手作りパンを焼いて、いざカットしてみた時に大きな穴が開いていてガッカリした経験はありませんか。せっかく一生懸命にこねて時間をかけて発酵させたのに、パンに空洞ができる原因がわからないと、次も同じ失敗をしてしまうのではないかと不安になりますよね。
実は、パンの中に意図しない空洞ができてしまうのには、いくつかの明確な理由があります。生地の扱い方や発酵のタイミング、さらには成形のちょっとしたクセなど、原因を知ることで対策はぐっと簡単になります。
この記事では、パン作りの初心者の方でも分かりやすいように、空洞ができる具体的な原因とそれを防ぐための解決策を詳しく解説します。お店のような均一で美しい断面のパンを目指して、一つひとつの工程を見直してみましょう。
パンに空洞ができる原因とは?まずは基本の理由をチェック

パンの中にぽっかりと空いた穴は、見た目だけでなく食感にも影響を与えます。まずは、なぜ空洞ができてしまうのかという基本的なメカニズムについて理解を深めていきましょう。主な要因は「空気の巻き込み」「粉の影響」「発酵の状態」の3つに大きく分けられます。
成形時に空気を巻き込んでしまっている
パンに空洞ができる原因として最も多いのが、生地を成形する際に大きな気泡をそのまま巻き込んでしまうことです。パン生地は発酵の過程で酵母(イースト)がガスを発生させますが、これを適切に抜かないまま丸めたり伸ばしたりすると、そのガスが大きな塊となって残ってしまいます。
特に食パンやロールパンのように生地を巻く工程がある場合、巻き始めに隙間があったり、生地の表面に浮き出た大きな気泡を潰し忘れたりすると、焼き上がった際にその部分がそのまま空洞として残ってしまいます。「ガス抜き」という工程は、単に空気を抜くだけでなく、大きな気泡を細かく分散させる役割も持っているのです。
成形に入る前のベンチタイム(生地を休ませる時間)の後には、手のひらで優しく、かつ確実に生地を叩いて全体の厚みを均一にすることが大切です。ここで大きな気泡を見逃さないことが、綺麗な断面を作るための第一歩となります。
打ち粉を使いすぎて生地が密着していない
生地が手や台にくっつくのを防ぐために使う「打ち粉」ですが、これも使いすぎるとパンに空洞ができる原因になります。打ち粉が多すぎると、生地と生地が重なる部分に粉が挟まってしまい、本来くっつくべき場所が接着されなくなってしまうからです。
例えば、生地をクルクルと巻く際に表面に大量の粉がついていると、層と層の間に隙間ができ、そこが焼き上がった時に空洞になります。パン生地は焼成中に膨らみますが、粉が邪魔をして接着が甘い部分は、膨張する力に耐えられず剥がれてしまうのです。
打ち粉は必要最低限にとどめ、もし多くつきすぎてしまった場合は、ハケなどで余分な粉を払い落としてから成形するように心がけましょう。生地の表面が少ししっとりした状態で接着させるのが、空洞を作らないコツです。
二次発酵の不足によるガスの偏り
発酵の段階でも空洞ができる原因は潜んでいます。特に「二次発酵(最終発酵)」が不足していると、オーブンに入れた瞬間に生地が急激に膨らむ「オーブンスプリング」という現象が起き、その勢いで内部の弱い部分が裂けて大きな空洞を作ることがあります。
二次発酵が足りない生地は、まだ弾力が強く、ガスを保持する力が不安定です。その状態で強い熱が加わると、ガスが一部に集中して溜まってしまい、内相(パンの中身)が荒くなってしまうのです。逆に、発酵させすぎても生地の組織が弱まり、重力に耐えきれず上が空いてしまうことがあります。
適切な発酵の見極めは難しいものですが、レシピに記載された時間だけでなく、生地の大きさや触った時の感触で判断する癖をつけましょう。指で軽く押した時に、ゆっくりと跡が戻ってくるくらいがベストなタイミングです。
成形工程でのミスを防ぐ!空洞を作らないテクニック

