「ホームベーカリーを買ったけれど、食パン以外も焼いてみたい」
「手ごねパンに挑戦したいけれど、こねる作業が大変そうで手が出せない」
そんなふうに思っている方は意外と多いのではないでしょうか。実は、ホームベーカリーはただ食パンを全自動で焼くだけの機械ではありません。面倒な「こね」の作業だけを任せて、あとは自分で成形してオーブンで焼くという使い方ができるのです。
この記事では、ホームベーカリーの「こねるだけ」の機能を活用して、まるでパン屋さんのような本格的なパンを作る方法を詳しくご紹介します。バターロールや菓子パン、ピザ生地など、レパートリーが一気に広がりますよ。機械の便利さと手作りの楽しさをいいとこ取りして、ワンランク上のパン作りを始めてみましょう。
ホームベーカリーを「こねるだけ」で使うメリットとは?

ホームベーカリーを持っている方の多くは、材料を入れてスイッチを押すだけの「全自動食パン」を作ることからスタートします。もちろん、焼きたての食パンは美味しいものです。しかし、しばらくすると「もっといろんな形のパンを作ってみたい」という欲が出てくるはずです。
そこで活躍するのが、生地作り(こね)だけを機械に任せる方法です。手ごねには手ごねの良さがありますが、ホームベーカリーを「相棒」として使うことには、初心者から上級者まで納得の大きなメリットがたくさんあります。まずは、その魅力について詳しく見ていきましょう。
手ごねのような重労働から解放される
パン作りの中で最も体力と時間を要するのが「こね」の工程です。美味しいパンを作るためには、グルテンという網目構造ができるまで、生地を叩いたり伸ばしたりする作業を15分から20分ほど続ける必要があります。これは慣れていない人にとってはかなりの重労働で、翌日に筋肉痛になることもあるほどです。
ホームベーカリーを使えば、この一番大変な作業をすべて代行してくれます。粉と水をセットしてスイッチを押すだけで、汗だくになることも腕が疲れることもありません。「パン作りは体力勝負」というイメージを覆し、もっと気軽に、優雅にパン作りを楽しめるようになります。体力に自信がない方や、高齢の方でも無理なく続けられるのが最大の魅力です。
均一な力でこねるから失敗が少ない
手ごねの場合、その日の体調や気候、あるいは技術レベルによって、どうしてもこね加減にムラが出てしまいます。「今日は疲れていて最後までこねきれなかった」「力が弱くてグルテンが十分にできなかった」といった理由で、パンが膨らまない失敗をすることは珍しくありません。特に初心者のうちは、正解の状態がわからず不安になることも多いでしょう。
一方、ホームベーカリーは機械ですので、常に一定のパワーとリズムで生地をこね続けてくれます。プロのパン職人がリズミカルにこねる動作をプログラムで再現しているため、いつでも安定した質の高い生地ができあがります。この「安定感」こそが、失敗せずに美味しいパンを作るための近道なのです。
こねている間に他の家事ができる
パン生地をこねている最中は、手が生地でベタベタになりますし、台の上から離れることができません。電話が鳴っても出られませんし、子供が泣いてもすぐには抱っこできないのが手ごねの辛いところです。しかし、ホームベーカリーに任せてしまえば、その時間は完全に自由になります。
生地が出来上がるまでの約1時間(発酵含む)の間、洗い物を済ませたり、洗濯物を畳んだり、あるいはお茶を飲んで休憩したりと、時間を有効に使えます。忙しい子育て中のママや、仕事で時間の限られている方にとって、この「ほったらかし」ができる時間は何ものにも代えがたいメリットと言えるでしょう。
夏場や冬場でも生地の温度管理がしやすい
パン作りにおいて、温度管理は非常に重要です。特に「こね上げ温度」と呼ばれる、こね終わった時点での生地の温度がパンの出来栄えを左右します。手ごねの場合、夏場は手の熱が生地に伝わって温度が上がりすぎたり、逆に冬場は室温が低すぎて生地が冷えてしまったりと、コントロールが難しいものです。
ホームベーカリーの中には、センサーで室温や庫内温度を検知し、こねる速さや時間を自動で調整してくれる賢い機種もあります。人間が感覚で行う微調整を機械がサポートしてくれるため、季節を問わず理想的な生地を作りやすくなります。パン作りにおいて最も難しい「温度管理」のハードルを下げてくれるのは、非常に頼もしいポイントです。
「こねるだけ」機能の種類と選び方

