グラスフェッドバターとは?パン作りのレベルを上げる特徴と選び方

グラスフェッドバターとは?パン作りのレベルを上げる特徴と選び方
グラスフェッドバターとは?パン作りのレベルを上げる特徴と選び方
材料選び・代用・計算・保存

自宅でパンを焼くとき、「レシピ通りに作っているのに、なんとなくお店の味と違う」「バターの風味がもっと欲しいけれど、重たい感じにはしたくない」と感じたことはありませんか?そんなパン作りのお悩みを解決してくれるかもしれない食材として、今、パン愛好家の間で静かなブームとなっているのが「グラスフェッドバター」です。

スーパーのバター売り場や製菓材料店で、金色のパッケージや「牧草飼育」という文字を見かけたことがある方もいるかもしれません。普通のバターよりも少し高価なこのバター、実はパンの焼き上がりや風味を劇的に変える力を持っています。

この記事では、グラスフェッドバターが普通のバターとどう違うのか、なぜパン作りに適しているのか、そして選び方や保存方法まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

グラスフェッドバターの特徴と普通のバターとの違い

まずは、グラスフェッドバターが一体どのようなバターなのか、私たちが普段使っている一般的なバター(グレインフェッドバター)と何が違うのかを基本的な部分から見ていきましょう。

牧草を食べて育った牛のミルクで作られる

グラスフェッドバターの「グラス(Grass)」は牧草、「フェッド(Fed)」はエサを与えるという意味を持ちます。つまり、牧草だけを食べてのびのびと育った牛のミルク(生乳)から作られたバターのことを指します。これに対して、日本のスーパーでよく見かける一般的なバターは、トウモロコシなどの穀物(グレイン)を主なエサとして牛舎で育てられた牛のミルクから作られており、こちらは「グレインフェッドバター」と呼ばれます。

牛は本来、草を食べる動物です。自然に近い環境で放牧され、ストレスの少ない状態で育った牛から搾られるミルクは、雑味が少なく、野性味あふれるピュアな味わいになります。この飼育方法の違いが、バターの品質や風味に大きな影響を与えているのです。

鮮やかな黄色は自然の証

グラスフェッドバターのパッケージを開けると、まずその色に驚くかもしれません。一般的なバターが白っぽいクリーム色をしているのに対し、グラスフェッドバターは濃く鮮やかな黄色をしています。「着色料が入っているの?」と勘違いしてしまうほどですが、これは全くの天然色です。

この黄色の正体は、牛が食べている牧草に含まれる「カロテン(カロチン)」という色素です。カロテンは緑黄色野菜にも多く含まれる成分で、牧草をたっぷりと食べた牛のミルクにはこのカロテンが豊富に移ります。その結果、加工されたバターも美しい黄金色になるのです。季節によって牧草の状態が変わるため、夏場のバターはより濃い黄色に、冬場は少し淡い色になるといった、自然由来ならではの色の変化も見られます。

上品であっさりとしたコクのある味わい

味に関しては、非常に特徴的です。普通のバターのこってりとした脂肪分の主張に比べると、グラスフェッドバターは「あっさり」としています。口に入れた瞬間にスッと溶けるような軽やかさがあり、油っぽさが舌に残りません。しかし、ただ味が薄いわけではなく、ミルク本来の優しい甘みと、草の香りをほのかにまとったような上品な「コク」があります。

この「軽さ」と「コク」のバランスこそが、グラスフェッドバターの最大の魅力です。そのままトーストに塗って食べても重たくならず、いくらでも食べられてしまうような危険な美味しさを持っています。後味がクリアなので、素材の味を引き立てる能力にも長けています。

注目の栄養価:オメガ3脂肪酸が豊富

健康意識の高い人たちがグラスフェッドバターを選ぶ大きな理由の一つに、その栄養価の高さがあります。特に注目すべきは、「不飽和脂肪酸」のバランスの良さです。グラスフェッドバターには、青魚や亜麻仁油などに含まれる「オメガ3脂肪酸」が、一般的なバターよりも豊富に含まれています。

