バゲットとフランスパンの違いとは?種類や特徴をパン作り目線で解説

バゲットとフランスパンの違いとは?種類や特徴をパン作り目線で解説
バゲットとフランスパンの違いとは?種類や特徴をパン作り目線で解説
レシピ・種類・自家製酵母

「自宅でフランスパンを焼いてみたい!」と思い立ち、レシピを検索してみると、「バゲット」や「バタール」といった言葉が次々と出てきて戸惑ったことはありませんか?見た目はどれも美味しそうなハード系のパンですが、実はそれぞれに明確な定義や特徴の違いがあります。

この記事では、パン作り初心者の方にも分かりやすく、バゲットとフランスパンの根本的な違いから、それぞれの種類の焼き分け方、そしてパン作りにおける難易度の差までを詳しく解説していきます。違いを知れば、あなたの作りたいパンがもっと明確になるはずです。

「フランスパン」は総称、「バゲット」はその一種

まず最初に、一番の疑問である「フランスパンとバゲットの違い」について結論からお伝えします。一言で言えば、この二つは対立する言葉ではなく、「大きなグループ」と「その中のメンバー」という関係にあります。

フランスパン(パン・トラディショネル)の定義

日本で私たちが普段「フランスパン」と呼んでいるものは、フランス本国では「パン・トラディショネル(Pain Traditionnel)」と呼ばれる、伝統的な食事パンの総称です。特定のパンを指す名前ではなく、「ジャンル」だと考えてください。

このパン・トラディショネルには、厳格な定義があります。それは、「小麦粉、水、塩、イースト(酵母)」の4つの材料のみで作られていることです。砂糖、油脂(バターやマーガリン)、乳製品、卵などは一切入りません。非常にシンプルな材料で作られるため、小麦本来の風味や香ばしさがダイレクトに味わえるのが特徴です。

パン作りをする人にとって、この「副材料が入らない」という点は非常に重要です。ごまかしが効かないため、発酵の見極めや成形の技術がそのまま味や見た目に現れる、奥が深くやりがいのあるパンだと言えるでしょう。

バゲットという名前の由来と意味

では、「バゲット(Baguette)」とは何でしょうか。これはフランスパンという大きなグループの中に存在する、具体的なパンの名前です。フランス語で「杖」や「棒」を意味する単語が由来となっています。

その名の通り、細長い棒状の形が最大の特徴です。一般的には長さが約70〜80cm、重さが300〜400g前後のものを指します。細長く成形することで焼く際の表面積が広くなり、バリバリとした香ばしい皮(クラスト)の部分を多く楽しめるのが魅力です。

フランスのパン屋さん(ブーランジェリー)では、バゲットは最も基本的な商品であり、その店の顔とも言える存在です。もしあなたが「皮のパリパリ感を存分に楽しみたい」と考えているなら、選ぶべき形は間違いなくバゲットです。

なぜ日本では「フランスパン」と呼ぶのか

日本で「フランスパン」という呼び方が定着した背景には、歴史的な事情があります。日本に初めて本格的なハード系のパンが伝わった際、細かい種類の違いよりも「フランス風の硬いパン」という大まかな特徴が先に広まりました。

日本では、明治時代から昭和にかけて徐々に普及しましたが、本格的に広まったのは1960年代と言われています。当時、フランスからパン職人が来日し、本場の製法を伝えたことで、日本人の生活にも「フランスパン」が浸透していきました。

現在では、日本のパン屋さんでも本場にならって「バゲット」「バタール」と呼び分けるのが一般的になりましたが、家庭ではまだ総称としての「フランスパン」という言葉が親しまれています。レシピ本などでも、初心者に分かりやすく「フランスパン生地」として紹介されることが多いのはそのためです。

【一覧表あり】バゲット以外の代表的なフランスパンの種類

フランスパンの世界は奥深く、バゲット以外にもたくさんの種類が存在します。これらは基本的に「同じ生地」を使っていますが、成形する形や重さが異なるだけで、食感や味わいがガラリと変わります。ここでは、パン作りでもよく登場する代表的な種類をご紹介します。

