せっかく一生懸命こねて焼き上げたパンを型から出してみたら、底の部分に大きな穴が開いていたり、角が凹んでいたりしてガッカリした経験はありませんか。この「底抜け」と呼ばれる現象は、手作りパンにおける代表的な失敗の一つです。
見た目が損なわれるだけでなく、スライスしたときに形が崩れてしまうため、なんとか解決したい悩みですよね。実は、パンの底抜けの原因には、発酵の具合や成形の仕方、さらにはオーブンの温度など、いくつかの明確な理由が隠されています。
この記事では、初心者の方でも分かりやすいように、底抜けが起こるメカニズムとその具体的な解決策を詳しく解説します。原因を一つずつ紐解いていくことで、次からは底までふっくらと詰まった、理想的なパンが焼けるようになりますよ。ぜひ最後までチェックして、パン作りをより楽しいものにしていきましょう。
パンの底抜けの原因はどこにある?代表的な4つのポイント

パンを焼いたときに底や側面に空洞ができてしまう「底抜け」は、特定の工程だけで起こるものではありません。生地の作り始めから焼き終わりまで、複数の要素が重なり合って発生することが多いのが特徴です。
底抜けが起こりやすい主な要因
・成形時のガスの巻き込み
・二次発酵の不足による膨らみ不足
・生地の水分量とこね具合のアンバランス
・オーブンの下火が弱すぎる
まずは、自分のパン作りの中でどのステップに改善の余地があるのかを探るために、代表的な4つの原因を詳しく見ていきましょう。
成形時のガス抜きと巻き込みの甘さ
パンの底抜けの大きな原因の一つに、成形工程での「ガスの抱え込み」が挙げられます。生地を丸めたり、麺棒で伸ばしたりする際に、大きな気泡をしっかりと抜いておかないと、その気泡が焼成中に膨張して底に溜まってしまいます。
特に食パンなどの型に入れるパンの場合、生地を巻くときに空気を一緒に巻き込んでしまうと、焼いている間にその空気が逃げ場を失い、生地を押し上げて底に隙間を作ってしまいます。これを防ぐには、麺棒を丁寧にかけて、端の方までしっかりガスを抜くことが大切です。
また、巻き終わりの「とじ目」が甘い場合も、そこから空気が入り込みやすくなります。生地を巻くときは適度なテンション(張り)を持たせ、最後はしっかりと指先でつまんで閉じることが、綺麗な底面を作るための第一歩となります。
二次発酵が不足している状態での焼成
二次発酵とは、成形した後の生地をオーブンに入れる直前まで膨らませる工程のことです。この二次発酵が不足していると、オーブンに入れた瞬間に生地が急激に膨らむ「オーブンスプリング」が強く出すぎてしまいます。
急激な膨張に生地の伸びが追いつかないと、生地が型から浮き上がってしまい、その隙間がそのまま底抜けとなって残ってしまいます。特に型の高さに対して生地が十分に上がってこないうちに焼き始めると、この現象が顕著に現れます。
「早く焼きたい」という気持ちをぐっと抑えて、レシピで指定されている高さや見た目の膨らみ具合になるまで、じっくり待つことが重要です。生地が型の8割から9割程度までしっかり膨らんでいるかを確認してから、オーブンへ入れるようにしましょう。
生地の水分量とグルテンのつながり
生地の配合そのものに底抜けの原因が隠れていることもあります。例えば、生地の水分量が多すぎると、生地が柔らかすぎて腰折れしやすくなり、焼いている最中に底の部分を支えきれなくなることがあります。
反対に、こね不足でグルテン(生地の弾力を作る成分)が十分に形成されていないと、発生したガスを保持する力が弱くなります。ガスが生地の中に留まれず、重力に従って上へと逃げようとする力が働くため、結果として底の部分がスカスカになってしまうのです。
生地をこねる際は、薄い膜が張る「グルテン膜チェック」を行い、生地が十分につながっているかを確認してください。適切な水分量と力強いグルテン組織があれば、生地は型の底に密着したまま安定して膨らんでくれます。
型に塗る油や離型スプレーの過剰な使用
パンが型にくっつかないように塗るバターやショートニング、離型スプレーの使いすぎも、実は底抜けの隠れた原因になります。油分が多すぎると、生地が型の上を滑ってしまい、しっかりと底に定着できなくなります。
特に液状の油をドバッとかけてしまうと、焼成中にその油が沸騰して生地を押し上げてしまうことがあります。これにより、パンの底に不自然な凹みや空洞ができてしまうのです。
型に油を塗る際は、キッチンペーパーなどを使って薄く均一に広げるのがコツです。余分な油は拭き取るくらいの気持ちで準備すると、生地が型にほどよく吸いつき、綺麗な焼き色とともに底抜けのない仕上がりになります。
発酵のバランスを見直して底抜けのトラブルを回避する

