パン作りを始めようとしたとき、レシピに「無塩バター」と指定されていて驚いたことはありませんか。スーパーのバター売り場に行くと、青いパッケージの有塩バターと赤いパッケージの無塩バターが並んでいて、どちらを買うべきか迷ってしまう方も多いはずです。
パンがテーマのこのブログでは、バターの無塩と有塩の違いを詳しく紐解き、なぜパン作りには無塩が推奨されるのか、その理由を分かりやすく解説します。また、トーストとして食べるときにどちらが美味しいのか、代用はできるのかといった疑問にもお答えします。
バターの特性を正しく理解することで、いつものパンがさらに美味しく、風味豊かに仕上がるようになります。それぞれの特徴を活かした使い分けをマスターして、毎日のパンライフをもっと楽しみましょう。
バターの無塩と有塩の大きな違いとそれぞれの特徴

バターには大きく分けて「無塩」と「有塩」の2種類がありますが、その最大の違いは製造工程で食塩を添加しているかどうかです。まずは、基本的な数値や風味の違い、保存性のルールについて詳しく見ていきましょう。
塩分含有量の具体的な違いと理由
一般的な有塩バターには、100gあたり約1.5g前後の食塩が含まれています。これは、バター全体の約1.5%に相当します。一方、無塩バターは「食塩不使用バター」とも呼ばれ、製造過程で塩が加えられることはありません。
もともと有塩バターが普及したのは、塩を加えることで保存性を高めるためという理由がありました。現在のように冷蔵・冷凍技術が発達していなかった時代、塩は食品を腐敗から守る大切な役割を担っていたのです。
現代では保存技術が向上したため、純粋に味の好みや調理の目的によって選ばれるようになりました。このように、わずかな塩分量の差ですが、料理やパン作りに与える影響は非常に大きなものとなります。
風味とコクの感じ方の違い
有塩バターと無塩バターを食べ比べてみると、その風味の違いに驚くかもしれません。有塩バターは塩気が加わることで、バターが持つミルクの甘みが引き立ち、一口食べた瞬間にしっかりとしたパンチを感じるのが特徴です。
対して無塩バターは、生クリームをそのまま固めたような雑味のないピュアな乳製品の香りがダイレクトに伝わってきます。塩気がない分、後味がさっぱりとしていて、鼻から抜ける芳醇な香りをじっくりと楽しむことができます。
料理にコクを出したいときや、素材の香りを邪魔せずに油分を加えたいときなど、目指す味わいによってこれらを使い分けるのがグルメな楽しみ方です。
保存期間と鮮度の関係について
塩には防腐作用があるため、一般的に有塩バターの方が無塩バターよりも賞味期限が長く設定されています。未開封の状態であれば、有塩バターの方が数ヶ月ほど長く保存できるケースが多いでしょう。
無塩バターは塩による防腐効果が期待できないため、鮮度が落ちるのが比較的早いです。特に一度開封した後は、空気中の雑菌や臭いを吸着しやすいため、早めに使い切ることが推奨されます。
パン作りに無塩バターが使われる理由

本格的なパンのレシピを見ると、そのほとんどが「無塩バター」を指定しています。これには、パン作りの科学的なプロセスや、素材のバランスを調整するための重要な意味が隠されています。
発酵の進み具合を正確にコントロールするため
パン作りにおいて最も重要な工程の一つが「発酵」です。イーストという微生物が糖分を分解してガスを出すことでパンが膨らみますが、実は塩にはイーストの活動を抑制する働きがあります。
もし、塩分量の決まっている有塩バターを使ってしまうと、生地全体の塩分濃度が上がり、発酵が遅くなってしまう可能性があります。無塩バターを使うことで、イーストの働きを邪魔せず、レシピ通りの時間で安定して膨らませることができるのです。
プロの職人が無塩バターを好むのは、季節や湿度によって左右されやすい発酵プロセスを、少しでも自分のコントロール下に置きたいという思いがあるからです。
小麦の香りとミルク感の相乗効果
パンの主役はあくまで小麦粉です。無塩バターは、小麦が持つ本来の甘みや香ばしさを最大限に引き立てる名脇役として機能します。塩気がないため、バターが持つミルクの濃厚なコクだけを生地に加えることができます。
特にリッチな配合のブリオッシュやデニッシュなどのパンでは、大量のバターを使用します。このときに有塩バターを使うと、塩味が強すぎてしまい、デリケートな小麦の香りがかき消されてしまうことがあります。
上品で優しい味わいのパンを焼き上げたいのであれば、無塩バターが生み出すクリーミーな質感と芳醇な香りが必要不可欠なのです。
正確な計量でレシピの再現性を高める
製パンの世界では、全ての材料を1g単位で正確に計量することが成功への近道です。レシピに書かれている「塩」の分量は、パンの味だけでなく、グルテン(生地の弾力)の形成を助ける役割も考慮して計算されています。
有塩バターを使ってしまうと、バターに含まれる塩分のせいで、レシピ全体の塩分バランスが崩れてしまいます。その結果、生地が硬くなりすぎたり、逆にコシがなくなったりと、焼き上がりに悪影響を及ぼすことがあるのです。
常に同じクオリティのパンを焼くためには、不確定要素を排除する必要があります。無塩バターを使い、塩は別途正確に計量することで、いつでも理想の味を再現できるようになります。
パン作りに無塩バターが選ばれる理由のまとめ
・イーストの活動(発酵)を妨げないため
・小麦本来の繊細な風味を活かすため
・生地の弾力や塩分濃度を正確に管理するため
有塩バターで代用する際の注意点と調整方法

