電気オーブンとガスオーブンの違いとは?パン作りの視点で選び方を解説

電気オーブンとガスオーブンの違いとは?パン作りの視点で選び方を解説
電気オーブンとガスオーブンの違いとは?パン作りの視点で選び方を解説
道具・オーブン・HB活用

「自宅で美味しいパンを焼きたい!」そう思ったとき、最初の大きな壁となるのがオーブン選びです。「プロはガスを使う」「最新の電気オーブンもすごいらしい」といった声を聞くものの、結局どちらが自分のパン作りに合っているのか迷ってしまう方は少なくありません。オーブンは決して安い買い物ではないからこそ、後悔しない選択をしたいものです。

この記事では、パン作りの工程や仕上がりに直結する「電気オーブンとガスオーブンの違い」を、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。

電気オーブンとガスオーブンの違い:基本の仕組みと特徴

まずは、電気オーブンとガスオーブンの根本的な仕組みの違いを理解しましょう。熱源が違うことで、パンの焼き上がりや使い勝手にどのような差が生まれるのか、基本的なポイントを整理します。

加熱方式と火力の強さの違い

電気オーブンは、庫内の上下や背面に設置されたヒーターが熱源となります。電熱線が熱くなり、その熱を庫内に伝えることで食品を加熱します。一方、ガスオーブンはガスの燃焼によって発生する強力な炎が熱源です。ガスを燃やすことで生まれる熱エネルギーは非常に大きく、電気に比べて圧倒的に強い火力が特徴です。

パン作りにおいて、この「火力の差」は「釜伸び(オーブンスプリング)」に影響します。生地が焼成初期にグッと膨らむ力は、熱の立ち上がりの速さと強さに比例するため、一般的にガスオーブンの方がパンを大きく膨らませる力強い熱を持っています。

予熱時間と最高温度の比較

オーブンを温める「予熱」にかかる時間も大きく異なります。ガスオーブンは火力が強いため、200度や250度といった高温まで一気に到達します。機種にもよりますが、電気オーブンが予熱に10〜15分かかる温度でも、ガスオーブンなら5〜7分程度で完了することが多いです。

最高温度については、かつては「ガス=高温、電気=低温」というイメージがありましたが、最近のハイスペックな電気オーブンは300度や350度まで上がるモデルも登場しています。しかし、扉を開けた瞬間に下がる庫内温度をどれだけ早くリカバリーできるか(復帰力)という点では、依然としてガスオーブンに軍配が上がります。

設置のしやすさと導入ハードル

ここが最も大きな分かれ道と言えるでしょう。電気オーブンは、家庭用のコンセントさえあればどこにでも設置できます(※一部の大型機種や200V機種を除く)。アース線の接続は必要ですが、基本的には買ってきてすぐに使える手軽さが魅力です。

対してガスオーブンは、設置場所に「ガス栓」が必要です。キッチンにガス栓がない場合、増設工事を依頼しなければならず、賃貸住宅では導入が難しいケースも少なくありません。また、本体サイズも大きくなる傾向があり、設置スペースの確保も重要な課題となります。

本体価格とランニングコストの目安

導入コスト(初期費用)は、電気オーブンの方が安く抑えられます。パン作りに必要な機能を備えたモデルでも4万円〜10万円程度で購入可能です。一方、ガスオーブンは卓上型でも10万円以上、ビルトイン(埋め込み)型になれば工事費込みで20万円を超えることも珍しくありません。

しかし、日々の光熱費(ランニングコスト)で見ると、ガスの方が割安になる傾向があります。特にパン作りでは予熱や長時間の焼成が必要になるため、頻繁にパンを焼くヘビーユーザーであれば、長い目で見るとガスの方が経済的かもしれません。

【仕組みの違いまとめ】

電気:ヒーター加熱。設置が簡単で初期費用が安い。温度管理が得意。

ガス:ガス燃焼加熱。火力が強く予熱が早い。設置工事が必要で初期費用が高い。

パンの焼き上がりはどう変わる?種類別の相性チェック

「どんなパンを焼きたいか」によっても、選ぶべきオーブンは変わってきます。ここでは、ハード系とソフト系、それぞれのパンとの相性を見ていきましょう。

バゲットなどのハード系パンを焼く場合

フランスパンやカンパーニュなどのハード系パンは、皮(クラスト)をパリッとさせ、中(クラム)に大きな気泡を作ることが求められます。これには「高い温度」と「蒸気(スチーム)」が不可欠です。

ガスオーブンはその強力な熱風で生地を一気に持ち上げるのが得意ですが、風が強すぎて表面が乾燥し、クープ(切れ込み)が開く前に固まってしまうことがあります。一方、最新の電気オーブンは密閉性が高く、高性能なスチーム機能を搭載しているものが多いため、初心者でもクープの開いた美しいバゲットを焼きやすいというメリットがあります。

