パン作りをしようと思い立った時、レシピにある「スキムミルク」が手元になくて困った経験はありませんか?「わざわざ買いに行くのも面倒だし、家にあるもので代用できないかな」と考える方は多いはずです。実は、スキムミルクは牛乳や豆乳、さらにはお水だけでも十分に代用が可能です。ただし、使う材料によってパンの風味や食感、焼き色にはそれぞれ違った特徴が生まれます。
この記事では、スキムミルクがない時に使えるさまざまな代用品と、それらを使った時の仕上がりの違いについて詳しくご紹介します。それぞれの特徴を知れば、ただの代用ではなく、好みの味を作るためのアレンジとして楽しむこともできるようになりますよ。ぜひ参考にしてみてください。
スキムミルク代用を選ぶ前に知っておきたい役割と影響

代用品を選ぶ前に、まずは「なぜパン作りにスキムミルクを入れるのか」を知っておくことが大切です。レシピに含まれているのには、ちゃんと理由があります。スキムミルクが果たす役割を理解しておけば、どの代用品を選べば自分の理想に近いパンが焼けるのか、判断しやすくなるでしょう。
そもそもパン作りになぜスキムミルクを入れるの?
スキムミルクは、牛乳から脂肪分を取り除いて乾燥させた粉末状の食材です。パン生地に加える最大の目的は、「ミルキーな風味とコク」をプラスすることにあります。脂肪分がほとんどないため、バターなどの油脂と喧嘩することなく、さっぱりとしたミルク感を出すことができます。
また、スキムミルクに含まれる「乳糖」という成分は、パンにきれいな焼き色をつける働きをします。さらに、乳タンパク質が生地の保水性を高めてくれるため、時間が経ってもパサつきにくく、しっとりとした食感をキープできるというメリットもあります。栄養価の面でも、カルシウムを手軽に強化できる優れた材料なのです。
代用品を使うとパンの膨らみや食感はどう変わる?
スキムミルク以外の材料で代用する場合、最も影響が出やすいのは「食感」と「膨らみ方」です。例えば、脂肪分を含む牛乳などで代用すると、生地がよりしっとりと柔らかくなる傾向があります。一方で、乳成分を含まない水だけで作ると、クラスト(皮)がパリッとした、ややハードな仕上がりになります。
パンの膨らみに関しては、スキムミルクは生地の骨格(グルテン)を適度に引き締める効果があるため、縦にボリュームが出やすいと言われています。代用品によってはこの引き締め効果が弱まり、少し横に広がったり、ふんわり感が変化したりすることがあります。しかし、家庭で楽しむ分には、極端に失敗することは少ないので安心してください。
実は「入れない」という選択肢もあり?
「絶対に代用品を入れなければならない」と思い込んでいる方もいるかもしれませんが、実はスキムミルクを入れずに作ることも可能です。スキムミルクを省略し、その分の水分を水で補うだけでもパンは焼けます。フランスパンなどのハード系のパンは、基本的に乳製品を入れずに粉の風味を活かして作ります。
スキムミルクなしで作るパンは、ミルク特有の甘い香りがなくなる分、小麦本来の香ばしさをダイレクトに感じられる素朴な味わいになります。リッチな風味は減ってしまいますが、サンドイッチや食事に合わせるパンとしては、むしろそのシンプルさが好まれることもあります。「ないなら入れない」という選択も、一つのアレンジとして楽しんでみましょう。
手軽に使える!冷蔵庫にある身近な材料での代用テクニック