不飽和脂肪酸とは?
常温で固まりにくい性質を持つ脂質で、体内では作ることができない必須脂肪酸などが含まれます。血液をサラサラにしたり、炎症を抑えたりする働きが期待されています。

一般的なバターは飽和脂肪酸が多く含まれていますが、グラスフェッドバターは不飽和脂肪酸の比率が高いため、体への負担が少ない良質な脂質として認識されています。この栄養面の違いも、通常のバターとは一線を画すポイントです。

パン作りにグラスフェッドバターを使うメリット

では、パン作りにおいてグラスフェッドバターを使うと、具体的にどのような変化が生まれるのでしょうか。焼き上がりの違いや作業性について詳しく解説します。

小麦の香りを邪魔せず引き立てる

パン作りにおいてバターは風味付けの重要な役割を果たしますが、時にバターの香りが強すぎて、せっかくの小麦の香りを隠してしまうことがあります。しかし、グラスフェッドバターは香りが非常に上品でクリアです。独特の乳臭さが少ないため、小麦本来の香ばしさや甘みを邪魔することなく、むしろ下支えして引き立ててくれます。

バゲットやカンパーニュのようなシンプルなパンに少量加えるだけでも、粉の風味が際立ち、お店で売っているような洗練された味わいに仕上がります。副材料の味もクリアに感じられるため、ドライフルーツやナッツを入れたパンとも相性が抜群です。

口どけが良く、しっとりなのに軽い食感

グラスフェッドバターに含まれる不飽和脂肪酸は、融点(溶け出す温度)が低いという特徴があります。そのため、焼き上がったパンのクラム(中身)はしっとりとしていながら、口の中でスッと溶けるような軽さを持ちます。ブリオッシュのようにバターを多量に使うリッチなパンを作っても、油っぽくギトギトした食感になりにくいのが大きなメリットです。

食べた後に口の中に膜が張るような脂っこさがなく、何個でも食べられそうな軽やかな食感に仕上がるため、朝食用の食パンやバターロールなど、毎日食べるパンには特におすすめです。

クロワッサンやパイの層がサクサクに

クロワッサンやデニッシュ、パイなど、層を作るパン作りにおいて、バターの質は死活問題です。グラスフェッドバターを使用すると、焼き上がりの層が非常に軽く、パリッとしたサクサクの食感になります。これは水分量が適切で、かつ脂質のキレが良いことに起因します。

ただし、融点が低く溶けやすいという性質は、作業をする上では注意が必要です。手早く作業しないと生地の中でバターが溶け出してしまい、層がきれいに浮かない原因になります。夏場の作業や手の温かい方は、普段よりも生地やバターをしっかりと冷やしながら作業を進めることで、驚くほど軽くてクリスピーなクロワッサンを焼くことができます。

冷めても美味しいパンになる

焼きたてのパンが美味しいのは当たり前ですが、時間が経って冷めたときにこそ、バターの違いが現れます。一般的なバターを使ったパンは、冷めると油脂が固まって食感が重くなったり、独特の酸化臭が気になったりすることがあります。

一方、グラスフェッドバターを使ったパンは、冷めても生地が硬くなりにくく、ソフトな食感が長続きします。また、酸化しにくい性質を持っているため、時間が経っても油の劣化臭が出にくく、翌日でも美味しく食べることができます。サンドイッチやお弁当用のパンを作る際にも、この「冷めても美味しい」という特長は大きな強みとなります。

健康やダイエットで注目される理由

パン作りを楽しむ方の中には、カロリーや健康面を気にされている方も多いでしょう。グラスフェッドバターは「ダイエットに良いバター」としても知られています。その理由を深掘りします。

脂肪燃焼を助ける「共役リノール酸」

グラスフェッドバターには、「共役リノール酸(CLA)」という成分が豊富に含まれています。この成分は、体脂肪の燃焼を促進し、脂肪を溜め込みにくくする働きがあるという研究結果があり、ダイエットサプリメントの成分としても利用されています。