パン作りにおいて「発酵」は最も奥が深く、同時に底抜けに直結する重要な工程です。一次発酵と二次発酵、それぞれのタイミングで適切なガス抜きと膨らみを管理することで、空洞のないパンに近づけます。
発酵の状態は気温や湿度に左右されやすいため、レシピの時間だけを頼りにせず、生地の状態を五感でチェックする習慣をつけましょう。ここでは、発酵管理のポイントを深掘りしていきます。
一次発酵でのガスの抜け具合を確認する
一次発酵の目的は生地を熟成させることですが、ここで発生したガスを次の工程へ行く前にどう扱うかが重要です。一次発酵が終わった直後の生地はガスをたっぷり含んでおり、そのまま成形すると大きな気泡が残りやすくなります。
パンの底抜けを防ぐには、一次発酵後の「フィンガーテスト」で発酵完了を確認した後、手のひらで優しく、かつ確実に全体を押して大きなガスを分散させることが大切です。このとき、中心から外側に向かってガスを押し出すイメージで行いましょう。
細かいガスが均一に分散された状態であれば、二次発酵や焼成時に一部だけが異常に膨らむのを防げます。丁寧なガス抜きは、きめ細やかな内相(パンの中身)を作るだけでなく、底抜け防止の基盤となります。
二次発酵の見極めポイントをマスターする
二次発酵の終了タイミングを見誤ると、底抜けの確率はぐんと上がります。特に食パン型を使用する場合、型の上端から何センチ下まで生地が来ているかという「高さ」での判断が一般的です。
しかし、気温が低い時期などは見た目が膨らんでいても、中の温度が上がっておらず、オーブンに入れた瞬間に温度差で過剰な反応が起きることがあります。生地を指で軽く押したとき、跡がゆっくり戻ってくるくらいがベストな状態です。
すぐに跡が消えてしまうのは発酵不足、反対に跡がそのまま残って生地が沈んでしまうのは過発酵です。ちょうど良いタイミングで見極めることで、焼成中の生地の動きが安定し、底抜けのない均一な焼き上がりになります。
室温と湿度がパンに与える影響
パンは生き物と言われるように、環境の影響をダイレクトに受けます。特に冬場の乾燥した時期や、夏場の高湿度な環境では、発酵のスピードや生地の質感に大きな差が出ます。
乾燥した環境で二次発酵を行うと、生地の表面が乾いて硬くなってしまいます。すると、焼成時に中身が膨らもうとする力を表面の皮が塞いでしまい、逃げ場のなくなったガスが底に溜まって底抜けを引き起こします。
発酵中は濡れ布巾をかけたり、発酵機能のあるオーブンの場合は湿度設定に気を配ったりして、生地の表面を常にしっとり保つようにしましょう。湿度が保たれた柔軟な生地は、型に沿って素直に伸びてくれるため、空洞ができにくくなります。
成形時の「巻き」と「締め」で生地の安定感を高める