「こねるだけ」と言っても、実はホームベーカリーの機種によって機能の中身は少しずつ異なります。大きく分けると、「こねから一次発酵まで行うコース」と、「ひたすらこねるだけの機能」の2つがあります。
ご自身の持っている機種がどのタイプなのか、あるいはこれから購入するならどちらが良いのかを知っておくことは大切です。ここでは、それぞれの機能の特徴と使い分けについて解説します。
「パン生地コース」と「独立こね機能」の違い
多くのホームベーカリーに標準搭載されているのが「パン生地コース(またはドライイーストコース)」です。これは、材料を混ぜてこねた後、そのまま適切な温度で温めて「一次発酵」まで終わらせてくれる機能です。ブザーが鳴ったときには、生地はふっくらと膨らんでおり、すぐに成形(形作り)に入ることができます。基本的にはこのコースを使えば間違いありません。
一方で、一部の上位機種などには「独立こね」「マニュアル機能」と呼ばれるモードがあります。これは発酵を行わず、単に羽根を回転させて生地をこねるだけの機能です。「発酵は自分で温度管理して行いたい」という上級者や、「うどん」や「パスタ」の生地を作りたい場合に重宝します。初心者のうちは「パン生地コース」を使い、慣れてきたら「独立こね」でこだわりの生地を作る、という使い分けがおすすめです。
こねる速度や時間を調整できる機種の魅力
一般的なホームベーカリーは、こねる時間や速度がプログラムで固定されていますが、最近の機種にはこれらを自分で細かく設定できるものも増えています。「今日はハード系のパンだからゆっくり短めにこねたい」「リッチなブリオッシュだからしっかり高速でこねたい」といった具合に、作りたいパンに合わせてカスタマイズできるのが魅力です。
例えば、パナソニックの一部機種にある「マニュアルモード」などはその代表例です。自分で設定を変えることで、まるで自分の手のように機械を操ることができます。もしこれからホームベーカリーを購入するのであれば、こうした自由度の高い機能がついているかどうかもチェックポイントの一つにすると良いでしょう。
イースト自動投入機能の有無もチェック
パン作りを成功させるための重要な要素の一つに、「イーストと塩・水を直接触れさせない」というルールがあります。塩や水分と長時間触れていると、イーストの活動が弱まってしまうことがあるからです。手作業でセットする場合、土手を作ってイーストを入れるなどの工夫が必要ですが、ホームベーカリーには「イースト自動投入機能」がついているものがあります。
この機能があれば、こねる工程の最適なタイミングで、専用容器から自動的にイーストが投入されます。これにより、イーストが水に触れる時間を最小限にし、発酵力を最大限に引き出すことができます。「こねるだけ」のパン作りにおいても、この機能があると失敗のリスクがぐっと減りますので、機種選びや使い方の参考にしてください。
ホームベーカリーでこねてオーブンで焼く手順