「パンを作りたいけれど、家には有塩バターしかない」という場面も多いでしょう。結論から言えば、いくつかのポイントを抑えれば有塩バターで代用することは可能ですが、注意が必要です。
塩分の引き算を計算する方法
有塩バターで代用する場合、最も大切なのはレシピに含まれる「塩」の量を減らすことです。一般的な有塩バター100gには約1.5gの塩が含まれていると計算しましょう。例えば、レシピでバターを50g使うなら、約0.7gの塩が既にバターに入っていることになります。
そのため、レシピに記載されている塩の総量から、バターに含まれる分の塩を差し引いて投入します。ただし、家庭用の計量器では0.1g単位の微調整が難しいため、「少しだけ塩を減らす」という意識を持つだけでも仕上がりは変わります。
この計算を忘れてしまうと、焼き上がったパンが非常に塩辛くなってしまうだけでなく、生地の伸びが悪くなり、ふっくらと膨らまない原因にもなりかねません。
パンの食感や膨らみに与える影響
塩はグルテンというタンパク質の網目構造を引き締める性質を持っています。有塩バターを使うと、捏ねている最中から生地がキュッと締まった感覚になることがあります。これは塩分がダイレクトに小麦粉に作用しているためです。
適度な締まりは腰の強いパンを作りますが、過度になると生地が伸びにくくなり、結果としてボリュームの出にくいパンになってしまいます。また、塩分には保水性を高める効果もあるため、食感がわずかに変わることもあります。
代用して焼いたパンがいつもより硬いと感じる場合は、捏ね時間を少し長めにしたり、水分の量を微調整したりといった工夫が必要になることもあります。
有塩バターが向いているパンの種類
すべてのパンで無塩バターが必須というわけではありません。例えば、フォカッチャやエピ、あるいは塩パンといった、もともと塩気がしっかりと効いている惣菜系のパンであれば、有塩バターをそのまま使っても美味しく仕上がります。
これらのパンは、塩のパンチが味の決め手となるため、有塩バターが持つ力強い風味と塩分がプラスに働きます。特に表面にバターを塗って焼き上げるタイプのパンでは、有塩バターの塩気が食欲をそそる香ばしさを生みます。
逆に、食パンや菓子パン、クロワッサンのような繊細な風味を大切にするパンでは、できる限り無塩バターを用意することをおすすめします。
有塩バターを代用する際は、バターの配合量が多いレシピほど慎重になりましょう。クッキーやケーキなどの焼き菓子に比べて、パンは発酵という生き物のようなプロセスを経るため、塩分の影響をより強く受けやすいのです。
パンを食べるときに楽しむバターの選び方

パンを作る時とは逆に、焼き上がったパンに塗って食べる場合は、個人の好みが大きく反映されます。トーストやサンドイッチに使う際の、無塩・有塩の選び方のヒントをご紹介します。
王道のトーストを際立たせる有塩バター
こんがりと焼いた厚切りトーストに、じゅわっと溶け出すバター。この至福の瞬間を最大限に味わうなら、やはり有塩バターが王道です。パンの表面の香ばしさと、バターの塩気が合わさることで、噛むたびに旨味が広がります。
塩分が味の輪郭をはっきりさせるため、忙しい朝でも満足感の高い一杯を楽しむことができます。特にバターの含有量が高い高級食パンをトーストする場合、あえて有塩バターを塗ることで、パン自体の甘みがさらに強調されます。
もしお気に入りの塩があるなら、あえて無塩バターを塗り、その上から美味しい岩塩やゲランドの塩をパラリと振りかけるという、こだわり派の楽しみ方も贅沢で素敵です。
無塩バターと甘いジャムの絶妙なマリアージュ
トーストにジャムやハチミツ、あんこなどを乗せて食べる場合は、無塩バターの方が相性が良いことがあります。有塩バターだと塩気が強すぎて、甘いトッピングの繊細な風味を邪魔してしまうことがあるからです。
無塩バターを使うと、ジャムのフルーツ感やハチミツの華やかな香りをそのまま活かしつつ、乳脂肪分によるリッチなコクだけをプラスすることができます。まるでホイップクリームを添えたような、上品なデザート風トーストが完成します。
甘いものが好きな方は、一度無塩バターで試してみてください。バター特有の「重さ」を感じにくく、素材の組み合わせの妙をより深く味わうことができるはずです。
パンのタイプ別おすすめの組み合わせ
ハード系のパンであるバゲットやカンパーニュには、しっかりとした塩気のある有塩バターがよく合います。小麦の味が濃いパンには、それに負けない強さを持つバターを合わせることで、噛みしめるほどに美味しさが溢れ出します。
一方で、ミルクパンやロールパンといった、もともと柔らかくて甘みのあるパンには、無塩バターを合わせるのがおすすめです。パンの持つ優しいミルクの風味を損なわず、なめらかな口当たりを楽しむことができます。
| パンの種類 | おすすめのバター | 味わいの特徴 |
|---|---|---|
| 食パン(トースト) | 有塩バター | 塩気と甘みのコントラストが最高 |
| バゲット | 有塩バター | 小麦の旨味を引き立てる力強い味 |
| 菓子パン | 無塩バター | 素材の甘さを邪魔せずコクをプラス |
| サンドイッチ | 無塩バター | 具材の塩分とのバランスが取りやすい |
よりパンを美味しくする特別なバターの種類