パンの形を作る「成形」は、パン作りの楽しさの一つですが、実は最も空洞ができやすい工程でもあります。ちょっとした手の動きや意識の持ち方で、焼き上がりの仕上がりは劇的に変わります。ここでは、プロも実践している成形時のポイントを詳しく見ていきましょう。
丁寧なガス抜きで気泡を均一にする
パン生地を分割して丸め直し、ベンチタイムを終えた後の生地には、新しいガスが溜まっています。このガスをしっかりと、かつ丁寧に抜くことが重要です。麺棒を使う場合は、中心から上下、中心から左右へと力を均等にかけて、大きな気泡を外へ押し出すように動かしましょう。
手で広げる場合も、指の腹ではなく手のひら全体を使って、端の方までしっかりプレスします。この時、「パチパチ」と音がするのは大きな気泡が潰れている証拠です。この音が聞こえなくなるまで丁寧にガスを抜くことで、きめ細やかなパンの組織が作られます。
ただし、力を入れすぎて生地を傷めてしまうと、今度は膨らみが悪くなってしまいます。優しく、でも確実に。この絶妙な力加減が、空洞のない美しいパンを作るための重要なポイントとなります。
巻き終わりの締め加減を調節する
ロールパンや食パンを成形する際、生地を巻く作業が発生します。この時、巻き込みが緩すぎると、焼いている間にその隙間が熱で膨張し、大きな空洞になってしまいます。逆にきつく締めすぎると、生地がストレスを感じて破裂の原因になるため、注意が必要です。
理想的なのは、「芯をしっかりと作り、あとは生地の重みを利用して転がす」イメージです。最初の巻き始めは少し強めに指先で押さえて芯を作り、その後は隙間ができないように意識しながら、優しく巻いていきます。
また、最後に生地の端を閉じる「綴じ目」も重要です。ここがしっかり閉じられていないと、そこからガスが漏れたり、逆に内部でガスが渋滞して空洞を作ったりします。綴じ目は指先でつまむようにして、完全に密着させるようにしましょう。
生地の温度管理を徹底する
成形中の生地温度も、空洞の発生に密接に関係しています。生地が温まりすぎてダレてしまうと、ガスが保持できずに大きな穴になりやすくなります。逆に冷えすぎていると、生地が硬くて伸びが悪く、無理に成形しようとして組織を壊してしまうことがあります。
特に夏場などは、手から伝わる体温や室温で生地がどんどん緩んでいきます。手早く成形を終わらせることはもちろん、もし途中で生地が扱いづらいと感じたら、一度冷蔵庫で数分冷やすなどの工夫も有効です。
生地が扱いやすい状態(25度〜28度前後)を保つことで、成形時のミスを減らすことができます。常に生地の状態を観察し、ベストなコンディションで形を作ることを心がけてみてください。
成形時のコツ:生地を巻くときは「隙間」を徹底的に排除しましょう。指先で軽く押さえながら巻くことで、中の空気が自然と押し出され、密着度が高まります。
発酵の状態を見極めて空洞を未然に防ぐ

発酵はパンに命を吹き込む大切な工程ですが、最もコントロールが難しい部分でもあります。パンに空洞ができる原因の多くは、この発酵の過不足に関係しています。最適なタイミングでオーブンに入れるための判断基準を身につけましょう。
一次発酵でしっかりとコシを作る
まずは一次発酵の状態をチェックしましょう。ここで十分に発酵が進んでいないと、その後のガス抜きや成形がうまくいかず、結果として空洞ができやすい生地になってしまいます。一次発酵は、生地のボリュームが2倍から2.5倍になるまでじっくり待ちます。
確認方法として有名なのが「フィンガーテスト」です。粉をつけた指を生地に差し込み、抜いた穴がそのまま残れば完了です。穴がすぐに塞がってしまう場合は発酵不足、逆に生地全体がしぼんでしまう場合は過発酵です。
この段階で強いグルテン(生地の骨組み)のネットワークができていることが、焼成時にガスを細かく保持するために不可欠です。一次発酵を疎かにしないことが、空洞防止への近道となります。
二次発酵の見極めは「大きさ」と「弾力」
成形後の二次発酵は、パンの最終的な形を決める重要な時間です。ここでの発酵が足りないと、オーブンの中で生地が急激に伸びようとして、中の組織が耐えきれず大きな穴が開くことがあります。これを「ケービング」や「腰折れ」の前兆として起こる空洞と呼ぶこともあります。
目安としては、成形直後の1.5倍から2倍程度の大きさになるまで待ちます。型を使っている場合は、型の8分目から9分目まで生地が上がってきた時が投入のタイミングです。見た目の大きさだけでなく、軽く触れてみて指の跡がうっすら残る程度の柔らかさを確認しましょう。
もし、指で触れた時に跳ね返すような強い弾力がある場合は、まだ発酵不足です。もう少し暖かい場所で待ってあげてください。この「待つ勇気」が、綺麗な内相を作る秘訣です。
温度と湿度のバランスを保つ
発酵させる環境も、空洞の発生に影響を与えます。乾燥した場所で発酵させると、生地の表面が硬くなってしまい、焼成時に生地が膨らもうとする力を表面が邪魔してしまいます。その結果、行き場を失ったガスが内部で大きな空洞を作ってしまうのです。
発酵時には必ず濡れ布巾をかけたり、発酵機能付きのオーブンであればスチーム機能を使ったりして、湿度を80%前後に保つようにしましょう。表面をしっとり保つことで、生地はストレスなく均一に膨らむことができます。
また、急激な温度変化も生地に負担をかけます。急いで発酵させようと高い温度に設定しすぎると、酵母の活動が偏り、不自然な大きな気泡ができやすくなります。30度〜35度程度の適温で、ゆっくりと発酵させるのが理想です。
発酵の見極めポイント
・一次発酵:指を刺して穴が戻ってこないか確認
・二次発酵:型に対しての高さと、生地の優しい弾力をチェック
・環境:乾燥は厳禁!湿度は常に高めにキープする
材料の選び方とこね方の工夫で生地を強くする