それでは実際に、ホームベーカリーの「パン生地コース」を使ってパンを作る手順を見ていきましょう。ここでは、バターロールやあんパンなどを作るための基本的な流れをご紹介します。
機械に任せる部分と、自分の手で行う部分の切り替えがポイントです。全体の流れを把握しておけば、初めての方でもスムーズに作業を進められます。
材料の計量とパンケースへの投入順序
まずは正確な計量から始まります。パン作りは化学反応ですので、1gの誤差が仕上がりを大きく左右します。必ずデジタルスケールを使い、強力粉、砂糖、塩、スキムミルク、水、バター、ドライイーストをきっちり量りましょう。特に塩とイーストの量は重要ですので慎重に行ってください。
パンケースへの投入順序は、機種によって異なります。「水が先、粉が後」のメーカーもあれば、「粉が先、水が周り」のメーカーもあります。必ず取扱説明書に従ってください。一般的には、イーストは水に触れないように粉の山の上に窪みを作って入れるか、専用の投入口に入れます。バターについては、最初から入れる場合と、少しこねてから入れる場合がありますが、基本のコースでは最初から入れてしまっても問題なく美味しく作れます。
スイッチオンから生地完成までの流れ
材料をセットしたら、「パン生地コース」を選択してスタートボタンを押します。ここからは約1時間〜1時間半ほど、機械にお任せの時間です。最初は「ウィーン、ガタガタ」と断続的に羽根が回り始め、材料が混ざり合っていきます。徐々に回転が連続的になり、生地がまとまって叩きつけられるような音がしてきます。
こねが終わると、機械は停止し、静かに発酵の時間に入ります。ヒーターでほんのり温めながら、生地を膨らませてくれます。この間は蓋を開けないのが鉄則ですが、こねている最中であれば、側面についた粉をゴムベラで落としてあげるなどのサポートをしても構いません。ブザーが鳴ったら、一次発酵完了の合図です。
生地を取り出すタイミングと見極め方
ブザーが鳴ったらすぐに生地を取り出します。そのまま放置すると発酵が進みすぎてしまい、過発酵(酸っぱい匂いがしたり、膨らまなくなったりする状態)の原因になります。パンケースを逆さにして振ると生地が出てきますが、羽根が生地に埋まっていることがあるので注意してください。
取り出した生地の状態を確認しましょう。指に粉をつけて生地に差し込む「フィンガーテスト」を行い、穴が塞がらずに残っていれば発酵は成功です。この時点で生地は非常に柔らかくデリケートです。スケッパー(カード)を使って優しく扱い、台の上に取り出します。ここからは、ガス抜き、分割、ベンチタイム、成形、二次発酵、焼成という手作業の工程へと移っていきます。
メモ:生地がベタつく場合
取り出した生地がベタベタして扱いづらいときは、手粉(打ち粉)を少しだけ使いましょう。ただし、粉を使いすぎるとパンが固くなるので、必要最小限にするのがコツです。
生地を分割して休ませる(ベンチタイム)
台に出した生地を、作りたい個数に合わせて分割します。例えば8個分のバターロールなら、全体の重さを量り、8等分にします。このとき、手でちぎるのではなく、スケッパーでスパッと切るようにしましょう。ちぎると生地の繊維(グルテン)が傷んでしまいます。
切り分けた生地をきれいに丸め直し、乾燥しないように固く絞った濡れ布巾をかけて10分〜15分ほど休ませます。これを「ベンチタイム」と言います。この時間を取ることで、こねられて緊張していた生地が緩み、その後の成形がしやすくなります。このひと手間が、ふんわりとしたパンを作るための重要なポイントです。
成形から二次発酵、そして焼成へ
ベンチタイムが終わったら、いよいよ好きな形にする「成形」です。バターロールなら円錐形に伸ばして巻きますし、あんパンなら丸く広げてあんこを包みます。成形が終わったら、天板に並べてオーブンの発酵機能などを使い、一回り大きくなるまで「二次発酵」させます(35〜40℃で30〜40分程度)。
最後に、予熱しておいたオーブンで焼きます。表面に卵を塗る(ドリュール)と、艶やかで美味しそうな焼き色が付きます。オーブンから漂ってくる香ばしい香りは、パン作り最大の喜びです。焼き上がったら網の上で冷まし、粗熱を取りましょう。
こねる機能を使うときに美味しく作るコツ

ホームベーカリーは優秀な機械ですが、より美味しいパンを作るためには、人間側でちょっとした工夫をしてあげることが大切です。季節や環境に合わせて微調整を行うことで、パン屋さんに負けないクオリティを目指せます。
ここでは、プロも実践している「ホームベーカリー使いこなしのコツ」をいくつかご紹介します。少し意識するだけで、仕上がりが劇的に変わりますよ。
水の温度調整でイーストの働きを助ける
パン作りで最も影響を受けやすいのが「水温」です。ホームベーカリーのモーターは回転中に熱を持つため、生地の温度が上がりやすい傾向にあります。特に夏場は、室温も水温も高いため、こねている間に生地が温まりすぎて過発酵になりがちです。これを防ぐために、夏場は冷蔵庫で冷やした水(5℃前後)を使いましょう。
逆に冬場は、冷たい水を使うとイーストがなかなか活動せず、発酵不足になります。冬場は人肌程度(30℃前後)のぬるま湯を使うのが正解です。春や秋は常温の水で構いません。「夏は冷水、冬はぬるま湯」と覚えておくだけで、一年中安定した生地作りができます。
水温調整の目安
・夏(室温25℃以上):約5℃(氷水を使うのも有効)
・春・秋(室温20〜25℃):約15〜20℃(水道水そのまま)
・冬(室温10℃以下):約25〜30℃(ぬるま湯)
バターを入れるタイミングで食感が変わる
通常、ホームベーカリーの取扱説明書には「全ての材料を最初に入れる」と書かれています。これは手間を省くためですが、より本格的な食感を目指すなら「後入れ法」がおすすめです。最初はバター以外の材料だけでこね始め、5分〜10分ほど経って生地がある程度まとまってからバターを投入する方法です。
油脂はグルテンの形成を阻害する性質があるため、先にグルテンを作ってからバターを入れることで、より伸びやかで釜伸び(焼くときの膨らみ)の良い生地になります。また、バターの風味が飛びにくくなるというメリットもあります。少し手間はかかりますが、ぜひ一度試して、食感の違いを楽しんでみてください。
こね上げ温度を意識して過発酵を防ぐ
「こね上げ温度」とは、こねる工程が終わった直後の生地の温度のことです。一般的に、26℃〜28℃くらいがベストと言われています。これが30℃を超えてしまうと、生地がダレてしまい、焼き上がりのキメが粗くなったり、アルコール臭が強くなったりします。
こね終わったときに料理用温度計を生地に刺して測ってみてください。もし高すぎるようなら、次回は水をさらに冷たくしたり、粉を冷蔵庫で冷やしておいたりする工夫が必要です。ホームベーカリーの蓋を開けたままこねることで、モーターの熱を逃がすという裏技も有効です(ただし、粉が飛び散らないように注意が必要です)。
蓋を開けて生地の状態を確認してもいいの?
オーブンで焼いている最中に扉を開けるのは厳禁ですが、ホームベーカリーでこねている最中に蓋を開けるのは、実は「OK」です。むしろ、積極的に中を見て状態を確認することをおすすめします。「生地がベタついていないか」「粉っぽさが残っていないか」「ケースの隅に粉が溜まっていないか」などをチェックしましょう。
もし生地が硬そうなら水を小さじ1杯足す、ベタベタすぎるなら粉を少し足す、といった微調整ができるのも、手作りならではの良さです。また、こね終わりの頃に生地を少しちぎって指で薄く伸ばし、向こう側が透けて見える「膜(ウィンドウペイン)」ができているか確認すると、こね不足を防ぐことができます。
「こねるだけ」で作れるパンのバリエーション

