノール(お酒)のような爽やかな香りがしていれば、元気な証拠です。指で少し触ってみた時に、シュワシュワという微かな音がしたり、弾力のあるムースのような感触だったりすれば、まさに使い時と言えます。
逆に、膨らみは十分でも香りがツンと鼻を突くような強い酸臭に変わっている場合は、発酵が進みすぎている可能性があります。その場合は、一度継ぎ足しをして状態をリセットしてから使うのが無難です。五感をフルに使って、酵母のコンディションを感じ取ってみましょう。
酵母が弱っている時の見分け方
元種に元気がなくなってくると、いくつかの明確なサインが現れます。まず分かりやすいのが「膨らむスピード」です。いつもなら3時間で2倍になるのに、半日経ってもあまり変化がない場合は、酵母の数が減っているか、活動が鈍っています。また、気泡が大きく、すぐに潰れてしまうような状態も赤信号です。
香りの変化も見逃せません。爽やかさが消え、なんだか古臭い匂いや、薬品のような嫌な匂いが混じり始めたら注意が必要です。さらに、見た目が「ドロッ」と液状化してきたり、表面に黒っぽい液体(アルコール分)が溜まっていたりする場合も、酵母がエサを求めて疲弊しているサインです。
弱っている状態で無理にパンを焼いても、生地がだれてしまったり、焼き上がりが重くなったりしてしまいます。まずは「なぜ弱ったのか」を考え、適切なケアをしてあげることが先決です。放置しすぎたのか、温度が高すぎたのか。原因を特定することで、次の対策が立てやすくなります。
復活させるためのレスキュー方法
元気がなくなった元種も、早めに対処すれば復活させることができます。最も効果的なのは「少量の種に、たっぷりの新しい粉と水を与える」ことです。これを何度か繰り返すことで、弱っていた酵母が再び増殖し、発酵力を取り戻します。これを「リフレッシュ」と呼びます。
もし酵母液が残っていれば、水の代わりに新しい酵母液を使って継いでみてください。外から新しい元気な酵母を追加することで、元種全体の活性がグンと上がります。また、エサとなる粉を全粒粉やライ麦粉に変えてみるのも一つの手です。これらの粉はミネラルが豊富で、酵母の成長を強力にサポートしてくれます。
リフレッシュを行う際は、25度〜28度程度の、酵母にとって心地よい温度環境に置いてあげましょう。一度で復活しない場合は、半日おきに2〜3回繰り返してみてください。徐々に気泡の勢いが戻り、香りが良くなってくればレスキュー成功です。酵母の生命力を信じて、根気強く付き合ってみてください。
酸味が出た時の原因と対策
自家製酵母パンには特有の酸味がありますが、元種自体が強すぎる酸味を持つようになると、焼き上がりのパンが酸っぱくなりすぎてしまうことがあります。この酸味の主な原因は、発酵時間の長すぎ(過発酵)や、保存温度が高すぎることによる乳酸菌の過剰な繁殖です。
対策としては、まず「継ぎ足しの頻度を上げる」ことが挙げられます。古い種が残っている時間が長いほど酸味は蓄積されるため、少量ずつこまめに継ぐようにしましょう。また、継ぐ際に使う「古い種」の割合を減らす(例えば、種:粉:水=1:2:2にする)ことも、酸味を和らげるのに有効です。
粉の種類を、酸味の出にくい「白米粉」や「強力粉」に絞るのも一つの方法です。全粒粉やライ麦粉は風味が良い反面、酸味も出やすい性質があるためです。元種の酸味をコントロールできるようになると、自分好みの味のパンを自在に焼けるようになり、パン作りの幅がさらに広がります。
初心者が迷いやすいトラブルと解決策