ここからは具体的な代用品について解説していきます。まずは、どのご家庭の冷蔵庫にも入っていることが多い「液体」の材料です。これらは水分量の調整さえ気をつければ、非常に手軽に使える優秀な代役となります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
【牛乳】リッチな味わいとしっとり食感に
最もポピュラーな代用品が牛乳です。スキムミルクとの大きな違いは「脂肪分」が含まれていることと、液体であることです。牛乳で代用すると、乳脂肪の効果で生地の伸びが良くなり、焼き上がりはしっとりとソフトな食感になります。風味もスキムミルクより濃厚で、リッチな味わいのパンに仕上がります。
注意点としては、水分量の計算が必要になることです。牛乳は「固形分(約10%)」と「水分(約90%)」でできています。そのため、レシピの水をすべて牛乳に置き換えるのではなく、「水分の一部を牛乳に置き換える」という感覚で調整します。細かい計算が面倒な場合は、レシピの水とスキムミルクを合わせた総重量を意識し、生地の様子を見ながら牛乳を加減して入れていくと良いでしょう。
【豆乳】ヘルシー志向やアレルギー対応に
近年、健康志向の方に人気なのが豆乳による代用です。牛乳と同じく液体として水分調整を行いながら使用します。豆乳を使うメリットは、植物性タンパク質であるためコレステロールが含まれず、ヘルシーに仕上がることです。また、乳製品アレルギーがある方へのパン作りにも重宝します。
仕上がりは、牛乳に比べるとあっさりとしていて、ほのかに大豆の甘みや香りを感じる素朴な味わいになります。食感はふんわりと軽くなる傾向があり、和風のお惣菜パンや、きな粉を使ったパンなどとの相性は抜群です。調整豆乳を使うと砂糖や塩分が含まれている場合があるので、できれば「無調整豆乳」を選ぶと、味のコントロールがしやすくなります。
【水のみ】小麦本来の風味を楽しむハード系に
前述の通り、スキムミルクの代わりにあえて何も足さず、全量を「水」で作る方法もあります。この場合の最大の特徴は、「リーン(簡素)な味わい」になることです。余計な風味が入らないため、小麦粉そのものの香りや味が引き立ちます。毎日食べるシンプルな食パンや、塩パンなどに向いています。
ただし、乳成分が入らない分、焼き色が薄くなりやすかったり、翌日に少し硬くなりやすかったりするデメリットもあります。これを補うために、砂糖を少し増やして焼き色を助けたり、焼成温度を微調整したりする工夫も有効です。「あっさり派」の方や、カロリーを少しでも抑えたい方には、水だけでの代用も十分おすすめです。
意外なアイテムも活躍?粉末タイプの代用品を検証

液体の代用品は水分の計算が必要ですが、粉末状の代用品なら、比較的そのまま置き換えやすいというメリットがあります。キッチンに眠っているかもしれない「粉もの」たちが、スキムミルクの代わりとして意外な実力を発揮してくれます。
【クリーミングパウダー】コクをプラスしたい時に
コーヒーに入れる「クリーミングパウダー(クリープなど)」も、代用品として活用できます。ここで重要なのが、商品によって成分が異なる点です。「クリープ」のように乳成分を主原料としているものは、スキムミルクに近いミルキーな風味とコクを出すことができます。植物性脂肪が主体の商品は、あっさりした軽い仕上がりになります。
クリーミングパウダーには脂肪分が多く含まれているため、パンに入れるとバターを多めに入れたようなリッチな風味が加わります。ただし、商品によっては甘みが添加されている場合もあるので、砂糖の量を少し減らすなどの調整が必要かもしれません。使い方は簡単で、スキムミルクと同じようにお湯で溶くか、粉と一緒に混ぜて使えます。
【育児用粉ミルク】余ったミルクで栄養価アップ
小さなお子さんがいるご家庭で、使いきれずに余ってしまった「育児用粉ミルク」はありませんか?実はこれ、パン作りに最適な代用品です。育児用ミルクは栄養価が非常に高く、ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。原料も乳成分なので、スキムミルクと似たような役割を果たしてくれます。
特徴的なのは、その甘みと濃厚さです。赤ちゃんが飲みやすいように調整されているため、独特の甘い香りがあり、焼き上がったパンもほんのり甘く、やさしい味わいになります。脂肪分も適度に含まれており、しっとりとした柔らかいパンが焼けます。大量消費したい時にもおすすめの方法ですが、賞味期限には注意して使用してください。
【練乳・ヨーグルト】風味を変えたい時のアレンジテクニック
少し変わり種ですが、練乳(コンデンスミルク)やヨーグルトも代用として使えます。練乳は牛乳を濃縮して砂糖を加えたものなので、非常に強い「ミルキー感」と「甘み」が出ます。菓子パンや、甘めの食パンを作りたい時には最適です。水分量を減らし、砂糖も大幅に減らしてバランスを取るのがコツです。
一方、ヨーグルトを使うと、乳酸菌の効果で生地が弱酸性になり、イーストの発酵が助けられてふんわりと膨らみやすくなります。味わいにはほのかな酸味が加わり、爽やかでしっとりとした、まるでチーズケーキのようなニュアンスが出ることもあります。いつものパンに飽きた時、あえてこれらの材料を使って風味を変えてみるのも楽しいでしょう。
代用品を使う時のポイント
・液体(牛乳・豆乳):水分量の調整(水+スキムミルクの総量を意識する)が必要。
・粉末(粉ミルクなど):比較的そのまま置き換えやすいが、脂肪分や糖分に注意。
・その他(練乳など):砂糖や油脂の量も調整するとバランスが良くなる。
パンの種類別おすすめ代用パターン