ホームベーカリーの生地コースを使いこなせば、四角い食パン以外にも、実に様々なパンが作れるようになります。「こねるだけ」だからこそ楽しめる、おすすめのバリエーションをいくつかご紹介します。
アレンジの幅は無限大です。家族の好みに合わせたり、季節の食材を取り入れたりして、あなただけのオリジナルパンを作ってみてください。
成形が自由自在なバターロールや菓子パン
最も基本となるのが、バターロールや丸パンなどのテーブルロールです。シンプルだからこそ、毎日の食事に合わせやすく、飽きが来ません。生地を細長く伸ばして結べば可愛らしい結びパンになりますし、編み込めば見た目も華やかになります。
また、菓子パンへのアレンジも簡単です。あんこを包んであんパン、カスタードクリームを入れてクリームパン、クッキー生地を乗せてメロンパンなど、パン屋さんの定番メニューが自宅で再現できます。チョコチップやドライフルーツを混ぜ込むだけでも、立派なおやつパンになりますよ。
具材をたっぷり巻き込んだリッチな食パン
ホームベーカリーで最後まで焼くと、具材が細かくなりすぎたり、偏ったりすることがあります。しかし、生地作りだけを任せて自分で成形すれば、具材たっぷりの贅沢な食パンが作れます。
生地を麺棒で長方形に伸ばし、シナモンシュガーやジャム、チーズ、ベーコンなどを一面に広げてくるくると巻きます。それを型に入れてオーブンで焼けば、どこを切っても具が出てくる「渦巻き食パン」の完成です。また、3つの山がある「山型食パン(イギリスパン)」も、自分で成形して型に入れることで、パリッとした皮の食感が楽しめる本格的な仕上がりになります。
ピザ生地やナンなどパン以外の粉もの
ホームベーカリーが得意なのはパンだけではありません。ピザ生地も簡単に作れます。クリスピーな薄い生地も、ふっくらした厚い生地も思いのまま。こねた生地を伸ばして好きな具材を乗せれば、デリバリーよりも美味しくて安上がりなピザパーティーが楽しめます。
さらに、カレーに合わせる「ナン」や、中華まんの皮、フォカッチャ、ベーグルなども作れます。特にベーグルは、茹でてから焼くという特殊な工程がありますが、大変なこね作業さえ機械に任せれば、意外と簡単に挑戦できます。「粉もの」全般の下ごしらえマシーンとして、ホームベーカリーをフル活用しましょう。
まとめ:ホームベーカリーは「こねるだけ」でパン作りの幅が広がる

ホームベーカリーの「こねるだけ(パン生地コース)」機能を使うことで、手ごねの重労働から解放され、失敗なく安定して美味しいパン生地を作ることができます。体力や時間を節約しながら、成形や具材のアレンジといった「パン作りの一番楽しい部分」に集中できるのが最大の魅力です。
基本の食パン作りに慣れてきたら、ぜひ生地作りコースを活用して、バターロールや惣菜パン、ピザなど、新しいレシピに挑戦してみてください。水の温度やバターを入れるタイミングなど、少しのコツを意識するだけで、プロ顔負けのパンが自宅で焼けるようになります。ホームベーカリーを優秀な「パートナー」として使いこなし、豊かなパン作りライフを楽しんでくださいね。



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