パン作りにおいて、焼き上がりのふっくら感や食感を左右する非常に重要な工程、それが「二次発酵」です。一次発酵まではうまくいったのに、焼いてみたら思ったよりも膨らまなかったり、食感が硬くなってしまったりした経験はありませんか?
実はその原因、二次発酵のやり方にあるかもしれません。この工程は、成形した生地を休ませ、最後にガスを含ませて大きく育てるための大切な時間です。
この記事では、初心者の方でも失敗しない二次発酵の基本的なやり方から、オーブンがない場合の代用方法、そして見極めのポイントまでを丁寧に解説します。正しい知識を身につけて、お店のようなふわふわのパン作りを目指しましょう。
二次発酵のやり方と役割とは?基本を知ってパン作りを成功させよう

パン作りのレシピを見ると必ず登場する「二次発酵」という言葉ですが、具体的に何のために行っているのか、一次発酵とは何が違うのかを詳しく理解している方は意外と少ないかもしれません。まずは、この工程が持つ重要な役割と、成功させるための基本的な考え方について解説します。ここを理解することで、レシピの指示通りに動くだけでなく、生地の状態に合わせた柔軟な対応ができるようになります。
二次発酵が必要な理由
二次発酵を行う最大の理由は、パン生地の中に再び炭酸ガスを充満させ、焼いた時にふっくらとしたボリュームを出すためです。パン作りでは、一次発酵の後にガス抜きを行い、分割して成形するという工程が入ります。この「成形」の段階で、生地に含まれていたガスの多くは抜けてしまい、同時にグルテン(小麦のタンパク質)は引き締まって硬い状態になっています。
もし、このまま二次発酵を行わずに焼いてしまうとどうなるでしょうか。生地は伸びが悪く、硬く締まったままで、中のガスも少ないため、小さくてカチカチの石のようなパンになってしまいます。二次発酵の時間をしっかりとることで、引き締まったグルテンを再び緩め、イーストが新たなガスを発生させるための余裕を作ります。こうすることで、オーブンの熱が加わった瞬間に生地がグンと伸びて膨らむ「窯伸び」が起こり、私たちが大好きなふんわりとした食感が生まれるのです。
一次発酵との違い
「発酵」という作業は2回ありますが、一次発酵と二次発酵ではその目的が大きく異なります。一次発酵の主な目的は、生地そのものを熟成させ、パン特有の風味や香りを生み出すこと、そして生地の土台を作ることです。この段階では、まだ形を作る前の大きな塊の状態で行うことが一般的です。
一方、二次発酵は「成形発酵」や「ホイロ」とも呼ばれ、最終的なパンの形に整えられた状態で行われます。ここでの目的は、熟成というよりも「ボリュームを出すこと」と「生地を緩めること」に重点が置かれます。一次発酵は比較的長時間をかけてじっくり行うことが多いですが、二次発酵はそれに比べると短い時間で、少し高めの温度設定で行われることが多いのも特徴です。この違いを意識すると、それぞれの工程での生地の扱い方がより丁寧になります。
適切な温度と湿度の目安
二次発酵を成功させるための鍵となるのが、温度と湿度の管理です。一般的に、パン生地が最も活発に発酵する環境は以下の通りと言われています。
【二次発酵の適正環境】
・温度:30℃〜35℃(パンの種類により前後します)
・湿度:75%〜85%
イースト菌は30℃を超えると活動が非常に活発になりますが、40℃を超え始めると活動が弱まり、60℃以上で死滅してしまいます。そのため、温度が高ければ良いというわけではありません。特に冬場などは温度を上げようとしがちですが、高すぎる温度は生地の風味を損なったり、過発酵の原因になったりします。
また、湿度も非常に重要です。パン生地の表面が乾燥してしまうと、皮が張ったようになり、それ以上生地が膨らむのを邪魔してしまいます。乾燥した状態で焼くと、表面が割れたり、焼き上がりのツヤがなくなったりします。常に「温かくて湿り気のある場所」を用意してあげることが、二次発酵成功の第一歩です。
オーブンの発酵機能を使った基本的な二次発酵のやり方