ここまで様々な代用品を紹介してきましたが、「結局、今作ろうとしているパンにはどれが合うの?」と迷ってしまうかもしれません。そこで、パンの種類や目指す仕上がりに合わせたおすすめの代用パターンを整理しました。
ふんわり食パンを作りたい時に適した代用品
毎朝の食卓に並ぶような、ふんわりと柔らかい食パンを目指すなら、「牛乳」または「育児用粉ミルク」がおすすめです。これらの材料に含まれる適度な脂肪分とタンパク質が、パンのキメを細かく整え、耳まで柔らかい食感を生み出します。
特に牛乳を使うと、トーストした時に香ばしいミルクの香りが立ち上り、バターなしでも美味しく食べられるようなリッチな食パンになります。「ホテルブレッド」のような高級感を出したい場合は、生クリームを少し混ぜるという裏技もありますが、まずは牛乳での代用から試してみると、その違いを実感できるはずです。
菓子パンやリッチな生地に向いている材料
クリームパンやあんパン、ブリオッシュのような甘くてリッチな生地を作りたい場合は、「練乳」や「クリーミングパウダー(乳脂肪タイプ)」が活躍します。スキムミルク以上のコクと甘みをプラスしてくれるため、フィリング(中身)の味に負けない濃厚な生地を作ることができます。
これらの代用品を使うことで、焼き色もしっかりときれいなキツネ色につきやすくなります。見た目にも美味しそうな照りが出るので、プレゼント用のパンやおやつパンを作る際には、あえてスキムミルクの代わりにこれらを選んでみるのも良い選択です。
ハード系パンにおけるスキムミルクの扱い
フランスパンやベーグル、カンパーニュなどのハード系パンを作りたい場合、基本的には「水のみ(代用なし)」がベストです。ハード系パンの魅力は、バリッとしたクラスト(皮)と、噛み締めるほどに感じる小麦の風味にあります。乳製品を入れるとクラストが柔らかくなりすぎてしまい、ハードパン特有の食感が損なわれてしまうことがあります。
もしレシピにスキムミルクと書いてあっても、ハードな食感を目指すなら思い切って抜いてしまっても構いません。逆に、「子供が食べるから少し柔らかくしたい」という場合は、豆乳を少し加えると、風味を邪魔せずに歯切れの良さを出すことができます。
メモ:アレルギー対応などで豆乳を使う場合、無調整豆乳の方がパンの膨らみを阻害しにくいと言われています。
スキムミルク代用の使い分けまとめ

スキムミルクが手元になくても、パン作りを諦める必要はありません。身近な食材で代用することで、むしろ普段とは違った美味しいパンに出会えるチャンスになります。
代用品を選ぶ際は、自分が「どんなパンを作りたいか」をイメージすることが大切です。
しっとりリッチに仕上げたいなら「牛乳」や「粉ミルク」、あっさりと小麦の風味を活かしたいなら「水のみ」や「豆乳」、コクや甘みを強く出したいなら「練乳」や「クリープ」というように使い分けてみてください。
水分量の調整さえ気をつければ、どの代用品でも失敗することはほとんどありません。ぜひ、その日の気分や冷蔵庫の中身と相談しながら、自由な発想でパン作りを楽しんでみてくださいね。




コメント