パンに空洞ができる原因は、レシピそのものや、生地を作る段階にも潜んでいます。ガスを抱え込むための「袋」となる生地自体が弱いと、どんなに丁寧に成形しても空洞は防げません。ここでは、強い生地を作るためのポイントを解説します。
グルテンを十分に引き出すこね方
パンの組織を支えるのは、小麦粉に含まれるタンパク質から作られる「グルテン」です。このグルテンがしっかり繋がっていないと、イーストが出すガスを保持できず、ガス同士がくっついて大きな空洞になってしまいます。まずは、しっかりとこねて滑らかな生地を作ることが基本です。
生地を薄く伸ばした時に、向こう側が透けて見えるくらいの「グルテン膜」ができているか確認しましょう。膜がすぐにブツブツと切れてしまう場合は、まだこね不足です。特に手ごねの場合は、体重をのせて力強く生地を叩きつけるようにこねるのがコツです。
ただし、機械ごねの場合は「こねすぎ」による生地の酸化や温度上昇にも注意が必要です。「適正なこね時間」を見極めることが、細かく均一な気泡を維持できる強い生地を作ることにつながります。
水分の量(加水率)を適切に保つ
生地に入れる水分の量も、空洞の発生に大きく関わります。一般的に、水分量が多い(加水率が高い)パンほど、大きな気泡ができやすくなります。フランスパンやチャバタなどは、あえてこの性質を利用して大きな空洞を作りますが、食パンなどでこれをやってしまうと「失敗」になってしまいます。
初心者の方は、まず扱いやすい加水率(65%〜70%程度)から始めるのがおすすめです。水分が多すぎると生地がベタついて成形が難しくなり、結果としてガス抜きが不十分になったり、形を整える際に空気を巻き込みやすくなったりします。
また、使う小麦粉の種類によっても吸水率は異なります。レシピ通りに入れてもベタつく場合は、次回は少し水分を減らすなど、自分の環境に合わせた微調整を行ってみてください。扱いやすい硬さの生地は、成形の精度を高めてくれます。
副材料の混ぜ込み方に注意する
レーズンやくるみ、チーズなどの具材を入れる際、その周囲に空洞ができやすくなることがあります。これは具材と生地の間に隙間ができたり、具材の重みで生地の組織が潰れたりすることが原因です。具材はできるだけ水分を拭き取り、生地に均一に分散させるようにしましょう。
例えば、チーズのように加熱すると溶けるものは、溶けた後に空間が残りやすいです。これを防ぐには、生地で包む際に空気を押し出すように密着させることや、具材が直接表面に出すぎないように工夫することが大切です。
また、砂糖や油脂が多いリッチな生地は、グルテンの形成を遅らせる性質があります。これらの材料を入れるタイミング(後入れなど)を守ることで、具材を入れても負けない、しっかりとした土台の生地を作ることができます。
焼成時のトラブルを回避して綺麗な断面に