パンの成形は、単に形を整えるだけでなく、生地の中に「適度な緊張感」を与える作業です。この緊張感が不足していたり、逆に強すぎたりすると、底抜けの原因を作ってしまいます。
特に山型食パンや角食パンなど、生地を丸めてから型に入れるタイプは、成形の技術が直接底の仕上がりに影響します。ここでは、底抜けを防ぐための具体的な成形テクニックを解説します。
空気を巻き込まない成形テクニック
生地を麺棒で伸ばす際、まずは中央から上下に、次に中央から左右に伸ばして、厚みを均一にすることが重要です。このとき、端の方に溜まったガスを追い出すように麺棒を転がしてください。
生地を巻いていくときは、指先を使って少しずつ、空気を押し出すように巻いていきます。ふんわりと巻きすぎてしまうと、巻いた層の間に空隙(くうげき)ができ、それが焼成中に大きな穴へと成長してしまいます。
「きつく巻きすぎると生地が傷む」と心配されるかもしれませんが、緩すぎても形を保てません。生地が心地よく張っているのを感じる程度の強さで、一巻きごとに密着させるイメージで成形しましょう。
型に入れる際の配置と力加減
成形した生地を型に入れる瞬間にも注意が必要です。型の中にただ置くだけではなく、底面に生地がしっかりと接するように配置しましょう。山型食パンのように複数の玉を並べる場合は、隣り合う生地との隙間にも注意します。
生地を置いた後に、手の甲で軽く上から押さえて底に密着させる手法もあります。これにより、底面の空気が抜け、生地が型の角まで行き渡りやすくなります。ただし、強く押しすぎるとガスが抜けすぎて膨らみが悪くなるため、あくまで優しく「馴染ませる」程度に留めてください。
また、とじ目を真下に持ってくることも鉄則です。とじ目が横を向いていると、そこからガスが漏れたり、生地が不均一に持ち上がったりして、底の安定感を欠く原因になります。
型のメンテナンスと下準備
意外と見落としがちなのが、型のコンディションです。使い込んだ型で油馴染みが悪いと、生地が一部分だけくっついてしまい、それが原因で引き連れが起きて底抜けが発生することがあります。
新しい型を使う場合は、空焼きをしっかりと行い、油の膜を作っておく「シーズニング」が不可欠です。また、角に古いカスが残っていると、そこが起点となって生地が浮いてしまうこともあるため、隅々まで清潔に保つようにしましょう。
型が綺麗で適切に油が馴染んでいれば、生地は焼成中にスムーズに膨らみ、型の形状に沿って美しく焼き上がります。道具のケアも、美味しいパンを焼くための大切な工程の一部です。
パン型にはシリコン加工やアルタイト製など種類がありますが、素材によって熱伝導率が異なります。自分の持っている型の特徴を知ることも、底抜け防止のヒントになります。
オーブンの加熱環境を整えて底からしっかり焼き固める

パンが最終的に形作られるのはオーブンの中です。発酵や成形が完璧でも、オーブンの熱が適切に伝わらなければ、底抜けは防げません。特に「下火(したび)」のコントロールが鍵となります。
家庭用オーブンはプロ仕様の石窯などと違い、底面からの熱が伝わりにくい構造のものが多いです。ここでは、家庭でできるオーブンの火力を最適化する方法について見ていきましょう。
下火の強さと熱の伝わり方
パンの底抜けは、底面の焼き固まりが遅いために、上の生地が膨らむ力に引っ張られて底が浮いてしまうことで起こります。つまり、底を早めに焼き固めることができれば、空洞はできにくくなります。
下火が弱いと感じる場合は、オーブンの設定温度を少し上げるか、下段で焼くように調整してみましょう。特に大型の食パンなどは、中心部まで熱が伝わるのに時間がかかるため、しっかりとした下火が必要です。
もし可能であれば、予熱の段階から天板をオーブンに入れておき、熱々の天板の上に型を乗せて焼くという方法も有効です。これにより、焼き始めの瞬間に底面へダイレクトに熱を伝えることができます。
予熱の重要性と天板の使い方
オーブンの予熱は、単に設定温度になれば良いというわけではありません。庫内の壁面や天板が十分に熱くなるまでには、設定温度に到達してからさらに10分程度の時間が必要です。不十分な予熱は、焼き始めの温度低下を招き、底抜けのリスクを高めます。
また、天板の向きや位置も重要です。オーブンの機種によっては熱の回りにムラがあるため、毎回同じ場所で底抜けが起きる場合は、天板の前後を入れ替えたり、位置を一段下げたりして工夫してみましょう。
さらに、型を置くときは天板の中央に配置し、熱風が均一に当たるように配慮してください。複数の型を一度に焼く場合は、型同士が近すぎると熱の循環が妨げられるため、適切な間隔を空けることが大切です。
オーブンのクセを把握するコツ
オーブンには一台ごとに個性(クセ)があります。「レシピ通りに200度で焼いているのに、いつも底が白い」という場合は、実際の庫内温度が設定よりも低い可能性があります。
市販のオーブン用温度計を設置して、自分のオーブンの実力を把握するのは非常に効果的です。もし下火が極端に弱い機種であれば、天板を二枚重ねにする、あるいは逆に天板を抜いて網の上に型を乗せるなど、熱の伝え方をカスタマイズする必要があります。
何度か試行錯誤して、自分のオーブンでの「黄金の設定」を見つけることができれば、底抜けの悩みからは解放されます。焼き色のつき具合を毎回記録に残しておくのも、上達への近道です。
| 状況 | 推奨される対策 |
|---|---|
| 底が白っぽく、大きな空洞がある | 設定温度を10度上げ、下段で焼く |
| 角だけが凹んでいる | 予熱時間を延ばし、天板もしっかり温める |
| 全体的に膨らみが悪い | 二次発酵の時間を延ばし、温度管理を徹底する |
生地の状態や具材の扱いがパンの底に与える影響