家庭でパンを焼く場合、最も確実で手軽なのがオーブンレンジについている「発酵機能」を使う方法です。温度管理を機械に任せられるため、初心者の方でも安定した結果を出しやすくなります。ここでは、オーブン機能を使った具体的な手順と、気をつけるべきポイントについて詳しく見ていきましょう。
天板への並べ方と準備
成形が終わったパン生地を天板に並べる際、なんとなく置いていませんか?実はこの並べ方が、焼き上がりの形に大きく影響します。二次発酵を終えると、パン生地は元の大きさの1.5倍から2倍近くまで膨らみます。そのため、隣同士のパンがくっついてしまわないよう、十分な間隔を空けて配置する必要があります。
基本的には、パン1個分以上のスペースを空けて並べると安心です。くっついてしまうと、その部分だけ火の通りが悪くなったり、剥がす時に形が崩れてしまったりします(ちぎりパンのように意図的にくっつける場合は除きます)。また、天板には必ずオーブンシートを敷きましょう。発酵中に生地がダレて天板にくっつくのを防ぐことができます。
オーブンの設定と乾燥対策
生地を並べたら、オーブンに入れて発酵機能を設定します。レシピに「35℃で40分」などの指示があれば、その通りに設定しましょう。ただし、オーブンの発酵機能は温めるだけで、加湿機能(スチーム)がついていない機種も多くあります。スチーム機能がない場合、庫内は乾燥室のようにカラカラになってしまいます。
そこで必要なのが乾燥対策です。最も簡単な方法は、霧吹きを使って生地の表面にふんわりと水をかけることです。また、耐熱容器にお湯を入れたものを天板の隅や庫内の空いているスペースに一緒に置いておくのも効果的です。お湯から出る湯気が庫内の湿度を上げ、生地の乾燥を防いでくれます。もし「スチーム発酵」という機能がついている高機能オーブンであれば、ぜひその機能を活用してください。自動的に最適な湿度を保ってくれます。
発酵時間の目安と調整
レシピに記載されている時間はあくまで「目安」であり、絶対的な正解ではありません。その日の室温、こね上げ温度、イーストの元気の良さなどによって、発酵に必要な時間は変化します。例えば、冬場で室温が低い時に作業した場合、生地自体の温度が下がっていることが多く、レシピ通りの時間では発酵不足になることがあります。
基本的には、設定時間が近づいたら一度オーブンを開けて生地の様子を確認しましょう。まだ膨らみが足りないようであれば、5分〜10分単位で時間を延長します。逆に、夏場で室温が高い時は、予定時間よりも早く発酵が進むこともあります。常に「時間」ではなく「生地の状態」を見て判断する癖をつけることが大切です。
予熱を入れるタイミング
オーブンで二次発酵を行う際に、最も気をつけなければならないのが「予熱」の問題です。パンを焼くためには、発酵後にオーブンを高温(180℃〜200℃以上)に予熱する必要があります。しかし、家庭用のオーブンは1台しかないことがほとんどなので、発酵に使っているその場所で予熱をしなければなりません。
予熱には通常10分〜20分程度の時間がかかります。つまり、二次発酵が完了してから生地を取り出すのではなく、完了する少し前に取り出して、予熱を開始する必要があります。
具体的な手順としては、発酵完了予定時刻の15分〜20分ほど前に一度生地をオーブンから取り出します。この時点ではまだ少し発酵が足りない状態ですが、予熱を待っている間の室温で発酵が進み、ちょうど良い状態になります。取り出した生地は乾燥しないように濡れ布巾や大きなビニール袋をかぶせて、暖かい場所(オーブンの上や近くなど)に置いておきましょう。
オーブンなしでも大丈夫!家庭でできる工夫した二次発酵のやり方