自家製酵母を始めたばかりの頃は、予想外の出来事に驚くことも多いでしょう。昨日まで元気だったのに急に変化したり、本に書いてある通りにならないこともあります。ここでは、初心者が直面しやすい代表的なトラブルとその解決策を、具体的な事例を挙げて分かりやすく解説します。
膨らみが悪い時に確認すべきこと
元種が思うように膨らまない時、まず確認すべきは「温度」です。部屋の温度が低すぎませんか? 20度を下回ると酵母の活動は極端にゆっくりになります。逆に35度を超えると、酵母がダメージを受けてしまうこともあります。まずは適切な温度(25度前後)の場所に置いて様子を見ましょう。
次に「酵母液の鮮度」を確認してください。元となる酵母液自体が古いと、粉と混ぜても勢いが出ません。酵母液を作ってから時間が経ちすぎている場合は、新しい液を作り直すか、市販のドライイーストを極微量(耳かき一杯程度)足して、スターターとしての力を補ってあげるという裏技もあります。
また、粉と水の分量を間違えていないかもチェックポイントです。水分が多すぎると気泡が支えきれず、膨らんでいる実感が湧きにくいことがあります。一度、粉を多めにして固めの種を作ってみると、膨らみの勢いが確認しやすくなります。焦らず、一つずつ原因を潰していきましょう。
表面に水が浮いてきた(離水)時の対処
冷蔵庫で保存している元種の表面に、グレーや茶色っぽい液体が溜まることがあります。これは「離水」と呼ばれる現象で、酵母がエサを食べ尽くしてしまい、活動が停滞しているサインです。液体自体に嫌な臭いがなければ腐敗ではありませんが、「早くエサをください」という酵母からのSOSです。
対処法としては、浮いている液体を捨てるか、そのまま混ぜ込んでから、すぐに継ぎ足し(リフレッシュ)を行ってください。新しい粉と水を与えることで、酵母は再び活動を開始します。この液体はアルコール成分を含んでいるため、放置すると酸味が強くなる原因にもなります。
離水を防ぐためには、冷蔵庫に入れる前にしっかりと発酵させすぎないこと、そして1週間以内には必ず一度継ぎ足しを行うことが大切です。元種の状態をこまめにチェックする習慣をつければ、このような変化にもすぐに対応できるようになります。
カビが生えてしまった時の判断基準
元種の表面に、白や黒、緑色のフワフワしたものが現れたら、それは残念ながらカビです。特に夏場の高温多湿な時期や、容器の消毒が不十分な場合に発生しやすくなります。白い膜のようなもの(産膜酵母)であれば、取り除いてリフレッシュすれば使える場合もありますが、色のついたカビは危険です。
カビの胞子は目に見えない部分まで広がっている可能性があるため、一部だけ取り除いて使うのはおすすめしません。もしカビを確認したら、残念ですがその元種は全て破棄し、容器を徹底的に殺菌し直してから、新しく種を作り直すのが最も安全な選択です。
粉の種類を変えても大丈夫?
元種を継ぐ際に、「前回は強力粉だったけれど、今回は全粒粉を使いたい」というように、粉の種類を変えることは可能です。むしろ、全粒粉やライ麦粉を混ぜることで、酵母の活性が高まり、風味が豊かになるというメリットもあります。ただし、粉によって水分の吸収率が異なる点には注意が必要です。
全粒粉は普通の強力粉よりも水分を多く吸うため、同じ分量の水で継ぐと、少し固めの仕上がりになります。逆に、薄力粉を使うとダレやすくなります。粉を変える際は、生地の固さがいつもと同じくらいになるよう、水の量を微調整するのがコツです。
また、極端に粉を変えすぎると、酵母が戸惑って一時的に発酵が鈍ることもあります。もし種類を変えたい場合は、少しずつ混ぜる割合を増やしていくのがスムーズです。自分好みの「最強のブレンド」を見つけるのも、自家製酵母の継ぎ足しにおける楽しみの一つと言えるでしょう。
自家製酵母の元種の継ぎ方をマスターしてパン作りをもっと楽しむ

自家製酵母の元種の継ぎ方は、最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れてしまえば日々のルーティンの一部になります。毎日少しずつ表情を変える酵母と向き合う時間は、忙しい日常の中でホッと一息つける穏やかなひと時にもなるはずです。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
元種を元気に保つためには、以下の3つのポイントを意識してください。
| チェック項目 | 具体的なアクション |
|---|---|
| 清潔さの維持 | 道具の煮沸消毒と、容器の縁をきれいに保つ。 |
| 適切な配合 | 「種:粉:水=1:1:1」を基本に、状態を見て調整する。 |
| 温度管理 | 25度前後の発酵と、ピーク時の冷蔵保存を徹底する。 |
自家製酵母のパン作りは、正解が一つではありません。使う粉の種類や気温、そして継ぐタイミングによって、焼き上がるパンの表情は千差万別です。失敗しても、それは酵母からのメッセージ。次はどうすればもっと元気になるかを考えるプロセスこそが、上達への近道です。
この記事で紹介した継ぎ方のコツを参考に、ぜひあなただけの「秘伝の元種」を育ててみてください。丁寧に手入れされた元種から焼けるパンは、きっとあなたや大切な人を笑顔にしてくれるはずです。酵母と共に暮らす、豊かで美味しいパン作りを、これからも長く楽しんでくださいね。
自家製酵母の元種の継ぎ方まとめ

自家製酵母の元種の継ぎ方は、パン作りの質を左右する非常に重要な工程です。まず、元種を継ぐ際は「清潔な道具を使うこと」と「1:1:1の配合比率を守ること」を徹底しましょう。これにより、初心者の方でも安定して酵母を維持することができます。また、季節や室温に合わせて発酵時間を調整し、カサが2倍〜3倍に膨らむのをしっかり見極めることが成功の秘訣です。
冷蔵庫で保存する際は、酵母が飢餓状態にならないよう、週に一度はリフレッシュ(かけ継ぎ)を行う習慣をつけましょう。もし元気がなくなっても、新しい粉と水(または酵母液)を与えれば、酵母は再び活力を取り戻します。捨て種も無駄にせず、パンケーキやスコーンなどに活用することで、自家製酵母の風味を余すことなく楽しむことができます。
元種は一度作れば長く付き合えるパートナーのような存在です。日々の観察を通じて、酵母の状態を感じ取り、適切なケアをしてあげることで、パン作りはより深く、面白いものになっていきます。この記事で学んだ継ぎ方の基本を大切に、ぜひこれからも自家製酵母のある暮らしを楽しんでください。



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