バタール(Bâtard):中身を味わう太めのパン

バゲットと並んで日本で非常に人気があるのが「バタール」です。フランス語で「中間」や「混血」という意味を持ちます。長さは約40〜50cmとバゲットより短く、その分太さがあるのが特徴です。

太く成形するため、焼き上げたときに中身(クラム)の割合が多くなります。皮のパリパリ感よりも、中のもっちりとした柔らかい食感を楽しみたい方に適しています。日本の家庭にあるオーブンはサイズが限られていることが多いため、70cm以上あるバゲットよりも、短めのバタールの方が家庭で焼きやすいというメリットもあります。

パリジャン(Parisien):パリっ子が愛する大型パン

「パリジャン」は、その名の通り「パリっ子」という意味を持つ大型のフランスパンです。長さは50〜70cmほどでバゲットに近いですが、太さがバゲットよりも一回り太く、重量も500g前後とずっしりしています。

バゲットの香ばしさと、バタールのもっちり感の両方を兼ね備えたようなパンですが、サイズが大きいため、家庭用の電気オーブンで焼くには少々ハードルが高いかもしれません。もし焼くことができれば、サンドイッチなどに最適で、ボリューム満点の食事パンになります。

ブール(Boule):丸い形の素朴なパン

「ブール」はフランス語で「ボール(球)」を意味します。その名の通り、丸い形をしたフランスパンです。フランス語でパン職人のことを「ブーランジェ(Boulanger)」と呼びますが、これは「ブールを焼く人」という言葉が語源になっています。

丸く成形するため、火の通りが棒状のパンよりも穏やかになり、中身が非常にふっくらと焼き上がります。クラムのしっとりした食感を最も長く保てる形でもあります。成形が比較的シンプルなので、細長く伸ばすのが苦手な初心者の方にもおすすめの形です。

フィセル(Ficelle):おつまみに最適な極細パン

「フィセル」は「紐(ひも)」という意味です。バゲットよりもさらに細く、重量も120〜150g程度と軽いのが特徴です。かなり細長いため、中身(クラム)はほとんどなく、全体がカリカリの皮(クラスト)で構成されているような食感になります。

食事のメインというよりは、お酒のおつまみやスナック感覚で食べるのに向いています。パン作りにおいては、細く長く伸ばす技術が必要になるため、バゲット以上に成形の難易度は高めと言えるでしょう。

その他のユニークな形のフランスパン

エピ(Épi):「麦の穂」の形。ハサミで切り込みを入れて左右に開いて作ります。ベーコンを入れた「ベーコンエピ」が有名です。

シャンピニオン(Champignon):「キノコ」の形。丸い生地の上に薄い生地を乗せて焼きます。上の笠の部分がカリッとして美味しいです。

クッペ(Coupé):「切られた」という意味。ラグビーボールのような形に一本の切れ込み(クープ)が入った小型のパンです。

見た目でわかる!長さ・クープ(切れ込み)の数の違い

フランスパンの種類を見分ける際、または自分で作るときに意識すべきなのが「長さ」と「クープ(切れ込み)の数」です。これらには実は伝統的なルールや、美味しさに関わる科学的な理由が存在します。

種類の決め手は「重さ」と「長さ」のバランス

フランスではかつて、パンの価格を重さで統制していた歴史があり、その名残で種類ごとの重量や長さが厳密に区別されていました。現代でもその目安は生きています。

種類 長さの目安 重量の目安 特徴
バゲット 約70〜80cm 300〜400g 細長い、皮を楽しむ
バタール 約40〜50cm 300〜400g 太く短い、中身を楽しむ
パリジャン 約50〜70cm 500g前後 大型、バランスが良い
フィセル 約30cm前後 120〜150g 極細、スナック感覚

パン作りをする際は、この「生地量」と「長さ」のバランスを意識することが成功への近道です。例えば、バタール用の太さで成形したのに無理やり長く伸ばそうとすると、生地が傷んでしまい、良い食感が生まれません。自分が作りたい種類の適正なサイズを知っておくことが大切です。

クープ(切れ込み)の数には決まりがあるの?