いよいよ最後の工程である「焼成(焼く作業)」です。オーブンの中では生地に急激な変化が起こります。せっかくここまで完璧に準備しても、焼き方一つでパンに空洞ができる原因を作ってしまうことがあります。最後のリスクを回避する方法を学びましょう。
オーブンの予熱温度を正しく設定する
オーブンに入れる際、庫内の温度が十分に上がっていないと、パン生地はダラダラと時間をかけて膨らむことになります。この「ゆっくりすぎる膨張」は、生地の中の気泡が合体して大きな空洞を作る原因になります。逆に、温度が高すぎても表面だけが先に固まり、中のガスが逃げ場を失って空洞化します。
レシピの指定温度よりも少し高めに予熱しておき、パンを入れる瞬間に扉を開けて温度が下がる分を計算に入れるのがプロの技です。投入後は設定温度に戻し、一気に生地の構造を安定させることが大切です。
特に食パンなどの大きなパンを焼く場合は、中心部まで熱が伝わるのに時間がかかります。適切な予熱と焼成温度の維持が、内部の空洞化を防ぐための「蓋」の役割をしてくれます。
スチームや霧吹きの効果を活用する
ハード系のパンを焼くときによく使われるスチームですが、これは表面を乾燥させずに生地を十分に膨らませるために行います。前述の通り、表面が先に乾燥して硬くなると、内部のガスの圧力で生地が引き裂かれ、皮のすぐ下に大きな空洞ができることがあります。
菓子パンや総菜パンでも、オーブンに入れる直前に霧吹きで軽く表面を湿らせることで、生地の伸びを助けることができます。これにより、ガスが均等に分散しながら膨らみ、一部に集中して空洞ができるのを防いでくれるのです。
ただし、水分をかけすぎると今度は焼き色がつきにくくなったり、食感が損なわれたりするため、表面がうっすら湿る程度の細かいミストを意識してください。オーブンの癖を把握して、最適な蒸気量を調整してみましょう。
焼き上がりのショックで蒸気を逃がす
パンが焼き上がった直後、型ごと台の上に「ドン!」と落とす動作を見たことがありませんか。これは「ショックを与える」という工程で、パンの内部に溜まった熱い蒸気を一気に入れ替え、パンがしぼむのを防ぐためのものです。
この工程を怠ると、パンの中に残った水蒸気が冷えて水滴になり、生地をふやかして組織を壊してしまうことがあります。これが原因で、冷めた後にパンの上が凹んだり、中に大きな隙間ができたりすることがあります(これを「腰折れ」と呼びます)。
焼き上がったらすぐに型から出し、網の上で蒸気がこもらないように冷却します。パンがしっかり冷めるまではカットするのを我慢するのもポイントです。熱いうちに切ってしまうと、断面の生地が潰れて空洞のように見えてしまうことがあるからです。
焼成後のポイント:焼き上がりの衝撃は、中の「熱い空気」と「外の空気」を入れ替えるための儀式です。これを忘れると、せっかくの膨らみが台無しになってしまうこともあります。
パンに空洞ができる原因と解決策のまとめ

パンに空洞ができる原因は、決して一つではありません。成形時のガス抜きが甘かったり、打ち粉が多すぎて生地が剥がれてしまったり、あるいは発酵のタイミングがずれていたりと、いくつかの要因が重なり合って起こるものです。
美しい断面のパンを焼くためには、以下のポイントを意識してみてください。
| 工程 | 空洞を防ぐ対策 |
|---|---|
| 生地作り | グルテン膜ができるまでしっかりこねて、強い組織を作る |
| 一次発酵 | フィンガーテストで適正な発酵状態を見極める |
| 成形 | 大きな気泡を潰し、打ち粉は最小限にして隙間なく巻く |
| 二次発酵 | 乾燥を防ぎ、生地が1.5〜2倍になるまで十分に待つ |
| 焼成 | 適切な予熱を行い、焼き上がりにはショックを与えて蒸気を抜く |
一つひとつの工程を丁寧に行うことで、パンに空洞ができる原因を確実に取り除いていくことができます。一度にすべてを完璧にするのは難しいかもしれませんが、まずは自分の成形や発酵のタイミングを少しずつ意識することから始めてみましょう。
失敗は次の成功へのヒントです。もし空洞ができてしまっても、その穴がどこに、どのようにできていたかを観察すれば、原因を特定することができます。今回の内容を参考に、ぜひ理想のふわふわでキメの整ったパン作りを楽しんでくださいね。



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