もちろんバター自体は脂質でありカロリーも高い食品ですが、その中に「太りにくい要素」や「代謝を助ける要素」が含まれていることは大きなポイントです。罪悪感を少し減らしつつ、美味しいパンを楽しむための選択肢として、グラスフェッドバターは非常に優秀です。

話題の「バターコーヒー」にも最適

「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」という本で紹介され、世界的にブームとなった「バターコーヒー(完全無欠コーヒー)」をご存知でしょうか。これは、コーヒーにグラスフェッドバターとMCTオイル(中鎖脂肪酸)を入れて撹拌した飲み物です。

このバターコーヒーには、必ず「グラスフェッドバター」を使うことが推奨されています。それは、穀物飼育のバターに含まれる可能性のある炎症性物質を避け、良質な脂質を摂取して脳のパフォーマンスを上げることが目的だからです。パンのお供にこのバターコーヒーを合わせることで、朝食の栄養バランスと満足度をさらに高めることができます。

添加物やホルモン剤のリスクが低い

健康志向の人々がグラスフェッドバターを選ぶもう一つの理由は「安全性」です。牧草飼育を行う農家の多くは、牛の健康管理に細心の注意を払っており、成長ホルモン剤や過剰な抗生物質の使用を避ける傾向にあります(※商品によりますが、ニュージーランド産などは国全体で規制が厳しいです)。

毎日口にするもの、そして家族に食べさせるパンだからこそ、できるだけ自然に近い環境で作られた、安全性の高い材料を選びたいと考える方にとって、グラスフェッドバターは安心できる選択肢と言えるでしょう。

購入時の選び方と代表的な産地

いざグラスフェッドバターを買ってみようと思っても、どれを選べばいいのか迷ってしまうかもしれません。ここでは、代表的な産地や種類ごとの選び方をご紹介します。

コストパフォーマンス最強の「ニュージーランド産」

日本国内で最も手に入りやすく、価格も比較的リーズナブルなのがニュージーランド産のグラスフェッドバターです。ニュージーランドは国策として放牧酪農を推進しており、牛たちは広大な土地で一年中牧草を食べて育っています。

代表的なブランドに「Westgold(ウエストゴールド)」や「Anchor(アンカー)」があります。これらは成城石井やカルディ、最近では一部の大型スーパーや業務スーパーでも見かけるようになりました。クセが少なく、パン作りにも料理にも使いやすい万能タイプです。初めてグラスフェッドバターを試すなら、まずはニュージーランド産から始めてみるのがおすすめです。

風味豊かな「フランス産・ヨーロッパ産」

より強い風味や個性を求めるなら、フランス産などのヨーロッパ産がおすすめです。特にフランス産には「発酵バター」のグラスフェッドタイプが多く存在します。発酵バター特有のヨーグルトのような酸味と、牧草由来の香りが合わさり、非常に芳醇な香りが楽しめます。

「グランフェルマージュ」などのブランドが有名ですが、価格はニュージーランド産に比べて高価になる傾向があります。特別な日のクロワッサン作りや、焼き上がったパンにそのまま塗って贅沢に味わいたいときに適しています。

希少価値の高い「国産(日本産)」

日本にも、完全放牧で牛を育てている牧場は存在しますが、その数は極めて少数です。「なかほら牧場」などが有名ですが、国土の狭い日本では広大な牧草地を確保するのが難しく、生産コストがかかるため、価格は輸入品の数倍になることも珍しくありません。

しかし、鮮度は抜群で、日本の風土で育った牛のミルクは日本人の味覚に合いやすいとも言われます。特別なギフトや、究極の国産素材でパンを焼きたいというこだわり派の方におすすめです。

パン作りには「無塩」か「有塩」か

パン作りのレシピでは基本的に「無塩バター(食塩不使用)」が指定されることがほとんどです。これは、パン生地に含まれる塩分量を正確にコントロールするためです。グラスフェッドバターにも「有塩」と「無塩」の両方がありますので、パン生地に練り込む用途であれば、必ず「無塩(Unsalted)」を選びましょう。