フランスパンの表面にある切れ込み「クープ」には、見た目の美しさだけでなく、生地がオーブンの中で膨らむ際の「逃げ道」を作るという重要な役割があります。このクープの本数にも、種類ごとの伝統的な目安があります。

一般的に、バゲットは「7本(または奇数)」、バタールは「3本」、パリジャンは「5本」入れるのが基本とされています。特に奇数にするのは、焼きあがった際のデザインのバランスが良いからだと言われています。

ただし、これは絶対のルールではありません。日本の家庭用オーブンで焼く短いバゲット(約30〜40cm程度)を作る場合、無理に7本入れる必要はなく、3本〜5本程度でも十分に美しく仕上がります。大切なのは「均等な間隔」と「適切な深さ」で入れることです。

クラスト(皮)とクラム(中身)の比率で選ぶ

種類による最大の違いは、食べたときの「皮と中身の比率」です。これはパン作りにおいて、どのような温度や時間で焼くかを決める指針にもなります。

細長いバゲットは、表面積が広いため火通りが良く、短時間で水分を飛ばしてパリッと焼き上げます。一方、太いバタールや丸いブールは、中心まで火を通すのに時間がかかるため、バゲットよりもやや低めの温度でじっくり焼くこともあります。

「今日はカリカリの皮を噛み締めたい」と思えばバゲットの成形を、「もちもちの食感を味わいたい」と思えばバタールやブールの成形を選ぶ。このように、その日の気分や合わせる料理によって作り分けることができるのが、フランスパン作りの醍醐味です。

パン作り初心者にはどっちがおすすめ?難易度の比較

これから自宅でフランスパン作りに挑戦したいと考えている方にとって、どの種類から始めるかは悩みどころです。実は、同じ生地を使っていても、成形する形によって難易度は大きく異なります。

バタールは成形しやすく初心者向け

初めてフランスパンに挑戦するなら、断然「バタール」がおすすめです。理由は大きく分けて3つあります。

1つ目は「成形のしやすさ」です。バタールは太くて短いため、生地を細長く伸ばす技術があまり必要ありません。生地を傷めずに形を整えやすいのです。
2つ目は「クープの入れやすさ」です。クープの本数が3本程度と少なく、ナイフを入れる距離も短いため、失敗が少なくなります。
3つ目は「家庭用オーブンへの入りやすさ」です。一般的な家庭用オーブンの天板サイズに無理なく収まるため、端が曲がったり焦げたりする心配がありません。

まずはバタールで「生地の扱い」や「クープが開く感覚」を掴むことから始めると、挫折せずにパン作りを楽しめるでしょう。

バゲットは伸す技術が必要で上級者向け

一方、バゲットはパン作りの中でも難易度が高いパンの一つと言われています。美しいバゲットを作るには、熟練の技術が必要です。

バゲットの難しさは、「生地のガスを適度に残しながら、均一な太さで長く伸ばす」という点にあります。力が強すぎるとガスが抜けてペちゃんこになり、力が弱すぎると伸びません。また、長く伸ばした生地を天板に移す際にも、形が崩れないよう細心の注意が必要です。

さらに、7本のクープを均等に、かつ適切な角度で入れるのも至難の業です。しかし、だからこそきれいに焼き上がったときの喜びはひとしおです。バタールで基礎を身につけた後の、次のステップとして挑戦することをおすすめします。

同じ生地でも焼き上がりの食感が変わる理由

「バゲット」と「バタール」を同じ配合の生地で作っても、全く違うパンのように感じるのはなぜでしょうか。これは「火の通り方」と「水分の抜け方」の違いによるものです。

パン作りの科学メモ
細いバゲットは焼成中に生地内部の水分が蒸発しやすく、気泡の膜が薄く硬化します。これが「パリッ」とした食感を生みます。一方、太いバタールは中心部の水分が残りやすいため、デンプンが糊化(α化)してもっちりとした粘り気のある食感が生まれます。