ここまでは基本的な生地や工程についてお伝えしましたが、パンの種類や中に入れる具材(フィリング)によっても、底抜けのしやすさは変わってきます。特にデリケートな生地や、水分の多い具材を扱うときには注意が必要です。
生地のコンディションを整え、具材の特性を理解することで、さらに一歩進んだパン作りができるようになります。最後のチェックポイントとして、生地の強度と具材の入れ方について見ていきましょう。
グルテン膜のチェックを忘れずに
パンの骨格となるのは、小麦粉から作られるグルテンです。このグルテンが十分に発達していないと、生地は風船のようにガスを包み込むことができません。こね不足の生地は、焼いている最中にガスが漏れ出し、その衝撃で底が浮いてしまうことがあります。
こね終わりの目安として、生地を少し取って指先でゆっくり広げ、向こう側が透けて見えるくらいの薄い膜が張るかどうかを確認してください。これをグルテン膜チェックと呼びます。
膜がすぐにプツンと切れてしまう場合は、まだこねが足りません。特に全粒粉やライ麦などを混ぜる場合は、グルテンが形成されにくいため、通常よりも丁寧なこね作業を意識しましょう。強い生地を作ることは、底抜けを防ぐための最強の武器になります。
フィリング(具材)の入れ方の工夫
レーズンやくるみ、あるいはクリームやチーズなどの具材を入れるパンは、プレーンなパンよりも底抜けが起きやすい傾向にあります。これは、具材の重みで生地が沈んだり、具材から出る水分や蒸気が生地を押し上げたりするためです。
具材を入れる際は、生地の底面に直接具材が触れないように配置するのがコツです。中心に具材を置き、周りをしっかり生地で包み込むようにすることで、焼成中に具材から出た蒸気が底に溜まるのを防げます。
また、水分の多い野菜や果物を使う場合は、事前によく水気を切っておくことが重要です。具材の周囲にできる「蒸気の層」が、結果として大きな空洞(底抜け)を作ってしまうため、具材の準備には細心の注意を払いましょう。
焼き上がりの衝撃と冷却の重要性
パンが焼き上がった直後のアクションも、底の形状維持に関係しています。焼き上がったらすぐに型を数センチの高さから台にトンと落とし、中の熱い空気を入れ替える「ショック」という作業を行いましょう。
これを行わないと、パンの中の蒸気が冷える際に急激に収縮し、パンの側面や底が内側に引き込まれる「腰折れ」が発生します。これが原因で、後から底に隙間ができてしまうこともあるのです。
型から出した後は、すぐにケーキクーラーなどの網の上に乗せ、底面の通気性を確保してください。いつまでも型に入れたままにしたり、平らな場所の上で冷ましたりすると、底が蒸れてベチャッとなり、形が崩れる原因になります。最後まで油断せず、丁寧に扱うことが大切です。
パンの底抜けの原因を解決して成功させるまとめ

パンの底抜けは、一つの原因だけでなく、「発酵不足」「成形時の空気残り」「オーブンの下火不足」といった複数の要素が絡み合って起こる現象です。一見難しそうに思えますが、それぞれの工程を丁寧に見直せば必ず解決できます。
まずは、麺棒を使ってしっかりガスを抜くこと、そして二次発酵で型に対して十分な高さが出るまで待つことを意識してみてください。同時に、オーブンの予熱をしっかり行い、下からの熱を生地に伝える工夫をすることで、焼き上がりは劇的に変わります。
もし一度で解決しなくても、今回のポイントを順番に試していけば、あなたの環境に合った正解が見つかるはずです。底までふっくら、きめ細やかに焼き上がったパンの美味しさは格別ですよ。失敗を恐れずに、理想のパン作りを目指して挑戦を続けていきましょう。




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