食パンや菓子パンなどのソフト系を焼く場合

バターロールや食パン、あんパンなどのソフト系パンは、生地の水分を保ったままふっくらと焼き上げることが重要です。このジャンルでは、電気オーブンが非常に優秀な働きをします。

電気オーブンは熱の当たり方が比較的穏やかで、庫内の水分を逃しにくいため、しっとりとした食感に仕上がります。ガスオーブンの強い熱風は、気をつけないとパンの水分を奪いすぎてしまい、翌日にはパサついてしまう原因になることもあります。

水分量とクラスト(皮)の食感の違い

焼き上がりの食感を比較すると、ガスオーブンは「外はパリッ、中はもちっ」としたメリハリのある食感になりやすいです。強い熱で表面を焼き固めるため、香ばしさが際立ちます。ピザなどを焼く際もガスオーブンの火力は大きな武器になります。

電気オーブンは、全体的に「ふんわり、しっとり」とした優しい焼き上がりになります。特に白パンやシフォンケーキなど、焦げ目をつけすぎたくない繊細な焼き菓子やパンには、温度コントロールのしやすい電気オーブンが向いています。

焼きムラへの対策とクセの理解

「ガスは風が強いから焼きムラができやすい」「電気は場所によって焼けない」など、どのオーブンにも必ず「クセ」があります。ガスオーブンはファンで熱風を循環させる「コンベクション方式」が基本なので、風が直接当たる奥側だけ早く焼けることがあります。

電気オーブンも、ヒーターの位置によって焼き色が偏ることがあります。どちらを選ぶにしても、途中で天板の前後を入れ替えるといった工夫は必要です。最近の高級電気オーブンは、熱風循環とヒーター制御を細かく行い、焼きムラを最小限に抑える技術が進化しています。

知っておきたい用語:コンベクション(熱風循環)

ファンを回して熱い空気を庫内全体に対流させる機能のこと。ガスオーブンは基本的にこのタイプです。電気オーブンにも搭載されていますが、電気の場合は「熱風を使わない(上下ヒーターのみ)」設定に切り替えられる機種もあり、パンの種類によって使い分けることができます。

電気オーブンのメリット・デメリットを深掘り

現在、家庭用オーブンとして最も普及している電気オーブン。その進化は目覚ましく、パン作り専用機としても十分な性能を持つものが増えています。

最新機能が充実!発酵やスチーム機能

電気オーブンの最大の強みは、多機能であることです。特にパン作りで重要な「発酵機能」が充実しています。30℃、35℃、40℃といった温度を長時間安定してキープできるため、冬場や梅雨時でも安定して生地を発酵させることができます。

また、スチーム機能の進化も見逃せません。単に庫内を加湿するだけでなく、過熱水蒸気を使って焼成初期にたっぷりの蒸気を当てることで、ハードパンの成功率を格段に上げてくれるモデルも登場しています。これはガスオーブンにはない、電気ならではの精密な制御技術です。

置き場所を選ばない手軽さとデザイン性

電気オーブン(オーブンレンジ)は、デザインがおしゃれなものが多く、キッチンのインテリアとしても楽しめます。コンセントさえ届けば、キッチンボードの上や冷蔵庫の上(耐熱仕様の場合)など、ライフスタイルに合わせて置き場所を変えることができます。

また、電子レンジ機能が一体化していることがほとんどなので、「温め」と「オーブン」を1台で済ませられ、狭い日本のキッチン事情に非常にマッチしています。

火力が弱め?予熱にかかる時間の課題

デメリットとして挙げられるのは、やはりガスに比べるとパワー不足を感じる場面があることです。特に予熱には時間がかかります。250℃に設定しても、実際にその温度になるまで15分〜20分かかることもあり、その間の電気代も気になるところです。

また、扉を開閉した際の温度低下が大きく、一度下がった温度が元の設定温度に戻るまでに時間がかかります。続けて2回、3回と焼く場合、途中で再予熱が必要になることもあります。

コンベクション機能の有無による違い

安価な電気オーブンでは、ファンがついていない(コンベクション機能がない)モデルもあります。これらはヒーターの熱だけで焼くため、庫内の場所による焼きムラが激しくなりがちです。パン作りを目的とするなら、必ず「コンベクション機能付き」または「2段調理可能」なミドルクラス以上のモデルを選ぶことをおすすめします。

メモ:
電気オーブンには100V電源のほかに、200Vのハイパワーモデル(ビルトインタイプに多い)もあります。200Vならガスに匹敵する火力を出せますが、専用の電気工事が必要になります。

ガスオーブンのメリット・デメリットを徹底分析

パン作り愛好家の中には「いつかはガスオーブン」と憧れる人も多い、プロ仕様に近い実力派です。

プロ並みの高火力で一気に焼き上げる魅力

ガスオーブンの魅力は、なんといってもその圧倒的なパワーです。家庭用であっても、業務用のオーブンに近い感覚で焼くことができます。高い温度で短時間に焼き上げるため、生地の水分を無駄に蒸発させることなく、外はサクッと、中はもちもちのパンが焼けます。