自分で作る際は、この特徴を理解しておくと、「もう少しクラストを厚くしたいから焼成時間を延ばそう」とか、「もっと中身をしっとりさせたいから温度を調整しよう」といった工夫ができるようになります。

料理に合わせるならどっち?おすすめの食べ方

最後に、食べる側の視点から、バゲットとフランスパン(特にバタール)の使い分けについてご紹介します。せっかく焼いたパンですから、その特徴が最も活きる食べ方で楽しみましょう。

バゲットは「皮」を楽しむ料理に合わせる

バゲットの魅力は、なんといっても香ばしい皮(クラスト)です。この特徴を活かすには、以下のような食べ方がおすすめです。

・シンプルなサンドイッチ(カスクート):
ハムとバター、またはカマンベールチーズだけを挟んだシンプルなサンドイッチ。具材をシンプルにすることで、噛み締めるほどに広がる小麦の甘みと皮の旨味を味わえます。

・ブルスケッタやカナッペ:
薄くスライスしてトーストし、トマトやレバーペーストなどを乗せます。カリカリの食感が具材の水分を受け止め、絶妙なバランスになります。

・アヒージョやスープの付け合わせ:
気泡が多く軽い食感のバゲットは、オイルやスープをよく吸います。食事のサイドメニューとして添えるのに最適です。

バタールは「中身」を味わう料理やフレンチトーストに

バタールの魅力は、もちもちとした中身(クラム)の柔らかさです。この特徴を活かすには、次のような食べ方が向いています。

・食事の主食として:
シチューや肉料理のソースをぬぐって食べるスタイルにぴったりです。中身が柔らかいので、ソースをたっぷりと絡め取ることができます。

・フレンチトースト:
卵液をたっぷり染み込ませるフレンチトーストには、断然バタールがおすすめです。中身の面積が広いため、ジューシーでふわふわの仕上がりになります。バゲットで作るよりもしっとりとした贅沢な食感が楽しめます。

・厚切りのトースト:
厚めにスライスしてトーストし、たっぷりのバターを塗って食べる。これだけでご馳走になるのがバタールの底力です。

硬くなってしまったフランスパンの活用法

フランスパンは油脂や砂糖が入っていないため、時間が経つとすぐに硬くなってしまいます。もし自家製パンが余ってカチカチになってしまっても、捨てる必要はありません。

硬くなったパンは「ラスク」にするのが定番ですが、おすすめは「パングラタン(パネード)」です。オニオングラタンスープのようにスープに浸してチーズをかけて焼いたり、砕いてサラダのクルトンとして使ったりすることで、硬さが逆に良いアクセントになります。

まとめ:バゲットとフランスパンの違いを知ってパン作りを楽しもう

今回は、「バゲットとフランスパンの違い」について、定義や種類の詳細、そしてパン作りにおけるポイントを解説しました。

要点を振り返りましょう。

  • フランスパンは「総称」、バゲットは「種類」:フランスパン(パン・トラディショネル)というグループの中に、バゲットやバタールが存在します。
  • 形とサイズで名前が変わる:細長いのが「バゲット」、太くて短いのが「バタール」、丸いのが「ブール」など、同じ生地でも成形によって名前と食感が変わります。
  • 初心者はバタールから:成形がしやすく家庭用オーブンに入りやすいバタールが、パン作りデビューには最適です。
  • 食べ分けのコツ:皮のパリパリが好きならバゲット、中身のもっちり感が好きならバタールを選びましょう。

「今日はシチューだから、中身の多いバタールを焼こう」「週末のワインのお供に、細めのバゲットを焼いてみよう」。このように、違いを知ることで、作るパンを選ぶ楽しさが倍増します。ぜひ、それぞれの特徴を活かして、あなただけの美味しいフランスパンを焼いてみてください。

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