「発酵機能がついていない」「オーブンが使用中で使えない」「予熱の時間を気にせず発酵させたい」といった場合でも、工夫次第で快適な二次発酵環境を作ることができます。ここでは、特別な道具を使わずに、身近なものを活用して発酵させるアイデアをいくつかご紹介します。
自然発酵(常温)で行う場合
最もシンプルなのが、室内の暖かい場所に置いておく自然発酵です。特に夏場(室温が25℃〜30℃以上ある時)は、特別な保温をしなくても十分に発酵します。ただし、クーラーが効いている部屋では温度が低すぎるため、直射日光の当たらない窓際や、冷蔵庫の横(放熱で少し暖かい場所)などを探してみましょう。
注意点は乾燥です。濡れ布巾をかぶせるだけでは生地に直接触れてしまい、剥がす時に表面が荒れてしまうことがあります。大きめのボウルやタッパーを逆さにしてかぶせたり、大きなビニール袋の中に空気を含ませてふんわりと覆ったりして、生地に触れない空間を作りつつ乾燥を防ぐ工夫をしましょう。
フライパンやお鍋を活用する方法
ちぎりパンや平焼きパン、イングリッシュマフィンなどを作る場合、フライパンやお鍋を使って二次発酵から焼成までを行うことができます。クッキングシートを敷いたフライパンに成形した生地を並べ、蓋をして置きます。
冬場などで温度が足りない時は、ごく弱火で数秒(10秒〜20秒程度)だけ加熱し、フライパンをほんのり温めてから火を消して放置します。手で触れるくらいの「ほんのり暖かい」状態を保つのがコツです。熱すぎると底のイーストが死んでしまうので注意してください。蓋のおかげで湿度が保たれやすいのがメリットですが、蓋の裏にたまった水滴が生地に落ちないよう、時々拭き取るか、布巾を挟むなどの対策が必要です。
発泡スチロールやお湯を使う方法
発酵器に近い環境を安価に作れるのが、発泡スチロールの箱を使う方法です。保温性が非常に高いため、安定した温度を保つのに適しています。箱の中に天板ごと生地を入れ、隣に熱湯を入れたコップを置きます。そして蓋を閉めれば、簡易的な発酵室(ホイロ)の完成です。
お湯の蒸気で湿度も完璧に保たれます。温度が下がってきたらお湯を交換するだけで調整が可能です。もし発泡スチロールがない場合は、大きな衣装ケースや、段ボールの内側にアルミシートを貼ったものでも代用できます。プロも認めるほど、パン生地にとって理想的な環境を作りやすい方法です。
電子レンジの活用テクニック
オーブンの発酵機能がない場合、電子レンジの庫内という「密閉空間」を利用する方法もおすすめです。まず、電子レンジ対応のマグカップに水を入れ、沸騰するまで加熱します。庫内が蒸気で満たされ、温かい状態になったところに、カップを端に寄せ(または取り出し)、パン生地を乗せた天板や皿を素早く入れます。
扉を閉めておけば、庫内の余熱と湿気で発酵が進みます。途中で庫内が冷えてきたら、生地を一度取り出し、再度カップの水を加熱して庫内を温め直してから戻します。この方法は、少量のパンを作る時や、オーブンの予熱を早めに入れたい時に非常に便利です。
コタツやホットカーペットの利用
冬場の強い味方であるコタツやホットカーペットも、発酵に利用できます。ただし、これらは熱源が直接的で温度が高くなりすぎる危険性があります。絶対にヒーターの近くやカーペットの上に「直置き」しないでください。
コタツなら、ヒーターから離れた隅の方に置き、温度が高くなりすぎないかこまめにチェックします。ホットカーペットの場合は、生地を入れた容器の下に厚手のバスタオルや雑誌などを敷き、熱を和らげて伝わるようにします。また、乾燥しやすい環境なので、必ず濡れ布巾やビニール袋でしっかりとガードすることが必須です。
二次発酵の見極め方は?完了のサインをチェックしよう

時間通りに発酵させても、それがベストな状態とは限りません。パン作りで最も難しいと言われるのが、この「発酵完了の見極め」です。ここでは、五感を使って生地の状態を判断するための3つのチェックポイントを解説します。
見た目の大きさの変化
一番わかりやすい目安は、生地の大きさの変化です。二次発酵が適切に進むと、成形直後の状態から一回りから二回り大きく(約1.5倍〜2倍)膨らみます。
例えば、型に入れて焼く食パンの場合、「型の8分目まで膨らんだら」といった具体的な高さの目安があります。丸パンなどの場合は、隣のパンとの隙間が埋まってきたり、全体的にふっくらとしてきたりした様子で判断します。成形した直後の大きさを覚えておくか、スマホで写真を撮っておくと、比較しやすくなるのでおすすめです。
指で触った感触(フィンガーテスト的な確認)
見た目で大きくなっていたら、次は実際に生地に触れて確認してみましょう。ただし、一次発酵の時のように指をズボッと突き刺すフィンガーテストは行いません。二次発酵後の生地は非常にデリケートなので、強く触るとガスが抜けて萎んでしまいます。
確認方法は、生地の目立たない部分を、指の腹で優しく、そっと押してみることです。
・跳ね返りが強い場合:すぐに元の形に戻るなら、まだ発酵不足です。もう少し時間を置きます。
・指の跡が薄く残り、ゆっくり戻ってくる場合:これがベストな状態です。赤ちゃんのほっぺのような、柔らかくて弾力のある感触を目指します。
・押したまま戻らない、またはしぼむ場合:発酵のさせすぎ(過発酵)です。すぐに焼き始めましょう。
揺らした時の生地の様子
天板を少し持ち上げて、優しく左右に揺らしてみるのも一つの方法です。発酵が順調に進んで中にガスがたっぷりと含まれている生地は、天板を揺らすと「プルプル」と小刻みに揺れます。まるで水風船やプリンのような、繊細な揺れ方をするのが特徴です。
もし揺らしても生地がどっしりとして動かない場合は、まだガスが十分に溜まっていません。逆に、揺らした衝撃で全体がへたっと沈んでしまいそうな場合は、過発酵で生地の網目構造が弱くなっている可能性があります。この「プルプル感」を感じられるようになると、見極めの精度がぐっと上がります。
二次発酵でよくある失敗と対策