無塩か有塩かという選択肢のほかに、バターには「発酵バター」や「グラスフェッドバター」といった、よりこだわりの強い種類も存在します。これらを知ることで、パンの世界はさらに広がります。
発酵バターがもたらす極上の香りとコク
発酵バターとは、原料となる生クリームに乳酸菌を加えて発酵させてから作るバターのことです。ヨーロッパではこのタイプが主流で、日本では「発酵バター」として特別に扱われることが多いです。
最大の特徴は、何といってもその華やかな香りです。普通のバターよりも酸味と芳醇なコクがあり、パンに塗るだけでワンランク上の味わいになります。無塩の発酵バターをパン生地に練り込むと、焼き上がった瞬間に部屋中に幸せな香りが立ち込めます。
発酵バターにも無塩と有塩がありますが、パン作りにはやはり無塩の発酵バターが推奨されます。プロが作るような本格的なクロワッサンやスコーンを目指すなら、ぜひ一度使ってみてほしい素材です。
健康志向の方に注目されるグラスフェッドバター
最近よく耳にする「グラスフェッドバター」は、牧草だけを食べて育った牛の乳から作られるバターです。一般的なバター(グレインフェッド)に比べて、黄色みが強く、さらっとした口当たりが特徴です。
不飽和脂肪酸やビタミンが豊富に含まれており、健康や美容を意識する方々の間で人気が高まっています。味わいは非常に軽やかで、後味がすっきりとしているため、重いバターが苦手な方でも美味しく食べられます。
無塩のグラスフェッドバターは、コーヒーに混ぜる「バターコーヒー」としても有名ですが、もちろんパンとの相性も抜群です。雑味のないクリーンな風味は、天然酵母を使ったこだわりのパンの味を優しく包み込んでくれます。
最後まで美味しく使うための保存のテクニック
せっかく美味しいバターを手に入れても、保存状態が悪いと風味が台無しになってしまいます。バターは周囲の臭いを吸い取りやすいため、冷蔵庫の中のキムチや納豆などの強い臭いから守らなければなりません。
購入時の銀紙で包んだままにするのではなく、密閉容器(バターケース)に移し替えるか、ラップで隙間なく包んでからジップ付きの袋に入れるのが理想的です。特に無塩バターは酸化しやすいため、空気に触れる面積を最小限にしましょう。
もし使いきれない場合は、使いやすい大きさにカットして、一つずつラップに包んで冷凍保存することも可能です。使うときは冷蔵庫でゆっくり解凍すれば、風味の劣化を最小限に抑えて最後まで楽しむことができます。
パン作りの基本となるバターの無塩・有塩の違いを理解しよう

バターの無塩と有塩には、単なる塩気の有無だけでなく、パンの膨らみや香りの立ち上がり、さらには保存期間に至るまで、様々な違いがあることが分かりました。
パン作りにおいては、イーストの働きを妨げず、小麦本来の美味しさを引き出すために「無塩バター」を使用するのが基本です。一方で、焼き上がったパンをトーストとして楽しむなら、塩気が甘みを引き立てる「有塩バター」が、私たちの舌をより満足させてくれます。
それぞれの役割を正しく知ることで、レシピ通りに作るだけでなく、自分の好みに合わせた微調整もできるようになります。もし有塩バターしか手元にない時でも、塩の量を引き算することで、賢く美味しくパンを焼くことができます。
パンとバターは、切っても切り離せない最高のパートナーです。この記事を参考に、用途に合わせた最適なバターを選んで、日々のパン作りや食事の時間をより豊かで美味しいものに変えていってください。バターひとつで、あなたのパン体験はもっと驚きに満ちたものになるはずです。



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