特に予熱の速さはストレスフリーです。「そろそろ発酵が終わるな」と思ってから予熱を開始しても十分に間に合うため、過発酵(発酵させすぎ)の失敗を防ぐことにもつながります。

複数段調理でも温度が下がりにくい安定感

たくさんのパンを一度に焼きたい場合、天板を2枚使って2段で焼くことになります。電気オーブンだと、冷たい天板と生地が2枚分入ることで庫内温度が急激に下がってしまい、焼き色が薄くなったり生焼けになったりすることがあります。

しかし、ガスオーブンなら持ち前の火力で温度をすぐに回復させるため、2段同時に焼いてもムラが少なく、安定して焼き上げることができます。一度に大量のパンを焼く大家族や、パン教室を開きたい人には大きなメリットです。

ガス栓の増設工事や設置スペースの問題

最大のデメリットは導入のハードルです。卓上タイプであってもかなり大型で重量があるため、しっかりとした設置台が必要です。また、背面の排熱スペースも十分に確保しなければなりません。

そして何より、ガス栓が必要です。オール電化の住宅では導入自体が難しい場合もありますし、ガス通っていてもキッチンの使いたい場所にガス栓がなければ、専門業者による増設工事(数万円〜)が必要になります。

駆動音の大きさと排熱の強さについて

ガスオーブンは燃焼させるために常にファンが回っており、さらに燃焼音もするため、動作音は電気オーブンよりも大きめです。「ブォー」という音がキッチンに響きます。

また、使用中は排気口からかなり熱い風が出てきます。夏場のキッチンなどの場合、室温が上がってしまうこともあります。小さなお子様がいる家庭では、排気口の位置や火傷への配慮がより一層必要になります。

あなたに合うのはどっち?ライフスタイル別のおすすめ

ここまで見てきた通り、電気とガス、どちらにも素晴らしい点と注意点があります。最後に、あなたのライフスタイルやパン作りの目的に合わせて、どちらを選ぶべきかの指針を提案します。

本格的なハードパンを目指すこだわり派なら

「フランスパンのエッジを立たせたい」「お店のようなハードパンを焼きたい」という強いこだわりがある場合、選択肢は2つです。一つは高火力なガスオーブンを導入し、蒸気を入れる工夫(霧吹きや焼き石など)を練習すること。もう一つは、東芝「石窯ドーム」やパナソニック「ビストロ」などのハイエンド電気オーブンを選ぶことです。

実は、ハードパン初心者には、スチーム機能が優秀なハイエンド電気オーブンの方が成功率は高いと言われています。ガスは火力が強い分、水蒸気量のコントロールが難しい玄人向けの側面があるからです。

手軽に色々なパンやお菓子を楽しみたいなら

「食パンも焼きたいし、ロールパンも、たまにはクッキーやケーキも焼きたい」というオールラウンダーには、ミドルクラス以上の電気オーブンが最適です。

発酵機能が使いやすく、温度管理も自動で行ってくれるため、失敗が少なくなります。特にスポンジケーキやシフォンケーキなどは、電気オーブンの方がしっとりときれいに焼けることが多いです。

キッチン環境と将来の引っ越し予定を考慮

賃貸マンションやアパートに住んでいて、将来的に引っ越しの可能性があるなら、間違いなく電気オーブンをおすすめします。ガスオーブンはガスの種類(都市ガス・プロパン)が変わると使えなくなったり、部品交換が必要になったりします。また、新居にガス栓があるとも限りません。身軽さを重視するなら電気が無難です。

初心者が最初に選ぶべきオーブンの基準

初めてパン作り専用のオーブンを買うなら、まずは「庫内が広く(30Lクラス)、最高温度が300℃まで設定できる電気オーブン」を探してみてください。このスペックがあれば、ハード系からソフト系まで一通りのパンを美味しく焼くことができます。

ガスオーブンは、「今の電気オーブンではどうしても満足できない」「一度に焼く量が多すぎて電気では追いつかない」と感じた時の、セカンドステップとして検討しても遅くはありません。

まとめ:電気オーブンとガスオーブンの違いを理解して理想のパン作りを

パン作りにおける電気オーブンとガスオーブンの違いについて解説してきました。かつては「パンを焼くならガス」と言われていましたが、電気オーブンの進化により、今ではどちらを選んでも十分に美味しいパンが焼ける時代になっています。

電気オーブンは、設置の手軽さ、発酵やスチームなどの多機能さ、そしてソフト系パンのしっとりした焼き上がりが魅力です。一方、ガスオーブンは、圧倒的な火力による予熱の速さ、復帰力の高さ、そしてハード系パンの力強い焼き上がりが強みです。

大切なのは、「自分がどんなパンを、どのくらいの頻度で、どんな環境で焼きたいか」を明確にすることです。それぞれの特徴をよく理解した上で、あなたのパン作りライフを支える最高のパートナーを見つけてくださいね。

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