「レシピ通りにやったはずなのに…」という失敗は、誰にでもあります。ここでは、二次発酵時によく起こるトラブルの原因と、それぞれの特徴、そして次に活かすための対策をご紹介します。失敗の原因を知ることは、上達への近道です。
発酵不足(アンダー)の特徴
発酵不足のまま焼いてしまったパンは、全体的にボリュームがなく、小さく仕上がります。オーブンの中で急激に膨らもうとして、変な場所が割れてしまったり、いびつな形になったりすることがあります。これを「横割れ」や「底割れ」と呼びます。
食べてみると、目が詰まっていて重たく、硬い食感になりがちです。対策としては、時間をしっかりとること、そして温度が低すぎないかを確認することです。特に冬場は生地の芯まで温まるのに時間がかかるため、思い切って時間を延長する勇気も必要です。
発酵過多(オーバー)の特徴
逆に発酵させすぎると、生地の中のグルテンが限界まで伸びきってしまい、ガスを保持できなくなります。焼く前は大きく見えても、オーブンに入れた途端にしぼんでしまったり、焼き上がりの天井部分が平らになったり陥没したりします。
特徴的なのは「匂い」と「味」です。イーストが活動しすぎてアルコール臭(酸っぱいような匂い)が強くなり、パサパサとした粗い食感になります。残念ながら過発酵になってしまった生地は元に戻せませんが、ピザ生地のように平たく伸ばして焼くことで、おつまみパンとして美味しく救済することができます。
生地が乾燥してしまった場合
発酵中に湿度が足りず、生地の表面が乾燥してカピカピになってしまった場合、そのまま焼くと膨らみが悪くなり、表面がひび割れたり、硬い皮が厚くできたりしてしまいます。
もし焼成前に乾燥に気づいたら、霧吹きで水をかけて水分を補ってあげましょう。軽度の乾燥ならこれで持ち直すことがあります。ただし、完全に殻のように固まってしまった場合は修正が難しいため、次回からは濡れ布巾やビニール袋、お湯を入れたカップなどを活用して、徹底した保湿対策を行うようにしましょう。
パンの種類による二次発酵の違い

すべてのパンを同じ条件で発酵させれば良いわけではありません。パンの種類や配合されている材料によって、適した温度や見極めのポイントが異なります。ここでは代表的な3つのタイプについて解説します。
食パンなどの型焼きパン
食パンのように型に入れて焼くパンは、生地を支える壁があるため、しっかりと高さを出す必要があります。二次発酵の温度は35℃〜38℃と少し高めで、時間は長めにとるのが一般的です。
見極めの最大のポイントは「型に対する高さ」です。角食パン(蓋をするタイプ)なら型の8割程度、山型食パン(蓋をしないタイプ)なら型から頭が少し出るくらいまで発酵させます。焼く時の膨らみ(窯伸び)を計算に入れて、発酵を切り上げるタイミングを見極めるのがコツです。
菓子パンや惣菜パン
バターロール、アンパン、メロンパンなどの菓子パンや、バターをたっぷりと折り込んだクロワッサン・デニッシュ系は、温度管理に注意が必要です。特にバターが多いリッチな生地の場合、35℃を超えると生地の中のバターが溶け出し、ベタベタになって層が潰れたり、揚げパンのように油っぽくなったりしてしまいます。
ハード系パンの場合
フランスパンやカンパーニュなどのハード系パンは、砂糖や油脂が少なく、シンプルな材料で作られます。これらのパンは、イーストの活動を穏やかにして小麦本来の旨味を引き出すため、二次発酵も比較的低めの温度(25℃〜30℃程度)で行うことが多いです。
過剰に膨らませすぎず、生地に少し芯が残るくらいの状態で焼き上げることで、ハードパン特有の「クープ(切れ込み)」が綺麗に開き、バリッとしたクラスト(皮)を楽しむことができます。発酵させすぎるとクープが開かず、のっぺりとした焼き上がりになってしまいます。
まとめ

二次発酵は、パンのふわふわ感やボリュームを決める、パン作りにおける「仕上げの準備」とも言える大切な工程です。最後に、今回の記事の要点を振り返ってみましょう。
【二次発酵を成功させるポイント】
・目的:ガスを溜めて生地を緩め、焼いた時のボリュームを作る。
・環境:乾燥は大敵!湿度を保ちながら、生地に合った温度で管理する。
・オーブン機能:予熱の時間(15〜20分)を逆算して早めに取り出す。
・見極め:時間は目安。「大きさ2倍」「指で押してゆっくり戻る」状態を確認する。
・道具なしでもOK:お湯、発泡スチロール、レンジ庫内などを活用して工夫できる。
最初は温度管理や見極めが難しく感じるかもしれませんが、何度か焼いていくうちに、生地が「今だよ!」と教えてくれる瞬間がわかるようになります。ぜひ今回のガイドを参考に、ご自宅の環境に合った二次発酵のやり方を見つけて、お店に負けない美味しいパンを焼き上げてくださいね。




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