一方で、焼き上がったトーストに塗る場合や、塩パン(塩バターロール)の芯にするバターとして使う場合は、「有塩」タイプを使うことで、グラスフェッドバター特有のミルクの甘みが塩気によって引き立ち、絶品の味わいになります。用途に合わせて使い分けるのがポイントです。

美味しさを保つ保存方法と使い方のコツ

グラスフェッドバターは、一般的なバターよりも酸化しやすく、溶けやすいデリケートな食材です。最後まで美味しく使い切るための保存テクニックと使い方のコツをお伝えします。

大きな塊は最初にカットしておく

グラスフェッドバターは、業務用として1kgや450g(1ポンド)といった大きなブロックで販売されていることが多いです。これを使うたびに冷蔵庫から出し入れしていると、温度変化で劣化が進んでしまいますし、硬い塊を切るのは重労働です。

購入したら、まずは少し常温に戻して包丁が入るくらいの硬さにし、1回で使いやすいサイズ(10gや150gなど)に切り分けておきましょう。パン作りでよく使う分量に合わせてカットしておくと、計量の手間が省けて非常に便利です。

酸化を防ぐ「アルミホイル」保存

バターの最大の敵は「酸化」です。光や空気に触れると、表面が黄色く変色し(元々黄色いですが、さらに濃く変色します)、嫌な油の臭いが出てしまいます。これを防ぐために重要なのが遮光と密閉です。

おすすめの保存手順

1. カットしたバターを1つずつラップでぴっちりと包む(空気を抜く)。

2. その上からさらにアルミホイルで包む(遮光のため)。

3. ジッパー付きの保存袋に入れて、空気を抜いて閉じる。

この「ラップ+アルミホイル」の二重装備が最強です。すぐに使う分は冷蔵庫へ、長期保存する分は冷凍庫へ入れましょう。冷凍すれば数ヶ月は風味を損なわずに保存可能です。

パン作りで使う際の温度管理

前述の通り、グラスフェッドバターは融点が低く、手の体温でもすぐに溶け出します。パン生地に練り込む際、バターが溶けすぎて液体状になってしまうと、生地のグルテン構造を壊してしまい、パンが膨らみにくくなったり、ベタついた仕上がりになったりします。

夏場のパン作りでは、バターを直前まで冷蔵庫で冷やしておき、細かく刻んでから生地に投入するのがコツです。また、ホームベーカリーを使う場合も、バターは凍ったまま、あるいは冷蔵庫から出したてのものを使うと、こね上がりの生地温度の上昇を防ぐことができ、キメの細かい美味しいパンが焼けます。

トーストには「追いバター」が至福

保存の話とは少し逸れますが、グラスフェッドバターの風味を最もダイレクトに楽しむなら、やはりトーストです。おすすめは、焼く前にパンにバターを乗せて焼くのではなく、焼き上がった熱々のトーストに乗せるスタイルです。

さらに贅沢を楽しむなら、半分溶けたところを食べ、最後の一口の直前にさらに冷たいバターをひとかけら乗せる「追いバター」を試してみてください。温まって香りが立ったバターと、ひんやりとしてミルク感が強いバターのコントラストは、パン好きにはたまらない至福の体験となるはずです。

まとめ:グラスフェッドバターを取り入れてパン作りをもっと楽しく

グラスフェッドバターは、単に「高いバター」というだけではなく、牧草由来の栄養価の高さ、軽やかで上品な風味、そしてパンの食感を向上させる機能性を持った、非常に魅力的な食材です。

いつものパン作りで使うバターをグラスフェッドバター(無塩)に変えるだけで、小麦の香りが引き立ち、翌日までしっとりと美味しい、ワンランク上のパンが焼き上がります。特にシンプルな食パンやバゲット、そして層を楽しむクロワッサンなどでは、その違いをはっきりと感じることができるでしょう。

まずは手に入りやすいニュージーランド産のものから試してみて、その美しい黄金色と、口の中でスッと消える優しい口どけを体感してみてください。きっと、あなたのパン作りライフがより健康的で、美味しいものになるはずです。

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